「脂は悪で、糖質は主食」。そんな私たちの常識こそ、生物学的にも人類学的にも大きな誤りだったーー。
そう提唱するのは、『なぜヒトは脂質を食べると痩せるのか』を上梓した金森重樹氏だ。たった2か月で90㎏から57㎏の減量に成功し、8年以上もキープし続ける氏のメソッドは「金森式」と呼ばれ、累計10万部を数えるベストセラーとなっている。
今回はそんな金森氏と、フランスでハーブについて学び、現在は宮古島を拠点に活動している薬草研究家の織田剛氏による対談が実現。前編では、旧石器時代から続く人類本来の身体の仕組みと、現代の食環境との間に生じているミスマッチについて話に花が咲いた。

アメリカも大幅に方針転換。「糖を捨て、脂を食べる食生活」が正...の画像はこちら >>
――近年、糖質の悪影響がクローズアップされ、糖質制限はダイエットの基本とされる風潮もあります。金森さんは単なる制限ではなく、徹底した「断糖」と「高脂質食」を勧めています。糖を断つだけでなく、脂質に注目する理由からお聞かせください。

金森 人類の長い歴史を振り返れば、答えはシンプルです。私たちは旧石器時代から、狩りをして肉を食べる「低糖質・高脂質」な食事で進化してきました。ところが、約1万年前に農耕が始まり、ここ数百年の間に砂糖が一気に広まった。それで食環境が糖質メインに一変してしまったわけです。

 ただ、人類700万年の歴史を24時間に例えると、今の食生活が始まったのは最後のほんの数秒の出来事。
大局的に見れば、私たちは今、あまりに急激な変化の中にいます。その無理がたたり、肥満や生活習慣病に苦しめられているのが現代人なんです。高血糖こそ、万病のもとなんですね。

織田 その通りです。僕も金森さんほどではありませんが、焼肉に行ってもライスは頼みません。健康への影響もさることながら、血糖値の乱れはパフォーマンスにもつながりますから。そして脂質の大切さも共感しかないのですが、金森さんは「断糖高脂質食」こそが人間本来のあり方だと一貫して述べられてますね。

■アメリカがひっくり返した「栄養の常識」

金森 糖質依存から抜け出し、脂質をエネルギーとする「ケトジェニック」な体に切り替える。これこそが生理学的に見たダイエットの最適解なんです。ヒトのエネルギー源は糖質ではなく、脂質にすべきなんですね。食にしろ、睡眠にしろ、旧石器時代の生活様式に近づけることが最短ルートだと僕は思っています。

織田 実は私のルーツは宮古島の医師家系で、祖母がよく伝統的な薬草茶を煎じていたんです。そんな環境で育ったからか、先住民の暮らしにこそ健康のヒントがあると感じていて。
金森さんほど理論を突き詰められてはいませんが、やはり人類が昔から続けてきた営みにこそ正解があるんじゃないかと思っています。

金森 仰る通り。沖縄といえばかつて世界有数の長寿地域でしたから、学ぶべきことはたくさんあるはずです。今は健康指標が全国最下位レベルまで落ちてしまいましたが……。

織田 沖縄の土地は稲作には向かず、かつては魚や動物の脂をしっかり摂ることで健康を保っていました。それが戦後から現在にかけて、アメリカ式のファーストフードが一気に入ってきたことで徐々に伝統食が食べられなくなり、バランスが完全に崩れてしまったんです。

金森 なるほど。世界的に見てもアメリカの影響力は本当に強くて、もとをたどれば1990年代、アメリカ農務省が「パンや米をしっかり食べて、油は控えよう」という「フードガイドピラミッド」を広めました。あそこから「脂は悪で、糖質は主食」という常識が、私たちの脳に刷り込まれてしまったわけです。

アメリカも大幅に方針転換。「糖を捨て、脂を食べる食生活」が正しい人類学的な理由
アメリカの保健省長官・ロバート・F・ケネディ・ジュニアが発表した新しい食の指針を示したvピラミッド図。良質な脂質とタンパク質を摂るべきとし、逆に炭水化物は少なくてよいと方針転換を打ち出し、話題となった。イラストはrealfood.govより
織田 私たちが疑いもしなかった健康の常識は、実は作られたものだったんですね。

金森 でもようやく、変化の波が来ています。今年、アメリカのケネディ保健福祉長官が「本物の食べ物を取り戻そう」と、ピラミッドを180度ひっくり返した食の指針を打ち出したんです。
結局、私たちは長い間、利権や偏った情報に踊らされていただけというのが、この問題の正体なんですよ。

■動物性脂肪が体にいい理由

――金森さんは著書『ガチ速“脂”ダイエット』でも書かれていたように、断糖高脂質食によって2か月で30キロもの減量に成功されました。織田さんは「ダイエット」という点ではいかがですか?

