家賃1万9000円という破格の激安シェアハウスに流れ着いた若者たち。なぜそこに住み、どのような貧困生活を送っているのか。
実際に住民に集まってもらい話を聞くと、「お金はほどほどでいい」という令和の新しい価値観を持った若者貧困の姿があった。

今回の座談会参加者



・青山 司さん(仮名・28歳)/漫画家
大学時代に就職活動を始めるも、コロナ禍と被り挫折。そんななか、かつて趣味でマンガを描いていたことを思い出し、クラウドソーシングで見つけたWEBマンガ制作の仕事をこなして生活するように

都内で“家賃1.9万円”の激安シェアハウスに住む20代男性の生活「無理して稼ごうとは思わない」同じカレーを1週間食べることも
青山 司さん(仮名・28歳)
・夏木 俊英さん(24歳)/芸人
芸人を目指し、熊本県から原付で3~4日かけて上京。Ubereatsで毎日2万円を稼ぎお笑い養成所の学費70万円を貯めて同期とコンビを結成、念願の芸人デビューを果たした

都内で“家賃1.9万円”の激安シェアハウスに住む20代男性の生活「無理して稼ごうとは思わない」同じカレーを1週間食べることも
夏木 俊英さん(24歳)
・野本 尊さん(22歳)/フリーター
高校卒業後、新潟県から上京。一度は伊豆の旅館で働くも、人間関係のトラブルから退職し、東京の激安シェアハウスへ流れ着く。ネットで小遣い稼ぎを行うことも

都内で“家賃1.9万円”の激安シェアハウスに住む20代男性の生活「無理して稼ごうとは思わない」同じカレーを1週間食べることも
野本 尊さん(22歳)

激安シェアハウスに住む理由は?

――なぜ激安シェアハウスに住むように?

青山 シェアハウスを検索できる専門サイトで、「家賃2万円以下」という条件で検索して唯一ヒットしたのがここだったんですよね。少し怪しいなとは思ったんですが、ほかに選択肢がなかったので入居しました。

夏木 僕は芸人になりたくて、5万円だけ握り締めて4年前に上京してきたんです。それで、何となく憧れがあった吉祥寺に住みたくて不動産屋に行ったのですが「敷金・礼金など含めて入居には45万円足りません」と。いきなりマイナス45万円と表示された電卓を見せられて門前払いされまして……。途方に暮れていたときに『東京で一番安い家』とグーグルで検索してここに辿り着きました。

野本 僕は閉鎖的な地元の新潟から出たくて上京しました。ただ、お金に困ってしまったので最安条件を検索してここを見つけました。

青山 みんな経緯も仕事もバラバラですよ。
自分は在宅でできるマンガの仕事で月9万円くらい稼いでます。最近は商品紹介や企業PRのマンガはなくなってきているので、ウェブの縦読みマンガのアシスタントをしています。以前、頑張りすぎて潰れちゃうことがあって、月10万円分までが自分の働けるライン。だから10万円を超えないように仕事量を調節しているんですよ(笑)。

夏木 僕はお金というより時間かな。芸人の収入はまだないので、メインはUberEatsで、出演できるお笑いライブは突然決まるので、時間の融通の効くこの仕事が一番いいんです。たまには先輩芸人から紹介されるバイトも単発であるんですが、ライブやアイドルのチェキ会の整理手伝いをして、最低時給あるかどうかの小さな臨時収入です。月収は8万円くらい。

野本 自分は青山さんに近いですね。今はUberEatsばかりで月15万円くらいありますが、フルタイムの仕事は人間関係で揉めて、続けられなくなって。以前は、ポイントを集めて現金化する「ポイ活」をメイン収入にしていたんですが、今はもう美味しい案件がなくて。一番旨みのあった楽天ポイントが渋くなってからは全然です。


夏木 コロナ禍はいろんな企業がポイントを大盤振る舞いしていたよね。その頃なんかは、ポイ活だけで生活できる良い時代だった。今は月に1万円くらいになる案件がたまにあるくらい。良い案件があれば、住民の中でも情報共有したりしています。

野本 ただ、UberEatsって繁忙期と閑散期があって。真冬や真夏は外に出たい人が減るから儲かるんですが、それ以外の時期は仕事が少ないんで普通の飲食店のバイトをしてました。これから春にかけては他のバイトを探す必要があるんで困りますね……。

無料のカットモデルでヘアカット、食費は月5000円

――家賃が安いとはいえ、その収入では物価高の日本では生活できなくないですか?

