セガサミーホールディングスは、今期通期375億円の純利益としていた見通しを、130億円の純損失へと一転させました。セガが純損失となるのは2015年3月期ぶり。
堅調に推移していた業績が一変しました。
 大赤字を出すことになった主要因が、成長に向けた大型投資の失敗。ゲームという当たり外れの大きいビジネスの難しさを浮き彫りにしました。

セガが10年ぶりの“赤字転落”へ。「1000億円超で買収した...の画像はこちら >>

1000億円超を投じた買収劇

 セガは今期通期で赤字見通しへと切り替えましたが、売上高は従来の予想よりも3.2%引き上げています。前期比で14.2%もの増収。決して売上が著しく下がっているわけではありません。

 ただし、売上が上向かない子会社があります。2023年に買収したフィンランドのゲーム会社ロビオです。ロビオは2009年にリリースしたモバイルゲーム「アングリーバード」で一大旋風を巻き起こした会社。日本ではあまり知られていないものの、このシリーズは2022年までに累計50億ダウンロードという途方もない記録を打ち立てています。

 「アングリーバード」はアメリカで映画化されるなど、ゲームに留まらない人気を獲得しました。

 セガはロビオを当時のレートで、1000億円超を投じて取得しました。セガがM&Aによって世界的なIPを取得するということと、巨額の資金を投じたことで話題になりました。


 しかし、「アングリーバード」はすでにピークを過ぎていました。買収後の2024年3月期以降は減衰傾向が続いており、回復する兆しがありません。

期待作の苦戦が大きな誤算に

 セガは買収時、人気IPを取得することはもちろんですが、ロビオが持つモバイルゲームの開発・運営能力を高く評価しており、セガが持つIPと連携することでモバイル市場における存在感を高めることができると考えていました。

 その集大成と言えるゲームが、2025年11月にリリースした「ソニックランブル」。ロビオとの協業タイトルであり、セガの看板IPであるソニックという組み合わせ。延期を経ての世界同時配信となりましたが、結果は計画していた経営指標を想定より下回るものに終わりました。つまり、ロビオ買収によるシナジー効果も生じなかったことになります。

 セガはロビオの資産価値の見直しを行い、計画していた収益性を下回ることが判明したために313億円もの「のれん」の減損損失を計上しました。これが大赤字を出した背景にあります。

収益の安定阻む「モバイルゲーム」の壁

 セガは「ペルソナ」や「龍が如く」、「ソニック」などゲーム機向けのソフトウェアには強みを持っているものの、モバイルゲームでは大きなシェアを獲得しきれずにいました。

 2024年10月リリースの「ソニック × シャドウ ジェネレーションズ」が大ヒットを記録しました。しかし、このタイトルのようなゲーム機向けはどうしても業績の振れ幅が大きく、中長期での見通しが立てづらいという弱点があります。

 その点、モバイルゲームはヒットさせると収益の安定化に寄与しやすくなります。モバイルゲーム市場は、日本では縮小傾向にあるものの、世界的に見るとまだまだ伸びしろはあります。
そしてソニックはアメリカで絶大な人気を誇っており、セガが世界的なヒット作を生み出せば収益構造を大きく変えることができたのです。

 足元でセガはサッカークラブ経営のシミュレーションゲーム『プロサッカークラブをつくろう!2026』の新作をリリースするなど、モバイルゲームの強化を図っています。このゲームは200万ダウンロードを突破しました。

 しかし、期待をかけていた「ソニックランブル」が計画していた収益性を得られなかったとすると、ロビオを軸にした大型タイトルの開発に向けたプロジェクトは難航が予想されます。つまり、グローバルタイトルの開発に対する積極姿勢が減退する懸念があるのです。

 来期は4本の大型新作タイトルを市場投入する予定。ただし、振れ幅が大きい経営課題を解消しきれておらず、難局は続きそう。セガは売上のボラティリティの高さを抑えるため、データアナリティクス専門組織を新設し、データドリブン型の事業構造への転換を検討しているといいます。

 一方、ゲームのヒット作の創出プロセスにおいて、これまで得られたデータを活かせるかどうかは不確定。常識を覆すようなアイデアが求められるためです。ゲーム開発においては、予測しきれない難しさがあります。

オンラインカジノの規制強化も逆風に

 減損損失は他の子会社でも計上する見通しです。
その子会社がオンラインカジノを運営するステークロジック。セガはカジノ事業を展開していますが、世界的に人気のあるオンラインカジノを成長戦略の柱に位置づけていました。

 しかし、ギャンブル依存の影響を危惧する声が世界的に広がり、特に主要市場であるオランダで規制が強化。ステークロジックの事業環境がセガの想定を上回るペースで悪化しました。今期中に150億円規模の減損損失を計上する見込みです。

 こうした事態を受けて、セガは大型のM&Aを凍結。戦略的投資枠として用意していた資金のうち、200億円を自社株買いに充当する決定を下しました。投資家への配慮を優先したのです。

 セガは長期に渡る構造改革を終え、成長に向けた大型投資を続けていました。その歯車が上手くかみ合わず、踊り場にさしかかった形。難しいかじ取りを迫られています。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。
大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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