2020年6月の「妨害運転罪」創設から5年。警察庁が発表した最新の統計資料によれば、あおり運転に直結する「追越し・通行区分違反」などの摘発件数は年間14万件を超えて推移しており、依然として道路上の脅威は根絶されていません。

これほど厳罰化が周知され、ドライブレコーダーが普及した今なお、なぜ無謀なドライバーは絶えないのでしょうか。今回は、過去に大きな反響を呼んだ2つのエピソードを、最新の法規に照らして再構成しました。身勝手な振る舞いが招いた「手痛い代償」の記録です。

“あおり運転”をしたスポーツカーの運転手が、大型トラックの“...の画像はこちら >>

①若い女性を乗せた中年男がニヤニヤしながら迫ってくる…

 北海道在住の荒井太一さん(仮名・30代)は、よく家族旅行で道内を長距離運転するという。あるとき、「あおり運転」に遭遇した。

 白いスポーツカーがものすごい勢いで迫ってくるのがバックミラー越しに見えたそうだ。

「すぐに追い越して行くだろうと思っていたら、真後ろで急にスピードを落として、あおり運転を始めたんです。テレビでよく見る蛇行運転に、後部座席に乗っていた子どもたちも怖がっていました。運転手はフォーマルな格好をした中年男性。

 妻が『ニヤニヤしながらこっちを見ている』というので目をやると、まるで挑発を楽しんでいるような雰囲気でした」

 荒井さんはすぐに車を左側に寄せてスピードを落とした。ハザードを出して追い越すように合図をしたのだ。しかし、男は不気味な笑顔でついてきたという。さすがに恐怖を抱いた荒井さんは「停車するから、相手が降りてきた時のためにスマホで動画撮っておいて」と妻にお願いした。


大型トラックが登場し、まさかの大逆転!

“あおり運転”をしたスポーツカーの運転手が、大型トラックの“仕返し”に意気消沈するまで。一発で免許取消しも、最新の厳罰事情
トラックの運転席で拳を握りしめる男性
 荒井さんがドアのロックを確認してから停車すると、運転手は停車せずに追い越していったそうだ。

「私たちは『車から降りてきて怒鳴ったり、車を蹴ってきたりしたらどうしよう……』と、さまざまなケースを想像しました。助手席には若い女性の姿が見えましたね。本当になんだったんですかね」

 ようやく恐怖から解放され、再び発進しようとした荒井さんだったが、その後、予想外の“逆転劇”が起こった……。

「後ろから大型トラックが猛スピードで走って来るのが見えたため、通りすぎるのを待ちました。すると、先ほどあおり運転をしてきたスポーツカーの後ろにトラックがピッタリとくっつき、けたたましいクラクションを鳴らしていたんです」

 なんと、荒井さん家族をあおっていた運転手が、今度はトラックにあおられたのだ。そして次の瞬間……。

「運転手はトラックの威嚇が怖くなったのか路肩で徐行して、それをトラックはすごい勢いで追い越していきました。目の前の運転手があおられるのを見て、本当にスカッとしました」

 もしかすると大型トラックの運転手は、荒井さんの車があおられるのを見ていて、その“仕返し”でこうした行動を取ったのかもしれないと振り返った。

②狭い山道であおり運転に遭遇!

“あおり運転”をしたスポーツカーの運転手が、大型トラックの“仕返し”に意気消沈するまで。一発で免許取消しも、最新の厳罰事情
スポーツカー
 地方で介護の仕事をしている麻生良夫さん(仮名・30代)。休日は山奥の温泉に行ったり、ドライブをしたりする日々を送っていた。

 そんなある日、山道を車で走っていると、その近辺ではあまり見かけない真っ赤なスポーツカーが現れたという。

「かなりの速度で走っていて、私の車を追い抜こうとしていました。しかし、対向車が来ると避けられない狭い山道だったため、なかなか抜かすことができなかったんです。
すると、運転手はイライラしたのか、後ろで何度もパッシングをしてきたんです」

 ニュースではよく目にしていたが、実際に自分があおり運転に遭遇するとは思わなかったと語る麻生さん。

 スポーツカーは、再び速度を上げて追い抜こうとするが、対向車が来て慌てて急ブレーキを繰り返す。それが5分~10分程度続いたあと、しびれを切らした運転手が……。

抜き去るスポーツカーに起こった悲劇

「窓から顔を出し、『ちんたら走ってんじゃねえ!』『どけよ!』と怒鳴っていました。退避エリアもなく、私はどうすることもできなかったので、ただ大通りに出るのを待つしかありませんでした」

 走行している道に落石や崩れた道があると知っていたため、速度を上げることはできなかったとのこと。しばらくすると道が開けてきた。運転手は爆音とともに速度を上げると、麻生さんを睨みながら抜き去っていったという。

 しかし、その数秒後、驚きの光景が目に入った。

「前日は一日中雨が降り、山道もぬかるんだ場所が多かったんです。あおってきた車は大量の雨を吸った落ち葉の上を走っていました。しかも、運の悪いことにあたりの落ち葉はすべて“イチョウの葉”でした。イチョウの葉って乾いていても滑りやすいんですよね」

 それを知らない運転手。大量のイチョウの葉の上でスリップすると、一瞬で姿を消した。
なんと、そのまま崖から落ちてしまったのだ……。

「車を止めて崖の下の様子を見に行くと、石や木にぶつかってボコボコになったスポーツカーがありました。私はすぐに警察に連絡しました」

 運転手は20代の若い男で、麻生さんの車に残っていたドライブレコーダーの映像により、事情聴取を受けることになった。男はあおり運転をしただけでなく、父親の車を勝手に乗り回していたようで、迎えに来た父親に怒鳴り散らされていたとのことだ。

 幸い、運転手の男性はかすり傷程度で済んだが、運が悪ければ、命も奪われるような大事故にもつながっていただろう。

■改めて知っておきたい「あおり運転」の代償

今回のエピソードのように、一瞬の怒りに任せた行動は、今の時代「一生の後悔」に直結します。警察庁の指導に基づき、現在あおり運転(妨害運転)と認定されれば以下の厳しい処分が下されます。

・免許一発取消し:通行妨害目的で一定の違反をした場合、過去の違反歴に関わらず即座に違反点数25点が加算され、免許取消し(欠格期間2年)となります。さらに高速道路上で相手車両を停車させるなど、著しい危険を生じさせた場合は35点が加算され、欠格期間は3年に及びます。

・厳しい刑事罰:妨害運転罪が適用されると、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科せられます。著しい危険を生じさせた場合は、5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金となります。これらは事故を起こさなくても、違反行為そのものに対して科される非常に重い罰則です。


・実名報道のリスク:悪質なケースでは暴行罪や危険運転致死傷罪が適用され、逮捕や実名報道に至る例も少なくありません。

被害に遭った際は、相手を刺激せず、安全な場所(SA・PA等)へ避難して迷わず110番通報を。最新の交通ルールを正しく知り、冷静な判断で自分と家族の身を守りましょう。

<取材・文/chimi86 再構成/日刊SPA!編集部>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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