野本 生活は意外と大丈夫。髪はカットモデルの案件を探して無料で切ってもらい、衣類は古着でやりくりしてます。しんどいのは社会保険料と国民年金。低収入なので税金はほぼ取られないですが、国民年金は最低でも1万7150円。家賃とほぼ同額ですね。

夏木 僕はまだ芸歴1年目なので飲み会やご飯は先輩に奢ってもらったりしてとにかく節約生活ですね。
原付で交通費を浮かせて、ネタ合わせはビルの屋上や公園を使ってお金を切り詰めてます。都内の無料で居座れるスペースはもう大体知ってます。ただ、恥ずかしながら今は家賃を滞納しちゃってて……。

青山 私は別に困ってないです。奨学金の返済と食費に月1万5000円ずつ、家賃や共益費で月3万円でおよそ月6万円の出費ですが、通信費は楽天モバイルの3ギガプランなら月1000円ですし、娯楽は図書館でマンガを読んだりすればタダなのでサブスクにも入っていません。ちょっと前まで食費は月5000円に収めていましたし。ただ最近はコメの値上がりがきついかな。

夏木 青山さんの食費月5000円時代は本当にすごかった。一度作ったカレーを1週間くらい食べたり、申し訳程度しか肉の入っていない豚汁を作ったり。真似はできないから参考にはならなかったけど、適応できたもん勝ちだと思ったね。

野本 気付かされるものがありましたね。ほんの少しの豚肉でも肉の味ってちゃんと出るんだ、とか。
食に限らずですが、一度ここでの生活に慣れてしまうと、人間ってお金をかけなくても生きていけるんだって分かっちゃうんですよね。

夏木 臨時の出費はやっぱ痛いけど、こだわりあるところにはお金を出しちゃうんです。一度原付を盗まれて運良く戻ってきたんですが、エンジンが盗まれていて、そのリカバリで7万円飛びました。中古を買いなおしたほうが安いんですが、思い入れがあったんで。

野本 安いネカフェで2000円のモバイルバッテリーが3回盗まれたのは地味にキツいです。治安が悪いからやはりそうなる。

青山 自分は貯金する気がないので……出費が痛いって感覚はないかな。この間もリフレッシュのために、残高にあったお金を使って沖縄旅行に行きましたよ。

野本&夏木 うらやましい!

将来は不安だけど、無理して稼ごうとも思わない

都内で“家賃1.9万円”の激安シェアハウスに住む20代男性の生活「無理して稼ごうとは思わない」同じカレーを1週間食べることも
「貧困も慣れてしまえば苦じゃない」と語る3人
――貯金もできない今の生活に将来不安はないんですか?

野本 健康面が少し不安ですね。アレルギーや喘息があって、医療費がかかることもあります。特に国保が高いのがきつい。年金も1万7000円固定だし、それが一番重い。


青山 だから自分は、年金免除を使っている時期もありましたね。昔から、先のことはあまり考えないタイプ。今の生活が続けられればそれでいいかな。マンガで売れたい気持ちは少しはあるけど、自分を壊さないことが最優先です。高額の案件が来ても、どうせ作業量が多いだろうし。1P10万円とかの仕事ならさすがに考えますが、基本的に仕事を増やしたくないです。

夏木 僕はやっぱり芸人として食えるようになりたい。ただ、良くも悪くもここでの生活に慣れたおかげで焦りが減りましたね。収入ってなくても何とかなるなって。闇バイトで同世代が捕まってるニュースを見ると、リスクを侵してまで稼ごうとなんてしなくても生きていけるのになと思ってしまう。

野本 僕にはマンガや芸人のような軸がないので、せっかく東京に来たからには何かしたい気持ちはあります。まずは収入の幅を広げたいので、せどりを始めてみようかなと思います。


過度な欲を抱かず、最低限の衣食住さえあればそれでいいーー時代は、そんな生き方を豊かさの一つと見るか、貧しさと見るのか……。

取材・文/茂木響平 取材協力/グランドレーベン東武練馬

【茂木響平】
97年生のライター、イベンター。大学在学中に活動を初め、大学ネタ、就活ネタを中心に週刊誌などで執筆。新宿のBAR&イベントスペース「ミズサー」のオーナーでもある。Twitter:@mogilongsleeper
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