日本球界で偉大な実績を残し、外国人として初の名球会入りを果たしたアレックス・ラミレス。現在では日本国籍を取得しているが、ラミレスの出身国はベネズエラ。
もちろん今回のWBCにも出場する野球大国である。
※本記事は『WBC 2026 史上最強「侍ジャパン」再び パーフェクトデータブック』より抜粋したものです。

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日本の連覇はドミニカ戦次第

「私が若い頃は野球大国とまではいえなかったですけど、ここ10年ぐらいですかね? たくさんのベネズエラの選手が活発にメジャー入りするようになりました。いまや、どのチームにもベネズエラ国籍の選手が所属している。スター選手を輩出というか、もう『スーパースター』と呼ばれる存在の選手が何人も活躍していますし、近い将来、殿堂入りするであろう選手もいる。国内にも未来のスーパースター候補生がゴロゴロいますから、今のベネズエラのチームは普通にやれば、相当、強いチームなんですよ。普通にやれれば、ね……」 

 2026年1月3日、アメリカがベネズエラを爆撃し、ニコラス・マドゥロ大統領を拘束するというまさかの事態が発生。ラミレスに話を聞いた1月中旬の段階では出場メンバーがまったく決まっておらず、どれだけのメジャー選手を招集できるのかはまったく不透明な状況。いわゆるドリームチーム結成は絶望的ともいわれている。国際情勢の流れ次第では出場すら危ぶまれるのではとも囁かれ、とてもじゃないが「普通にやれる」環境ではなくなってしまった。

「ただ、普通にやれたとしても優勝争いは難しいかな。やっぱり同じPOOL Dにいるドミニカが強すぎるんですよ。私は直近のドミニカの試合も見ていますけど、正直、ドミニカはアメリカにすら負けることがまったく想像できないレベルなんですよ。
一番の優勝候補じゃないですかね。ただ戦力がすごいだけでなくて、選手たちも『WBCで優勝するんだ!』というパッションが非常に大きくなっているのが伝わってくる。おそらくドリームチームで乗り込んでくると思います。

 日本は準々決勝か準決勝でドミニカと当たることになるんですが、ここが連覇に向けての最大のハードルになると思いますね。ちょっと言いにくいですけど、日本はかなり苦戦を強いられるでしょう。逆にここでドミニカに勝つことができれば一気に日本の優勝の可能性が高まってくる。もう70%以上の確率で日本が世界一になるんじゃないかな。

 私は侍ジャパンの大ファンなので(笑)、連覇してくれることを心から願っていますが、すべてはドミニカ戦次第になってくるでしょう」

盤石な投手陣。注目するのは誰?

 厳しい見解を示すラミレスだが、侍ジャパンの実力の高さは認めている。

「もちろん前回のチャンピオンですからね。とくにピッチングスタッフは素晴らしい。メジャーで大活躍している山本由伸が出場するのは、もちろん大きいですけど、今回はベテランの菅野智之の存在もポイントですね。
投手陣のまとめ役になってくれるはずですから。それに前回大会に出場していた巨人の大勢にも注目したい。前回の出場で得た経験値を生かしてくれたら、面白い存在になると思います。日本のピッチャーはとにかくコントロールが素晴らしいし、投げるテンポもいい。クレバーな選手が揃っているだけでなく、ほとんどの投手が落ちる変化球を得意としている。これは外国人、とくにラテンアメリカ勢が苦手としている傾向なので、大量に失点することはそんなにないはず。

 大谷翔平は投げないですよね? ドジャースは投げさせたくないでしょ。シーズン前にリスクが大きすぎるよ(笑)。でも、今、名前を挙げたメンバーがいれば、大谷がいなくても十二分に戦えますよ。むしろ重要なのはキャッチャーですね。これだけのメンバーをしっかりとコントロールできるキャッチャーがいてくれたら、さらに投手陣は鉄壁になる。昨年、ケガをしてしまっているし、今回は出られるかどうかわからないけど、私は甲斐拓也のようなキャッチャーが適任だと思うけどね(甲斐は今回のWBCには不出場)」

