今年も、憂うつな花粉症シーズンがやってきた。スギ花粉の飛散のピークは2月下旬~3月中旬、ヒノキ花粉の飛散ピークは3月下旬~4月上旬だと、日本気象協会は予測している。
まだ先は長い!
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花粉症になる人は、年々増えている

「現場の感覚で言うと、今年は花粉症シーズンが長期化しそうです。花粉症をきっかけに様々な体調不良に襲われる“花粉症ゾンビ”を懸念しています」と語るのは、池袋ながとも耳鼻咽喉科院長の長友孝文先生だ。

花粉症が体調不良を引き起こす理由を長友先生に聞いた前編に続き、後編では「治療と予防」について詳しく話してもらった。

そもそも、日本で花粉症になる人は増えていて、今や“国民病”とも言われている。花粉症の有病率は、1998年19.6%→2008年29.8%→2019年42.5%と、20年で約2倍になっているのだ(松原篤他、日本耳鼻咽喉科学会会報2020;123:485-490)。

対策として、「手洗い、うがい、鼻うがい」で花粉をすぐ洗い流すのは基本中の基本。だが、それではおさまらず、「もう医者にかかろうかな」と思っている人も多いだろう。医療機関ではどんな治療をするのか、長友先生に解説してもらった。

花粉症を本気で治す・防ぐには?病院での治療から、免疫バランスの整え方まで【医師監修】
長友孝文先生

医療機関での治療は何をする?

治療法を理解するうえで、ちょっと難しいが「花粉症のメカニズム」をざっくりと説明しておこう。

<花粉が体内に入る
⇒「あっ、異物が侵入した」と体が察知し、それに対抗する「IgE抗体」が過剰に作られる
⇒細胞から、ヒスタミンなど炎症物質が過剰に放出される
⇒鼻水や目のかゆみなどが起きる>

要は、花粉に対して「免疫システムが過剰反応して暴走する」のが花粉症だ。

花粉症を本気で治す・防ぐには?病院での治療から、免疫バランスの整え方まで【医師監修】
図:ますみかん
長友先生が行っている標準的な花粉症治療は、以下のような種類があるという(これがすべてではないが、保険診療で代表的なもの)。

<一般的な治療>



●飲み薬(抗ヒスタミン薬)
必ずといっていいほど処方されるのが抗ヒスタミン薬。過剰に放出されたヒスタミンの作用を抑える飲み薬だ。
「飲み始めた日から、遅くても数日以内には効果が認められます。数多くの種類があり、効き目や副作用が異なるので、医師と相談しながら自分に合った薬を考えていくといいでしょう」(長友先生、以下同)
副作用として、眠気や判断力の低下が起きることがある。


●点鼻薬(鼻噴霧ステロイド)
ステロイドを鼻の穴にスプレーし、アレルギーによる炎症を抑える。鼻汁、鼻閉、くしゃみすべてに効果があり、副作用も少ないとされる。

<重症者向きの治療法>



●ゾレア皮下注射(抗IgE抗体注射)
重症な人向けの治療で、ゾレアという薬を注射する。「一日中鼻がつまって鼻呼吸ができないなど重症で、どの薬も効かなかった場合に、専門医が検討する“最後の砦”です」。
アレルギーの元凶であるIgEという抗体そのものを無力化する。

<根本的な治療法>



●舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)
アレルギー体質を変える根本的な治療。だが、花粉が飛散している時期には始められず(治療スタートは6~8月)、また治療に3~5年かかる。
アレルギーの原因となる抗原(スギ花粉など)を繰り返し少しずつ舌下に投与して、その抗原に対する感受性を低下させる。つまり“スギ花粉etc.は敵じゃない”と体に覚え込ませるわけだ。

花粉症を本気で治す・防ぐには?病院での治療から、免疫バランスの整え方まで【医師監修】
マスクや眼鏡で防御するのも基本

自分でできる根本対策、免疫バランスの整え方

一方で、自分でできる“根本的な体質改善”もある。それは「食事や生活習慣によって、免疫バランスを整えること」。

少し前までは「免疫力をアップする」という言い方がされた。だが、花粉症のように免疫(防御力)が効きすぎて症状が出ることもあるわけで、今では「免疫バランスを整える」ことが重要だとされている。

「免疫にアクセルを踏んだり、ブレーキをかけたりするバランスを整えることが重要。これが花粉症の改善にもつながります。
免疫にブレーキをかける『制御性T細胞』は、昨年のノーベル賞で話題になりました」
制御性T細胞を発見した坂口志文氏(大阪大学・特任教授)が、2025年のノーベル生理学・医学賞を受賞したほど、いまホットな話題なのだ。

免疫バランスを整える“三部隊”とは

免疫バランスを整えるには、「発酵食品、食物繊維、ビタミンDの“三部隊”を日頃の食事で摂ることが大切です」と長友先生は言う。

①発酵食品
「腸内には免疫細胞の7割が集まっているため、腸内環境を整えることが免疫バランスを整えることにつながります。発酵食品はいわば“実行部隊”です」。
腸内有用菌が含まれる、ヨーグルト、納豆、キムチ、ぬか漬けなどを積極的に摂ろう。

花粉症を本気で治す・防ぐには?病院での治療から、免疫バランスの整え方まで【医師監修】
発酵食品
②食物繊維
「有用菌のエサとなって、腸内環境を整える“補給部隊”が食物繊維です」。
食物繊維には水溶性と不溶性があって働きが違うが、細かいことよりも、まずは食物繊維が多い食品を知って食べることが基本。一般に食物繊維が多いものとして、海藻、きのこ、野菜、果物、豆、穀類あたりを覚えておこう。

③ビタミンD
「ビタミンDは免疫の司令塔で、いわば“指示部隊”です。食品では鮭・サンマや干ししいたけに多く含まれますが、日光に当たることで体内でビタミンDが生成されます」

日光の中でもUV-B(紫外線B波)に当たるとビタミンDが生成される。UV-Bは洋服や窓ガラスではじかれることが多いので、屋外で顔や手に日光を浴びよう。夏は10~20分、冬は30~60分が目安といわれている。


花粉症を本気で治す・防ぐには?病院での治療から、免疫バランスの整え方まで【医師監修】
ランチ

もしランチでこの“三部隊”を摂るなら、例えば「鮭弁当+ワカメの味噌汁+ヨーグルト」といったメニューになる。中年男性は「ラーメンだけ、牛丼だけ」のような食事になりがちだが、まずそこから変えていきたいものだ。

免疫バランスを整えるには、当然ながら、しっかり眠る、ストレスを溜めない、などの生活習慣も関わってくる。じっくり取り組もう。

【長友孝文(ながともたかふみ)先生プロフィール】
耳鼻科医、池袋ながとも耳鼻咽喉科院長。
2007年国立大学法人浜松医科大学医学部医学科卒業。東京大学医科学研究所先端がん治療分野特任研究員、自治医科大学病院耳鼻咽喉科病棟医長、外来医長などを経て、2022年池袋ながとも耳鼻咽喉科を開院。自身が長年アレルギー性鼻炎に悩まされていたことに加え、すべての世代を一生涯通して診療が行えることで耳鼻咽喉科に尽力。

<文/川崎かおり>
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