実績も勢いも最上位。フェブラリーSは三つ巴の戦いに
前評判が高いのは、連覇が懸かるコスタノヴァ、チャンピオンズCに続くG1連勝を狙うダブルハートボンド、そしてG1で2勝2着6回の実績を誇るウィルソンテソーロの3頭だろう。コスタノヴァは昨年、R.キング騎手とのコンビで戴冠したのを最後に勝利がないが、前走の武蔵野Sで致命的な出遅れを挽回し、負けて強しといえる2着に食い込んだ。得意とする東京コースなら最有力と評価していいだろう。
そのコスタノヴァと1番人気を争うことになりそうなのがダブルハートボンドだ。これまで8戦7勝2着1回と抜群の安定感を誇り、前走も差し馬有利の展開を4角3番手から押し切って見せた。初のマイル戦で速い流れにうまく対応できれば間違いなく上位争いに加わってくるはずだ。
チャンピオンズCでそのダブルハートボンドとハナ差の接戦を演じたのがウィルソンテソーロだった。中央、地方、海外とどんな条件でも好走してきた百戦錬磨のベテランには川田将雅騎手が騎乗。最終追い切り後の会見では、「本質的には1600mが一番合っている」と、距離適性にも自信を見せた。
「3強対決」は本当に堅いのか
今年のフェブラリーSは、実力・実績ともに3強が他13頭をリードしているといえるだろう。そこで思い出したいのが、競馬界に古くから伝わる2つの格言だ。それが「両雄並び立たず」と「3強対決は逆らうべからず」というもの。
直近で最も盛り上がった3強対決といえば、2020年のジャパンCを思い出すファンも多いだろう。アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトという3頭の三冠馬が勢ぞろいし、3強の様相を呈した。
結果はご存じの通り、アーモンドアイが完勝を収め、コントレイルが2着、デアリングタクトが3着に入り、三連複の配当は300円という安さだった。
格言通りなら、今年のフェブラリーSも3強の決着となってもおかしくないが、各馬のデータを見ると、「3強総崩れ」という最悪のシナリオも考えられる。
コスタノヴァを襲う“魔の中13週”
ここからはフェブラリーSがG1に昇格した1997年以降の過去29年のデータを取り上げていきたい。まずコスタノヴァには、休み明けの不安が付きまとう。前走の武蔵野Sから中13週(約3か月)と十分な間隔を空けての一戦を迎えるが、実は過去に29頭いるフェブラリーS勝ち馬のすべてが中12週以下の間隔でレースに臨んでいた。
ここ数年の競馬界はぶっつけ本番でしっかり結果を出す馬が増えたが、フェブラリーSに限ってはこれが当てはまらない。中12週以上でフェブラリーSに臨んだ馬は、過去29年の間に、のべ26頭いたが、【0-1-1-24】という絶望的な成績が残っている。
敗れた馬の中には2022年レッドルゼル、2013年カレンブラックヒルという1番人気に支持された2頭も含まれている。それだけにコスタノヴァには嫌なデータといえるだろう。
牝馬未勝利の鬼門に挑むダブルハートボンド
そんなコスタノヴァ以上に不安なデータを持つのが、ダブルハートボンドだ。前走のチャンピオンズCでは牡馬勝りのパワーと勝負根性を見せつけたが、過去29回のフェブラリーSにおいて牝馬は39戦して【0-1-3-35】。また、牝馬という点以外にもダブルハートボンドには死角が少なくない。これまで1800m以上の距離しか経験をしておらず、ワンターンのコースも初めて。さらに8戦すべてを4角3番手以内で通過するなど、先行力を持ち味にしているが、直線の長い府中ではそれが諸刃の剣となり得る。
カフェファラオが連覇を達成した2022年に4角3番手以内の3頭が上位を占めたこともあったが、これは例外で、基本的には中団から決めて勝負になるレース。それだけに差す競馬を経験したことがないダブルハートボンドにはクエスチョンマークが浮かんでしまう。
ウィルソンテソーロに立ちはだかる7歳の壁
最後は3番人気が濃厚とみられるウィルソンテソーロだ。この馬に立ちはだかるのは年齢の壁である。先述した通り、経験値が強みのウィルソンテソーロだが、フェブラリーSで7歳以上の馬は大苦戦している。G1昇格後の過去29回で、のべ145頭が挑戦し、【0-9-6-130】という成績が残っている。
よくダート馬は芝馬に比べて活躍期間が長いといわれるが、フェブラリーSにはそれが当てはまらない。やはり府中のマイル戦に対応できるスピードと持続力という点で、4~5歳の若い馬に一日の長があるといわざるを得ない。
狙ってみたい伏兵候補は…
以上、3強の不安データが出そろったところで、狙ってみたい伏兵候補も2頭挙げておこう。1頭目が前走のチャンピオンズCで11着に敗れたシックスペンスだ。
今回は戸崎圭太騎手に乗り替わってそれほど人気にならなさそうだが、鞍上は“程よい人気”のG1でこそ力を発揮するタイプ。さらに積極策を取った前走は、ダブルハートボンド以外の先行馬が軒並み大敗を喫していた。南部杯と同じ左回りワンターンのコースなら、改めて狙ってみる価値はあるはずだ。
ラストイヤーに賭けるラムジェットの一発も
2頭目はチャンピオンズCで3着に追い込んだラムジェットだ。2024年6月に東京ダービーを勝って以降、白星から遠ざかっているが、久々の1600mが起爆剤となるのではないか。もともと2歳時には1400mで2勝しているように、スピードも持ち合わせており、自分のリズムで運べれば一発があっても驚けない。シックスペンスは国枝栄調教師、ラムジェットは佐々木晶三調教師の管理馬で、両調教師は今月末にそろって定年引退を迎える。今年のフェブラリーSは、東西を代表する名伯楽どちらかの“ラストダンス”に期待を込めたい。
文/中川大河
【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。
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