織田 実はフランスで薬草学を学んでいた頃、自然と15キロくらい痩せたんです。あちらの食事って肉がメインだし、チーズやバター、フォアグラなんかの動物性脂質をたくさん食べるんですよね。油の種類も豊富で、オリーブオイルなんて「これでもか!」ってくらい料理にかけます。絶対太ると思っていたのに、驚きました。

金森 フランスには「フレンチパラドックス」と呼ばれる面白い現象があるんですよ。彼らの一人当たりの肉の消費量は世界トップクラスですし、ワインの飲み方も半端じゃない。一般的には肉の食べすぎや深酒は体に悪いと思われがちですが、不思議なことにフランス人は、他の西欧諸国に比べて心臓病での死亡率が低く、健康なんです。1990年代にボルドー大学のセルジュ・ルノーが提唱し、アメリカのテレビ番組「60 Minutes」で紹介されたことで世界的に知られるようになりました。

織田 肉食や良質な脂を摂ることが大切なんでしょうね。ただ一方でフランスって、パンも有名で安いじゃないですか。私が現地で見てきた中でも、パン主体の生活をしている人ほど太っていた印象があります。


金森 日本でも、安い菓子パンやカップ麺を食べている人ほど肥満になったりしますからね。

――とはいえ、今の社会で糖質を避けるのって大変ですよね。お二人はどう向き合っているんですか?

金森 僕はもう、糖質は一切摂りません。醤油などの調味料に入っている微量な糖分すら徹底的にカットしています。これをかれこれ8年ほど続けていますね。

織田 それはすごいですね……(笑)。私はそこまで完璧じゃないですけど、仕事がある日はお米などの炭水化物は一切食べないようにしています。糖質を摂ると血糖値が上がり、頭に霧がかかったような「ブレインフォグ」が起きるから嫌なんですよ。眠くなるし、パフォーマンスが落ちる感じがして。

アメリカも大幅に方針転換。「糖を捨て、脂を食べる食生活」が正しい人類学的な理由
断糖高脂質に切り替え、90㎏から57㎏へわずか2か月で減量したという金森さん。8年間この食生活を続けており、リバウンドは皆無だという


■「MCTオイルを着火剤にしよう」

金森 「ブドウ糖を摂って脳を活性化させよう」なんてよく言いますけど、実はあれ間違いです。最新の研究で、脳は優先的に「ケトン体」を消費していることが判明しました。要するに脳のメインエネルギーは脂質であって、ブドウ糖はあくまで予備燃料だったんです。


織田 本当にそうですね。私も昼食を「くるみ」だけで済ますことがあります。頭に良いオメガ3の脂肪酸が大量に含まれています。腹持ちはいいですし、食べると驚くほど頭がスッキリしますよ。

アメリカも大幅に方針転換。「糖を捨て、脂を食べる食生活」が正しい人類学的な理由
宮古島に拠点を移し、ハーブファスティングの研究に余念がない織田氏。食(経口)のみならず、サウナでハーブの蒸気を吸うなどさまざまな取り入れ方あるという
――脂質についてですが、具体的にどんなものを選べばいいんでしょうか。

金森 脂質を燃やす体(ケトジェニック)に切り替えるなら、まずはMCTオイルが手っ取り早いですね。すぐにケトン体に変わるので、初心者には良い「着火剤」になります。初心者の方はここから入るとよいのでは。

織田 同感です。MCTオイルはいわば中鎖脂肪酸の濃縮液。すでにケト体質になっている人は、より自然な形で摂る方がいい。私も今は、ココナッツオイルなんかをメインにしています。


金森 おお、僕もまったく同じです。慣れてしまえば精製されたオイルに頼らなくても、食材そのものからエネルギーを得る方がいいですからね。ちなみに、僕の庭にはココナッツが植わっているので、最近はそれを果肉ごと食べています。

織田 庭にココナッツが……!?それは流石に予想外でした(笑)

金森重樹
東京大学法学部卒。作家、翻訳者、ビジネスプロデューサー。糖質ではなく脂質に着目した「断糖高脂質」により2か月で30㎏以上の減量に成功、そのメソッドを書いた「なぜヒトは脂質を食べると痩せるのか」を2026年2月に上梓。断糖高脂質の有用性はシリーズとして書籍化しており、「ガチ速〝脂〟ダイエット」シリーズは累計10万部を突破。「金森式」としてSNSで広く拡散され、大きな話題を呼んだ。「旧石器時代になるべく近い生活様式を現代で再現する」ことをモットーに、食事、サプリメント、歩行、睡眠などの研究にも余念がない。2026年現在、バヌアツ共和国で暮らす。

織田剛
1979年、沖縄宮古島生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒、一橋大学大学院言社会研究科博士課程在学時にパリ第八大学博士課程に留学。指導教官にフランスの伝統的薬草学を紹介され、フランスハーブの世界を知る。フランスで流行していたファスティングの実践で10キロ以上のダイエットに成功し、体調の劇的な改善を実感する。2015年、肺の遺伝性の難病が発症し、片肺を切除の宣告を受けるが、フランスのメディカル・ハーブの独自研究で肺の寛解に成功。フランスの伝統的な薬草学や修道院などでおこなわれていたファスティングの理論を体系化。現在はフランスの伝統的な薬草学を紹介し、薬草学の普及、ハーブ治療院をつくるために活動し、ハーブ・ファスティング(R)を開発。著書に『4日で若返る「毒出し」のトリセツ』(すばる舎)。登録者数3万2000人のYouTubeチャンネル「ハーブファスティング・未来薬草学 織田剛」 を運営。
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