ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する20チームのロースターがほぼ確定した。なかには保険問題でベストメンバーにほど遠いチームもあるが、メジャー組9人が集結した侍ジャパンはベストに近い布陣になったといえるだろう。

ソフトバンク・杉山の選出外は井端監督が“空気を読んだ”可能性も?

 国内組は当初、昨季の日本シリーズで対戦したソフトバンクと阪神から球団別の最多となる4人ずつが選ばれていた。ところが、阪神の石井大智が左アキレス腱損傷のため辞退を発表。代替選手として西武の隅田知一郎が追加招集された。
 貴重な左腕が1枚加わることは侍ジャパンにとって心強いが、本来ならソフトバンクの杉山一樹が選ばれていてもおかしくなかった。むしろ、先発投手と救援投手のバランスを考えれば、昨季31セーブを挙げた杉山が最有力だったはずだ。

 しかし、ソフトバンクからはすでに4人が代表入りしており、井端弘和監督がそんなチーム事情を鑑みて、“空気を読んだ”可能性もなくはないだろう。

合計10人も…ソフトバンクを襲う“WBC大量流出”

 実はソフトバンクは侍ジャパンの4人(近藤健介、周東佑京、牧原大成、松本裕樹)以外にも、6名の外国人選手がWBCに参加を予定している。

 チームにとって最も大きな痛手となり得るのが、キューバ代表に選出されたモイネロの不在だろう。鷹の剛腕左腕は昨季、2年連続となる最優秀防御率のタイトルを獲得し、パ・リーグMVPにも選ばれた。

 ソフトバンクの先発陣は、有原航平がライバル・日本ハムへ流出するなど、台所事情はただでさえ厳しい状況。エースの不在が長引けば、開幕に向けて大きな不安が残る。

 またモイネロの他にも、ニカラグアのダウンズや育成枠からモイネロと同じキューバのサルディ、さらにメキシコの剛腕アルメンタも自国の代表入りを果たしている。

 それ以外にもルーキー徐若熙(シュー・ルオシー)と育成2年目の張峻瑋(チャン・ジュンウェイ)の2人も台湾の代表候補にそれぞれ選出されており、この時点で侍ジャパンの4人と合わせて合計10人の離脱が濃厚だ。

杉山が追加招集される可能性も

 さらにもし侍ジャパンの投手陣にさらなるアクシデントが発生するようなことがあれば、杉山が追加招集される可能性も出てくるだろう。そうなれば、その数は10人を超えてしまう。


 侍ジャパンをはじめ、それぞれの代表チームがWBCで勝ち進めば、ソフトバンクへの合流は遅れることになる。WBCの決勝から開幕戦まではわずか10日程度しかないため、投手は例年より1か月前倒しで肩のピークを持ってこざるを得ない。ソフトバンクに合流後、すぐに一軍で投げるというわけにはいかないだろう。

 自国の威信を背負ってプレーするプレッシャーもあり、公式戦で本来の実力を発揮できない可能性もぬぐい切れない。

イチローも倒れた…WBCが選手の体に残す“見えないダメージ”

 WBCにまつわる最も有名なエピソードを持っているのがイチローだ。2009年の第2回WBCで原辰徳監督率いる侍ジャパンが大会連覇を達成したが、この時のチームリーダーを務めていたのがイチロー(当時マリナーズ)だった。

 1番打者としてチームを牽引する立場を期待されたが、大会序盤から調子が上がらず、打撃は低迷。それでも宿敵、韓国との決勝戦では延長に勝利を決定づけるタイムリーを放ち、連覇に貢献した。試合後に安堵の表情を浮かべるイチローを記憶しているファンも多いだろう。

 しかし、WBC決勝から約2週間後に行われたマリナーズの開幕戦にイチローの姿はなかった。開幕数日前に体調不良を訴え、検査を受けた結果、胃潰瘍が判明。レジェンドがメジャーで故障者リスト入りしたのはこの時が最初で最後だった。

ソフトバンクに立ちはだかる“WBC後遺症”という試練

 選手にとってWBCとは、それだけ重圧を背負って戦う大会ということだろう。
そこには日本の国民性もあるかもしれないが、WBC後に本来の力を発揮できなくなったり、無理がたたってケガをしたりする選手は、2009年のイチローに限ったことではない。

 今年はWBCの決勝からプロ野球開幕までは10日ほどしかなく、準々決勝ラウンドまで残ったチームの選手は、帰国後に再調整を強いられるのは間違いない。多くの選手が代表入りを果たしたソフトバンクは、他球団に比べると大きなハンデを背負うことになる。

 ソフトバンクは昨季、日本ハムとデッドヒートを演じた末、夏以降に地力の差を見せつけてリーグ連覇を成し遂げた。

 今季も優勝候補の最有力として迎えるが、先述した通り、右腕エースの有原が古巣・日本ハムに移籍。パ・リーグはソフトバンクと日本ハムの2強の様相を呈している。

 ソフトバンクがWBCの余波で出遅れる可能性は決して低くない。ただし、昨季も開幕から1か月が経過した5月上旬の時点で最下位に沈むなど、春先の戦いには不安を残しているのも事実である。

 各国のスター選手をそろえていることが強みのソフトバンクだが、それがペナントレースへ悪影響にならないことを祈るのみだ。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。
米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
編集部おすすめ