ドミニカ戦勝利のカギはメンタリティーの“差”

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 投手陣がうまく機能して、失点が最小限で抑えられれば、あとはどれだけ得点を稼げるかが勝利へのカギとなる。ラミレスはポイントゲッターとして、今年、メジャーデビューで話題になっているあの主砲の存在を猛烈にプッシュする。


「今大会で最も注目すべき選手は村上宗隆ですよ。彼は私がベイスターズの監督をしている時からずっと見てきましたけれど、大谷を上回るレベルのポテンシャルを持っていると思う。今、大谷が毎年のようにすごい記録を残していて、もう日本人選手でこの記録を超える打者が出てこない、といわれていますけど、私は村上なら大谷の記録を塗り替えることができる、と確信しています。さすがに今年はメジャーデビューなので様子を見る必要がありますけど、メジャーの環境に慣れた3年後、4年後にはとてつもない成績を残すはず。その能力をどれだけ発揮できるかが、今回の侍ジャパンの大きなポイントでしょう。

 打者・大谷は世界中で最も恐れられている選手。その大谷をトップバッターに据えて、機動力のある牧秀吾を2番に配置。そこから鈴木誠也、村上、岡本和真、佐藤輝明と繋いでいけば、かなり強力な打線になるこれがラミちゃんの考える最強のオーダーね! いやぁ~、こんなに人材が豊富だと、井端サン、大変ね(笑)。ただ、井端監督が長い時間をかけて、じっくりとチームづくりをしていることは知っているし、井端監督なら大丈夫でしょう! 手腕が問われる特別な大会になることは間違いないですし、まだナショナルチームの監督としての試合数が少ないので、井端さんのカラーというものが見えにくいとは思うんですけど、それが今回の大会でしっかり見えるようになっていくと思います。

 正直、これだけスーパースターが勢揃いしているチームだと、いかに選手たちに気持ちよくプレーしてもらうことができるのかが大事になってくる。要はどれだけ選手とコミュニケーションが取れるか、ですよね。そういった能力も井端監督は長けていると思いますし、連覇をやり遂げてくれると信じています。
まぁ、監督の立場になって考えてみたら、これだけの選手を預かって、誰にもケガをさせないように上手に起用する、ということはとんでもないプレッシャーになりますけどね(苦笑)」

ラテン系と日本人の違いは…

 これほどのメンバーを擁しても、ドミニカの壁を打ち砕くのは至難の業、というのがラミレス氏の見立てだが、連覇のための秘策はないのだろうか?

「最近、日本の野球は変わった、とよくいわれますけど、私は根本的な部分は20年前と変わっていないと思っているんです。攻撃力だけでなく、守備やランニングにも優れていて、スモールベースボールもできる日本の緻密な野球は世界に通用するし、もし決勝でアメリカと当たっても、私には日本が大差をつけられて敗退する姿がまったく想像できないんですよ。ただ、相手がドミニカだと、うーん、なかなか厳しいね。

 でもね、今回は短期決戦じゃないですか? しかも移動距離もかなりあって、時差ボケとも戦わなくちゃいけない、かなりタフなトーナメントになる。正直な話、こういう状況になるとラテン系の選手は『疲れたから、やりたくない』とか『すべてはこの日程が悪い』とか、絶対に誰かのせいにして文句を言いだすんですよ(笑)。でも、日本の選手は絶対に不平不満を言わないじゃないですか? どんなに疲れていても『行け!』と言われたら。チームのためなら、と全力で戦い抜く。このメンタリティーは他の国ではまずないですからね。

 前回の大会もまさにそうでしたけど、データや数値には表れない部分での強みが日本にはあるから、こういう大会で結果を残しているんじゃないか、と私は思っています。今回もいい結果が出るといいですね!」

<取材・文/小島和宏>
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