うなぎの寝床のように狭く細長い形状の物件や、築年数が非常に古い物件に住む若者たちは、いつの時代もメディアで取り上げられてきたが、近頃は“狭小物件”などを紹介する内見動画がSNSでも人気コンテンツである。
しかし、リアルな住み心地などは当事者にしかわからないことも多い。“そこに住む理由”には、人生観までも映し出されるはず。
今回は23区内の駅から徒歩5分の43平米のマンションに“家族3人”で暮らすZUNDAさん(43歳)をインタビュー。狭くても都区部に住み続ける覚悟を決めた一家の“マンション選び体験談”を紹介する。(記事は全2回の1回目)
実家は120平米、就職・結婚を経て新宿区でコンパクトな暮らしに
——ZUNDAさんは仙台出身とのことですが、上京したのはいつ頃ですか?
ZUNDA:大学を卒業して就職したタイミングですね。1982年生まれで地元・仙台の高校から、北海道の大学に進学し、就職は北海道か仙台かで考えていたんですが、就職氷河期世代で働き口がなく、東京のIT会社に内定をいただき、2005年から今日まで同じ会社で働いています。SEとして入社し、現在はマネージャー的な役職です。
——現在、親子3人家族で狭小の中古マンションに住んでいるそうですが、これまでの居住歴を簡単にご紹介お願いします。
ZUNDA:実家がわりと田舎で約120平米の一軒家に18歳まで住んでいたんですが、大学時代にアパートで一人暮らしを経験し、東京に引っ越してからは社員寮でした。2009年の結婚を機にそこを引き払い、江戸川橋の2LDK /40平米弱の狭小マンションを借り、10年以上住んでいました。
——けっこう長く住んでいたんですね。どこへ行くにも便利そうな立地ですが、当時は手狭に感じることはあまりなかったんですか?
ZUNDA:築古の賃貸マンションで、畳の和室があったり、冬は寒かったり、細かいつくりは古くてあまり良くなかったんですが、家賃11万円かつ駅から徒歩10分だったので。
——愚問でしたね。
ZUNDA:収納スペースが足りず、クローゼットを買って寝室に設置したら、ベッドを2つ置くスペースが足りなくなってしまいました。マンションのエレベーターも小さく、セミダブル以上のベッドの搬入もできなかったので、二段ベッドで寝起きしていました。
40平米でも「工夫すればやっていける」
——新婚早々、夫婦で二段ベッドの上下に分かれて寝ていたんですか(笑)。お子さんが生まれたのはいつ頃でしょうか?
ZUNDA:2017年ですね。分譲マンションの購入を検討し始めたのは2019年頃で、コロナ禍で物件探しを中断した時期もありつつ、練馬区の中古マンションを2021年秋に購入しました。
——お子さんの成長に伴い、さらに手狭に感じるようになったと。
ZUNDA:それもありますが、最大の理由は月5万円の会社の家賃補助が年齢制限の関係で打ち切られそうだったからです。比較的順調に私の年収は上がっていたものの、妻が出産のタイミングで退職し、世帯年収も落ち込む中で家賃補助5万円がなくなるのは、けっこう痛いと感じ、いっそ中古マンションでも探して買おうかなと。
——なるほど。そもそも今も狭小マンションに住んでいるんでしたね(笑)。
ZUNDA:今の練馬区のマンションは40平米強なので少しだけ広くなっているんですが、当時から40平米前後のマンションでも工夫すれば全然やっていけるとは思っていました。
——予算はどれくらいだったんでしょうか?
ZUNDA:勉強不足で、最初は2500万円で考えていましたが、不動産屋さんに鼻で笑われましたね。いま思えば「そりゃ、そうですよね」って感じですけど。新宿区なんか全く無理でした。
生活資金の“逆算”で決めたローン限界額
ZUNDA:2500万円の中古マンションもあるにはあり、内見も一度してみたんですが、耐震性がよろしくなく、最終的に予算は3500万円まで引き上げました。仙台出身で東日本大震災では実家が大変なことになったため、旧耐震の物件はどうしてもNGで、23区の中でも武蔵野台地のエリア、練馬区や世田谷区の駅近マンションに選択肢が絞られていった感じです。
——気に触る質問かもしれませんが、2500万円/3500万円という予算感には、どんな考えがあったんでしょうか? 最近は世帯年収の10倍の住宅ローンを組む話もあるようなので。
ZUNDA:当時の年収的に私も5000万円くらいは借りられたんですが、結局、世帯年収が高くないのに年収倍率が高いと、目の前の生活が苦しくなるんですよね。いわゆるパワーカップルとかなら年収倍率の10倍近く借りても生活しやすいと思うんですけど。
——世帯年収が高いほど年収倍率を上げやすく、手元にお金が残りやすいということですか。
ZUNDA:極端な話ですが、例えば世帯年収2000万円/手取り1400万円の共働き家庭なら、年間1000万円の返済でも、手元に400万円くらい残ります。
東京で子育てするのは大変
——同じ世帯年収の半分に当たる年間返済額でも、手元に残る金額が全く違うという。
ZUNDA:年間で400万円くらい生活資金があれば、東京でも家族3人で普通に暮らしていけますが、200万だとかなり生活が苦しくなる。急な出費などにも備え、年400万は生活資金を確保したいと考えたら、当時の年収約700万円という状況から、年150万円くらいのローン返済が、やはり限界でした。
——勤続20年、都内IT企業・管理職の1馬力で家族を扶養するリアルをうかがえた気がします。「東京は年収1000万円でもラクじゃない」って、まさにこういう感じだなと。
ZUNDA:東京都内(市町村含む)の子どもがいる世帯年収のボリュームゾーンは600~800万円らしいので、おそらく東京都の子持ち世帯の多くは私たちのような状況なのかなと。SNSなどで発信されるマンションクラスタの方々の話題は高額なマンションの話が多いので、その意味で普通の人の参考にはあまりならないです。
——ちなみに都区部に絞って検討を進めた理由は何かあるんでしょうか? 基本的には広さより立地重視とのことでしたけど。
ZUNDA:子育て支援がより手厚い23区から出たくなかったというのが、けっこう大きかったかもしれません。いま現在の通勤時間は1時間ほどですが、そこは多少長くても仕方ないと考えていました。
——狭小という点で、夫婦でモメることはなかったんですか?
ZUNDA:どちらかというと、むしろ妻のほうが駅から近い立地を重視していましたね。
<取材・文/伊藤綾、取材協力/住まいマガジン「スミノバ」>
―[狭すぎる家、住んでみたらこうだった]―
【伊藤綾】
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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