「生成AIに仕事を奪われすぎて月収が大幅ダウンしました。正直に言うと生活が厳しいです」
X(旧Twitter)上で、とあるポストが大きな話題になっていた。
フリーランスのWebライターが「生成AIに文章を書かせれば、人間のライターは不要」といった理由で、クライアントから仕事打ち切りなどの仕打ちを受けていると言うのだ。

「AIに仕事を奪われた」SNSで話題の28歳男性を直撃!“月...の画像はこちら >>

話題の投稿主を直撃。心境を聞く

Open AI社の「ChatGPT」を始め、Googleの「Gemini」やXの「Grok」など、近年は一般レベルでも生成AIの普及速度が凄まじい。例えばビジネス現場ではリサーチや資料ラフの制作、日常生活では料理メニュー提案や買い物での店舗選び、時には恋の相談や一人飲みの愚痴相手まで、文字通り何でもやってくれる頼れるパートナーであるのは間違いない。一方、文章の執筆やイラスト制作といった、コンテンツ制作・クリエイティブの分野が、生成AIの影響力に大きく揺さぶられているのも事実である。

そこで今回は冒頭のポストをした、X上でのユーザー名「生成AIに仕事を奪われた男@FFFの民」さんにインタビューを実施。遭遇したトラブルの経緯や心情を本人の口から語ってもらおう。筆者自身もWebライターであり、この問題に決して他人事ではいられない身だ。これから訪れるであろうAI全盛時代に備えてのヒントを掴んでいきたい。

2025年夏に独立。きっかけは?

「あのXをポストして以来、様々な方々から反響がありまして。仕事上の付き合いのある方々から『この仕事は良かったらどうかな?』などとオファーを頂いたこともあって感謝しています」(Eさん、以下同じ)

「生成AIに仕事を奪われた男@FFFの民」さんは東京都在住の28歳。
Webライターとしては主にYouTubeショート動画の台本制作、前職の経験を活かした金融系、自分の体験を活かしたエッセイなどのテーマ・ジャンルで記事を執筆している。当記事では彼の本名をアルファベットに置き換えて「Eさん」と記載していく。

まずはEさんに、現在のWebライター業を始めるきっかけを伺った。

「独立したのは2025年の夏頃ですね。当時は会社員でしたが、社内の人間関係が上手くいかなくて休職したり、生きづらさを感じていたことがあったんです。それと自分の体験を元に書いた有料note(300円)が1部売れたことがあり、文章を書くことに苦手意識も無かったので。きっかけ自体は軽いものですけど、チャレンジしやすい年齢のうちにと思って一念発起しました」

寄り道しつつも、フリーでの活動は順調だった

Eさんは独立後しばらく「クラウドワークス」「ランサーズ」といった業務アウトソーシング系のサービスを中心に活動。新人フリーランスの多くが経験することだが、この頃は仕事単価の低さや、案件を装ったスクール勧誘などに悩まされたという。

「そこから改善のきっかけになったのは、仕事で使っていたコワーキングスペースで、オフラインの人間関係を作れたことですね。このコワーキングスペースで作業するために、地元(静岡県)から引っ越してきたのですが、夜遅くまで作業している時に、たまたま相席していた経営者さんから『頑張ってますね!よかったらお話しませんか』って誘われたりして、そこから仕事の発注につながったことが何回かあります」

コワーキング以外でも、企業・メディア関係者の複数集まるセミナーや交流会に参加したり、「コンテンツ東京」のような大型BtoB展示会に自ら出展するなど、フリーランスが対人での周知機会を増やす方法は少なくない。ネットでの交流が当たり前になった今だからこそ、リアルでの語らいや懇親が大事なのだと感じさせる話だ。

地道な努力と前職から培った知見、そして人のつながりに支えられて、Eさんの収入は徐々に上昇。一時期は毎月約30万円の成果があるなど、フリーランスとしてかなり順調にステップアップしていたという。
だが、そんな時期にEさんを襲ったのが「生成AIショック」であった。

「AIの方が分かりやすくて…」仕事を奪われるまで

具体的にEさんが経験した出来事については、概ね冒頭のポスト内で記載されている事そのままだと言う。要約をすると下記のとおりだ。

3ヶ月ほど前、以前からEさんが記事執筆していたECサイトの担当者より、連絡用ツール経由で「社内導入したAIで質の良い記事が書けるので、来月以降の記事はもう(書かなくても)大丈夫」という趣旨のメッセージが入る。「今まで本当にありがとうございました!」という明るい言葉を添えながらも、実質的な仕事の「打ち切り」である。

