しかし、ブームが喧伝されると同時に「そこまでして欲しいの?」と、シールをめぐる熱狂は、ときに冷ややかな目線を向けられる。SPA!編集部員の筆者(35歳の“平成女児”)も、それを実感する一人だ。仕事の合間に店を回り、再販情報を追い、ときには一日中歩き回る。冷静に考えればかなり非効率的な行動であるが、それでも実際に“シルパト”を続ける当事者として、その理由を振り返ってみたい。
冷ややかな目で見られるシールブーム
端から見れば、ブームに翻弄されているだけに見えるかもしれない。今や人気のキャラクターシールは、定価500円のところ1枚3000円程度で取引されるものもあり、転売ヤーが参戦。窃盗事件や、偽物を販売する者が逮捕される事件まで発生した。
一部のモラルなきシール蒐集家が開店時にダッシュしたり、店員に詰め寄る、店内で品出しを地蔵のように待機するといった迷惑行為の数々も、年明け以降に各地で散見されるようになった。
筆者が1月に山手線沿線のとある雑貨店で“シールが1枚買えるかもしれない”「抽選販売」に参加した際は、15分間の待機列形成の間に1000人近くが集まり大混戦。シール購入権利が当選したのは150人程度のようだった。
500円程度のシールのために人員を割き、クレームに対応し……。自身も列の一員となりながらも、対応する店員さんには頭が下がる思いしかない。
正直、そこまでしてほしいのか、と言われても仕方がない状況ではある。
でもやるんだよ! 理屈を超えたシール愛
筆者は、休日や仕事の合間にシールが売っている店をパトロールする「シルパト民」だ。特にサンリオが大好きで、韓国限定のサンリオのシールのために、日帰りでソウルの問屋にパトりに行くほど夢中なのだが、基本的には渋谷や新宿などのターミナル駅周辺の量販店や雑貨屋をウロウロして、ボンドロの出現があれば競歩で向かう。
「池袋の〇〇にディズニーのボンボンあり」「一人一種3枚までです」「もう枯れました」といった現場の情報がリアルタイムで共有されるのを参考にし、時には「和柄が出てます」などと投稿することもある。
日々、ランチや休憩を取る間も惜しんで、一店舗でも多く周り、ときたまシールに出会えるのがやりがいだ。
まず、現在のシール販売は「いつ・どこで」売られるかわからないことが多い。先述した対面での抽選販売や、告知の上での販売は長蛇の列になるため、大手量販店ではオンラインでの抽選販売、家電量販店や雑貨店ではゲリラ販売を行うケースが多い。
・そもそも入荷しているかわからない
・いつ品出しされるかわからない
・欲しい絵柄がある/残っているとは限らない
・抽選は外れる可能性がかなり高い
……と、常日頃慣れ親しんだオンラインショッピングとは真逆の、超非効率な購買体験だ。
それでもシルパトに繰り出すのはなぜか。
きっかけは、年明けにボンドロの「たまごっち」が再販されたことだった。すでに市場からは完売しており、フリマアプリで4枚1万円ほどに高騰していたたまごっち。懐かしの“まめっち”や“くちぱっち”のぷっくりしたシールは、たまごっち初期世代の筆者には「何がなんでもほしい」と思わせるパワーがあった。
絶望からの武者震い……たまごっちゲットまでの一部始終
店頭に並び始めると思しき日、筆者は9時前には渋谷に到着し、①大手量販店に並んだ。もちろんその時点では、シール自体の入荷は不明だ。②別の大手量販店で整理券配布があるとの情報を得て、列から抜ける。しかし、配布は終了していた。①の列に戻ることもできない。絶望。
③大手雑貨店でたまごっちが販売されていると聞きつけ、急いで向かうも、売り切れ。
もう今日は無理か……と諦めかけるも、普段はなかなか入荷しない、各地の雑貨店でたまごっちが続々と出現しているという。
もしやと思い急いで電車に乗り、数駅先のそこまで人が多くなさそうな店舗に向かうと、そこには輝くたまごっちシールがあったのだ。見つけた瞬間にサウナよりも発汗し、背中を伝う。レジに持っていく道中も、初めて見るシールに武者震いが止まらなかった。
こんなにも嬉しい買い物体験は久しぶりだった。
“おすそわけ”“交換”で幸せに浸れる
人にプレゼントして喜んでもらえることも、シルパトを後押ししている。上司から「娘がシールが手に入らないと嘆いている」と相談されれば、シール帳に貼り終えた余りのボンドロを数種類組み合わせて“おすそわけシート”を作る。親戚の子どもの誕生日には、100円ショップで売っているミニミニシール帳にボンドロをたくさん貼り、お気に入りのキャラだというクロミのキーホルダーをつけてプレゼントした。
彼女たちからは「ちょううれしいです」と大歓喜の手紙が届き、何度も読み返して嬉しい気持ちになった。
筆者自身も、シールの希少性はもとより、ぷっくり感と輝き、儚いラメ感が唯一無二のかわいさで、ハイクオリティなシールだと重々理解しているからこそ、苦労して手に入れてよかった、あげてよかったと心から思えるのだ。
苦労→脳汁→幸せ→また探すーー幸せの循環
シールを手に入れる興奮&脳汁の理由は下記の要素が絡み合っている。・関心度の高いIP(ノスタルジックなたまごっち、大好きなサンリオなど)
・希少性(フリマアプリでは、たまごっちの再販前は4枚1万円程度。ディズニーの人気キャラは1枚3000円ほどのものも。
・SNSでの接触(リールやストーリーでかわいく貼られたシール帳を見るとほしい欲が爆上がり。自身も投稿して自慢することも)
・定価の安さ(同世代が数十万円のエルメスやジュエリーをパトロールしているのに比べ、破格!)
・おすそわけや交換でのコミュニケーション(小学生女児にあげて心から喜んでくれるのが嬉しい)
筆者は今日も、「もしかしたら、あと一軒行けばあるかも」とあがく。
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