麻辣湯とは、中国で昔から愛されている、薬膳スパイスを組み合わせ、春雨や野菜、鶏や豚などの具材を煮込んだ辛さと痺れる味わいが特徴のスープ料理である。
近年、「ガチ中華ブーム」も相まって、日本でも人気が高まり、平日でも都内各所の人気チェーン「七宝麻辣湯」には若い女性たちの長蛇の列ができている。
「麻辣湯」とはなんぞや?
店内は女性だけということも多く、男女間での認知度の差が大きい。先日、地方に住む友人男性に麻辣湯が人気であることを伝えたところ、「麻(マー)ということは麻婆豆腐がかかった麺類なんですね」と言われた。彼は何も知らない。しかし、「麻辣(マーラー)」という文字面だけ見ると、確かに水煮牛肉やよだれ鶏など、四川料理でおなじみの真っ赤な料理を思い浮かべる。麻婆豆腐の「麻」とは何が違うのか? 麻は「痺れる」という意味ではないのか?
実は、麻婆豆腐の「麻」は感染症が治ったあとに顔の皮膚に残るへこんだ傷跡「あばた」のことであり、「痺れ」ではない。「あばた(麻)のおばさん(婆)が作った豆腐料理」が麻婆豆腐なのだという。
そのことを友人に伝えたところ、「なるほど。じゃあ、最近流行りの麻辣湯は『酸辣湯(スーラータン)』の辛い版なんですね!」と言われた。彼とはこれ以上話しても実りがなさそうだ。
今回行くのは「七宝麻辣湯」ではなく…
筆者も麻辣湯のことを「春雨の入った火鍋のスープ」というイメージで捉えていたため、他人のことをあまり強くは言えない。ただ、最近流行りの麻辣湯は、もっとファストフード感覚で食べられるのが特徴だ。サブウェイのサンドイッチのようにいろいろな具材を選び、その量によって値段が決まるという。男はやれ「ガチ中華」だの「街中華」だのと、中華料理には一過言あるが、なぜ麻辣湯人気は見て見ぬふりをするのだろうか? そこで今回は、ミシュラン名店シェフ監修の本格麻辣湯が食べられる吉祥寺の「ココカラ麻辣湯」で2000円分食べてみよう。
本来であれば七宝麻辣湯に行くべきなのだろうが、若い女性たちの列にヒゲの肥満男性が並ぶのは、店舗にマイナスイメージを与えるかもしれないと思い、あまり人が並んでいないほうの店舗を選んだ。わかりやすく言えば、「恥ずかしかった」のだ。
男性客は気まずそう
とはいえ、ココカラ麻辣湯も女性客だらけだ。カップル客もいるが、男性客は気まずそうに、いそいそと春雨をすすっている。麻辣湯の店はバイキング(ビュッフェ)形式で、具材をラーメン丼やボウルに入れていくのが人気の理由のひとつだ。
七宝麻辣湯の場合は、ショーケースから約40種類のトッピング(具材)から3品選ぶことができる。4品以上は、1品につきプラス150円。
ココカラ麻辣湯では、約45種類の具材を好きなだけ選び、4種類のスープ・5段階の辛さから自分好みの一杯を作ることができる。何の具材を入れたかを店員に伝えて確認するのではなく、最終的に計量器に載せて、重さによって値段が決まる。つまり、自分の加減次第で安くも高くもできるのだ。
適当に選んだのに、なぜか2000円ジャストに
そして、デブとバイキングの相性は最悪だ。食い意地を張ってしまい、人より多めに盛り付けてしまうのだ。それに筆者は自炊をしないため、野菜や肉の重さがわからない。
それにもかかわらず、パクチーやら豚肉やら水餃子やらを気にせず入れて測ったところ、2000円になった。本当はこんなはずではなかった。同じ値段払えば、ラーメン屋で2杯頼める。
1000円を超えたので、トッピングですでに春雨は盛り付けていたのだが、中華麺も無料で50グラム追加してもらった。茹で時間は大丈夫なのだろうか?
食べ進めるうちに、舌が…
いざ食べてみると思ったよりもスープの肉系のパンチが強く、酸辣湯のような味をイメージしていた筆者の予想とは大きく異なり、うまい。具材もボウルいっぱいに入れたおかげで、さまざまな味と食感を楽しめる。今回ばかりは課金したことで、量ではなく質が上がった。
そんなことを思いながら、ずるずると春雨をすすっていたのだが、徐々に舌が痛くなってきた。辛い。発汗作用や体の火照りで、鼻水と涙が止まらない。
「待って……。どうして、ほかの女性客は平気な顔をして食べていられるの?」
女性のほうが辛さに耐性があるというが、まさにそのことを痛感した。麻辣湯は半端な気持ちで食べていると、顔がぐちゃぐちゃになってしまう。
これが「痺れ」か。
<TEXT/千駄木雄大>
―[「チェーン飯」を2000円で爆食い]―
【千駄木雄大】
編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。
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