さらにその約1ヶ月後、今度はとあるオウンドメディアのコラム記事執筆について、担当者に「AIにEさんと同じテーマで記事を書かせたら、EさんよりAIの方が分かりやすくて綺麗」という通知が入る。その後、Eさんの業務範囲は記事全体の構成・執筆から、AIが全体ラフを書いた記事の簡単な手直し作業にまで格下げされ、仕事1件あたりの報酬も10分の1に引き下げられてしまったという。

収入が30万円→10~15万円に激減

こうした扱いの原因について、Eさん自身は「自身の能力や、要領の悪さに問題があるのでは」と謙虚に分析している。実際にはクライアント側の不義理や契約的問題など様々な外的要因も考えられるが、いずれにせよこの出来事は、Eさんの収入とメンタルに大きなダメージを与えた。

「現在の収入は月10万円から15万円ほどです。向こうはチャットなどでパッと簡単なメッセージを送ってくるだけですけど、こっちは本当に悲しいですよね。今まで付き合いのあるクライアントに対して『今さら色々と文句を言うのも見苦しいかな』という気持ちもあって、強気に出づらいですし。

単に仕事を打ち切られるよりも、仕事内容と報酬をグッと低く抑えられてしまう方が、実は心情的にツラいです。下手に仕事がズルズル続いてしまっているせいで、そっちの方に集中力や時間を取られてしまって、残った仕事の方にも悪影響が出ますから。
報酬自体は全く無いわけでもないので、こちらから『もう辞めます!』とも言い出しづらいです」

淡々と語るEさんの口調には活気がないが、収入が半減もしくは3分の1になってしまったのだから無理もない。企業からフリーランスへの不当な扱いについては、2024年秋に施行された「フリーランス新法」など、是正・改善の動きが進んでいる。今後はより一層踏み込んで、生成AI絡みのトラブルに対する施策強化も必要なのではと、筆者もまた感じずにはいられなかった。

コワーキングで声を掛けられて…

生成AIの影響で収入が大きく減ってしまい、苦境に立たされているEさん。一方、現在救いになっているのは、仕事で出会った人々や知人・友人との絆だという。

「めっちゃ落ち込みながらコワーキングスペースにいた時に、心配されたのか『どうしたの?』って声を掛けられまして。経緯を相談してみたら『それでXの記事を書いてみなよ』ってアドバイスされたんです」

友人からもEさんを労って励ます声が多々あり、それが今の心の支えとなっているそうだ。とはいえ生計を立てなければ、どうにもならない。現在のEさんは、どこかの企業へ再就職することを想定して求人情報を調べるなど、キャリア再建のため広い視点で将来を模索しているという。

将来を見据えて前向きに試行錯誤する日々

だが、Eさんは決してフリーランスのライターとして希望を捨てた訳ではない。今後の目標や方針について尋ねてみた。

「YouTubeショート動画の台本については、現在月10本ほど制作しています。これの本数を増やしたいのと、クライアントから『条件をクリアしたらディレクターに昇格させる』って提示されているので、そちらに注力したいです。
アウトソーシング系の案件が制作のきっかけだったんですが、現在はホラー系のショート動画が得意なので、そっちを伸ばしていこうと思います」

もう一つ、Eさんはブログでの情報発信も積極的に行いたいと語った。現在はブログやSNSなどで誰でも情報発信できる時代。とりわけ「note」のようにまとまった文章を随時投稿できる媒体を活用し、有料記事などで収益を得つつ、自分のブランディングと知名度向上に活用しているフリーのクリエイターは多い。生成AI絡みで大変な経験をしたEさんだからこそ、今後の生成AI時代を念頭に、多くの人に共感されるオリジナルコンテンツも制作・発信できるはずだ。

「具体的なものではないですけど、とにかく色々なものを失ってしまったので、そこから這い上がって成り上がっていきたいですね。それで私の作った記事やコンテンツを通じて、周りの人も元気づけていきたいです」

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Eさんの語り口にはどことなく、ハングリー精神に再び火がついたような気配があった。今後ますます性能を増していく生成AIに、人間の能力がどこまで追従できるかは分からない。だが、人と人との温かい繋がりや、そこから生まれるチャンス・アイデアには、決してAIには模倣できない価値があると信じ続けたいものである。

<取材・文/デヤブロウ>

【デヤブロウ】
東京都在住。2024年にフリーランスとして独立し、ライター業およびイラスト業で活動中。ライターとしては「Yahoo!ニュース」「macaroni」「All Aboutニュース」などの媒体で、東京都内の飲食店・美術館・博物館・イベント・ほか見所の紹介記事を執筆。プライベートでも都内歩きが趣味で、とりわけ週2~3回の銭湯&サウナ通いが心のオアシス。
好きなエリアは浅草~上野近辺、池袋周辺、中野~高円寺辺りなど。X(旧Twitter):@Dejavu_Raw
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