こんにちは、シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。

立ち仕事に向く靴と、歩くのに向く靴はまったくちがいます。私自身30~40代の計15年間は、靴修理の現場で1日8時間以上立ちっぱなしで、座るのはNGという会社にいたので断言できますが、ふわふわと柔らかい足元では想像以上に疲れます。最新のスニーカーを買ったのになぜか足が異常に疲れるという方は、靴選びがまちがっている可能性があります。

なぜスニーカーを買ったのに、立ち続けるとツラくなるのか。理由は簡単で、その靴が歩くためのものだからです。「最大のクッションを利用して」「前に足が進む」という最新のハイテクシューズは言ってみれば、ぬかるんだ下り坂のようなもの。自転車と同様に、走り続ければ安定するのですが、停止し続けるのは至難です。しかし靴の売り文句だけでは見分けがつきません。実体験ベースで、立ち仕事に向いている靴や向かない靴、そして向かない靴への解決策を解説します。

立ち仕事に向く靴、アディダス「スーパースター」

最新スニーカーなのに「立ち仕事で疲れる」ワケ。“ふわふわクッ...の画像はこちら >>
スーパースターはもともとバスケットボール用の靴で、いわゆるバッシュです。長距離を歩くのにはあまり向いていませんが、「止まる」という一点においては完璧。スーパースターでも、ナイキのバッシュでも、オールドスタイルでもハイテクでも構いません。目的は同じ。
せまいコートの中を、どっちにダッシュするか、ターンするかわからない、一気にブレーキをかけて体の軸を決めてボールをコントロールするための靴がバッシュ。底の返りのなさと、靴底が全面に地面に着くという設計は、立ち続けたり、狭い面積を歩く、踏ん張るには最適です。美容師でバッシュ愛好者が多いのは、実は理にかなっています。

立ち仕事に向く革靴、スコッチグレイン「ASSURANCE」

最新スニーカーなのに「立ち仕事で疲れる」ワケ。“ふわふわクッション”を選んではいけない理由
スコッチグレイン「ASSURANCE」。4万1800円。写真は公式HPより
本格革靴は、案外立ち仕事に向いています。と言うと、「そんなバカな。硬すぎるじゃないか?」と思われるかもしれません。立っていて疲れるのは中途半端にクッションを利かせた革靴です。硬いカカト芯で、慣れるまでは容赦なく硬い革底は、足元を固定し、全身のブレを止めるにはメリットしかありません。この感覚は体験しないとうまく伝わりませんが、革靴は目安として4万円を超えてくると、突然違う顔を見せます。気合を入れなくても、自動的に「びしっと立たされる」ことになります。カカト周りから踏まずまでの骨を固い芯で立体的に抑えてくれるからです。しかし硬い靴、と聞くだけで敬遠されがちですが、逆なのです。ラクです。
ついでに言えば革の中底が蒸れも匂いも吸収します。ラクでリピーターがいるからこそ、高いコストでもつくり続けられているのです。

立ち仕事には向いていない靴、HOKA「ボンダイ7」(復刻版)

最新スニーカーなのに「立ち仕事で疲れる」ワケ。“ふわふわクッション”を選んではいけない理由
HOKA「ボンダイ7」。2万3100円。写真は公式HPより
「歩き続ける」「走り続ける」ならHOKAが無双です。しかし、唯一の弱点が「止まり続ける」こと。完全に実体験ですが、ハイパークッションとつまさきのローリングが仇となり、立ち仕事で一日を終えると謎に疲労感が残ります。それまでカチカチの革靴だったのですが、狭い職場で立ち続ける、ちょこまか動き続けると、踏ん張りが効かず、疲労感が溜まる。HOKAに限らず、どのメーカーでも数万円するハイテクのランニングシューズやウォーキングシューズだからといって万能ではありません。同じことがふわふわのリカバリーサンダルにも言えます。すべての靴にはちゃんと目的があるのです。

立ち仕事の最短距離=インソール

最新スニーカーなのに「立ち仕事で疲れる」ワケ。“ふわふわクッション”を選んではいけない理由
リゲッタ「ルーペインソール」。1650円。写真は公式HPより
難しく考えず、まずこれだけを覚えてください。硬い靴には柔らかいインソール、柔らかい靴には硬いいインソール。この公式にほぼ例外はありません。今はほとんどの方がスニーカー、あるいはスニーカーのような革靴を履いているので、最低限のコストであれば、リゲッタ「ルーペインソール」が無難。


めちゃくちゃ硬いです。税込み1650円とお値段も手頃。クッションはいさぎよいほどに皆無。カカトの骨の真下に穴が開いており、たったこれだけで足元のぐらつきが消えます。究極の話ですが、「立つ」というただ一点ならこのインソールに勝てるものはなかなかありません。コンバースだろうがワークマンだろうが、いまいち安定しない足元と全身のブレを一発で決めます。人間の体は変なところで単純なもので、カカトが決まれば全身が決まります。アクティブな運動には向いていませんが、長距離を歩かないことがわかっているなら、使わない手はありません。

靴は「高い=ラク」ではありません。立ち仕事では、どれだけ足元が“動かないか”が疲労を左右します。歩行向けのハイテクシューズは前に進み続けてこそ安定する設計。止まり続ける環境では不安定さがストレスになります。
もし良い靴のはずなのに疲れるなら、用途とミスマッチしているかもしれません。必要ならインソールで調整を。明日の足取りが確実に変わります。

【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』。著書『予約の取れないシューフィッターが教える正しい靴の選びかた』
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