―[その判決に異議あり!]―

令和5年の東京都行政書士会の会長選を巡り、東京地裁は令和7年3月、会側の「立候補推薦人の電話番号が名簿と違う」を理由にした届け出不受理を違法とし、選挙を無効とした。控訴審の東京高裁も令和8年1月、一審判決を維持して会側敗訴とした。

“白ブリーフ判事”こと元裁判官の岡口基一氏は、東京都行政書士会 会長選「無効」裁判について独自の見解を述べる(以下、岡口氏の寄稿)。

元裁判官が疑問視「行政書士会長選」“無効”なのに報じられない...の画像はこちら >>

マスコミ各社はなぜか一切報道せず。前代未聞の行政書士会長選無効判断

 前代未聞の判決と言っていいだろう。令和5年(’23年)に行った東京都行政書士会の会長選が「無効」となったのだ。選挙は2年ごとに行われ、任期は2年。立候補には会員10人以上の推薦が必要だったという。

 当時、立候補の意欲を示したのは、現在も会長職に就いている宮本重則行政書士と、本裁判の原告である吉永藍行政書士の2人だった。

 問題となったのは、吉永氏が届けを出した期限最終日のこと。締め切り時間まで残すところ35分というタイミングで、吉永氏が提出した推薦名簿に不備があったことが発覚する。立候補の受け付けをしていた東京都行政書士会が、推薦人の一部の電話番号が会員名簿の記載と異なっていることを指摘。この名簿の不備を理由に届け出の受理を頑なに拒否し続けたのだ。

 当然、押し問答をしている間にも時間は過ぎていく。
その結果、吉永氏の立候補は受け付けられず、無情にも宮本氏の無投票当選が確定してしまったのだ。

 この対応に納得いかなった吉永氏は選挙の無効を訴えて裁判所に提訴。一方、宮本氏は、訴訟係属中も行政書士会の会長職に就き、再選を経て2期4年にわたって君臨し続けることになる。

 そして、提訴から2年後、ようやく裁判所の判断が出た。

 令和7年(’25年)の東京地裁判決と、令和8年(’26年)の東京高裁判決は共に「令和5年の会長選は無効」としたのだ。理由は「推薦人の電話番号が会員名簿のものと同一であるというのが立候補届け出の要件とはされていない」とのことだった。

 だが、すでに宮本氏は会長職の2期目を務めている。令和5年の選挙が無効となったことから、宮本会長の下で行われた令和7年の会長選も連鎖的に無効となった。

高裁判断は至極真っ当

 東京都行政書士会は最高裁に上告する腹づもりからか、会員に向けて、今回出された判決内容を通知していない。しかし、この高裁判断は俺が読んでも至極真っ当である。

 事実認定は高等裁判所の専権であり最高裁はこれをいじることができないから、仮に上告されてもこの高裁判断が覆されるとは考え難い。これが確定し、宮本氏によって行われた4年近くの行為の多くがやり直しになりそうである。


 俺は全国の法曹団体での講演を続けており東京都行政書士会でも2回講演をしているが、現場の行政書士の先生方は常識的な方ばかりである。そのため、こういう判決が出たことが個人的にも信じ難い。しかし、それ以上に、こういう判決が出ても、東京都行政書士会がそれに対する対応を何もすることなく、何事もなかったかのように会の運営が続いているというのがもっと信じ難い。

 さらに信じ難いのがマスコミだ。吉永行政書士側から幹事社への連絡でこの高裁判決を知りながら、1社も報道しようとしない。行政書士には有力政治家も多いことから、お得意の忖度なのだろうか。マスコミは、俺の弾劾裁判の際にも、弁護側が記者会見を何度も開いたのに俺に有利な情報は一切報道しなかった。

 東京都行政書士会はしかるべき対応をすべきであるし、マスコミもきちんと報道してほしいものである。

<文/岡口基一>

―[その判決に異議あり!]―

【岡口基一】
おかぐち・きいち◎元裁判官 1966年生まれ、東大法学部卒。1991年に司法試験合格。大阪・東京・仙台高裁などで判事を務める。旧Twitterを通じて実名で情報発信を続けていたが、「これからも、エ ロ エ ロ ツイートがんばるね」といった発言や上半身裸に白ブリーフ一丁の自身の画像を投稿し物議を醸す。
その後、あるツイートを巡って弾劾裁判にかけられ、制度開始以来8人目の罷免となった。著書『要件事実マニュアル』は法曹界のロングセラー
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