今年の春節は中国人観光客の減少もあって例年より静かだったが、代わって存在感を高めているのがインド人観光客だ。急増する海外旅行需要の一方で、文化や習慣の違いから各国で摩擦も起きているという。
タイで頻発するトラブルの実態とともに、急増する“新たな訪日客”とどう向き合うべきかを考える!

立ち小便に売春婦への値切り!喧嘩騒ぎは日常茶飯事だった

一部インド人観光客の“素行の悪さ”が各国で問題視されているワ...の画像はこちら >>
 インドでは今、空前の海外旅行ブームが起きているが、各国で一部インド人観光客の素行の悪さが問題視されている。なかでも最大の発火点になっているのはタイだ。2月頭にバンコクを訪れた日本人男性はこう語る。

「ゴーゴーバーが連なる通りで深夜、インド人の集団がリヤカーで菓子を売る行商の女性と喧嘩していたんです。すると、そのうちの1人が唾を吐きかけ、罵倒し始めました。直後、近隣のスタッフが集まり、殴り合いが始まったんです。インド人の集団が酔って勝手に売り物を持っていこうとしたみたいです」

 現地報道を見ても、インド人観光客による迷惑行為が相次ぎ社会問題化していた。

 きっかけとなったのは昨年1月の騒動。タイ有数のリゾート・パタヤビーチで、インド人観光客と見られる5、6人が立ち小便をしている映像がネットで拡散。その振る舞いに温厚なタイ国民も激怒し、インド人観光客への忌避感が決定的に高まったという。

 同地では昨年夏、インド人男性3人がホテルの自室に連れ帰ったセックスワーカーの女性1人と金額交渉でトラブルとなった後、警察に“救助要請”を行うなどの騒動を巻き起こしたことも大きく報じられた。彼らはバーで会った女性と1人あたり1万5000円の料金で話がついていたが、ホテルに着いた直後「胸が小さすぎる」などと難癖をつけ、値引きを要求していたという。

ニューハーフ集団がインド人を袋叩きに!

「夜の街でインド人とタイ人が揉めているのは、もはや日常の風景です」と話すのは、パタヤ在住2年の日本人Sさん(40代)だ。

「つい先日も、ゴーゴーバーの料金で揉めたインド人が、ニューハーフの集団に袋叩きにされているのを見たばかりです。
また、混雑している歓楽街で、インド人の集団がボリウッド映画のように踊り始め、白人から水をかけられているのも見たことがあります。昼間に会うインド人観光客は大人しくてフレンドリーな印象ですが、酒が入ると豹変する人が多いよう。タイでは夜の店に限らず、インド人お断りの夜のお店が少なくない」
 
 インド人観光客が問題視されているのはタイだけではない。1月には仏パリのモンマルトルで、インド人観光客グループが「マハーラーシュトラ万歳!」と自らの出身州名を大声で連呼する映像が拡散。フランス国民からも「国に帰ってからやれ」などの批判も噴出した。

 ほかにもマレーシアや韓国、ベトナムなどで、過度な値切り交渉や大声での会話、飲食店内でのマナー違反がたびたび報告されている。各国でのトラブル頻発は本国でも認識されているようだ。インド英字紙『ヒンドゥスタン・タイムズ』は最近、「インド人旅行者が嫌われる理由」(1月23日付)という記事を掲載。「列に並べ」「公共の場で足を投げ出すな」といった警告を自国民に発していた。

国際線CAが嘆くインド人のトイレ問題

一部インド人観光客の“素行の悪さ”が各国で問題視されているワケ。タイでは「インド人お断り」の張り紙、国際線CAもマナーに嘆き
Xで拡散している、タイ国内の飲食店で撮影されたという「インド人お断り」の張り紙
 では、日本ではどうか。日本政府観光局の推計によれば、25年のインド人訪日客数は前年比35.2%増の約31万5100人と過去最高を記録し、急増中。京都市内のホテルに勤める従業員はこう述べる。

「まだ富裕層が多く、チップもくれるので感じはいいですよ。
でも一度だけ、十数人の集団が午前中にチェックアウトしたあと、ロビーのソファを占拠し、7時間くらい居座っていたことがありました。他の宿泊客からクレームもあったので、注意すると『深夜便だから』と言うんです。レイトチェックアウトするお金を節約したかったんでしょうね……」

 日本国内では、今のところインド人による派手なトラブル報告はあまりない。しかし、“水際”ではすでに問題が起きているようだ。国際線に乗務する日本の航空会社のキャビンアテンダントはこう明かす。

「国際線で一番乗りたくないのがインド路線。まずとにかくトイレが汚くなる。用を足した後に水でお尻を洗う習慣のある人が多いので、トイレは常に水浸しになるんです。それ以外にも、ビジネスクラスへの勝手な席移動や執拗な座席交渉も多くトラブルが頻発するので、他路線よりも手間がかかる印象です」

お金を払う人には従順な社会

 旅行情報サイト「トラべルボイス」によると、インド人の海外旅行者数はコロナ禍以降、年間8%で増加しており、28年までに3900万人に達すると予想されている。彼らとうまく付き合うにはどうすればいいのか。インドで観光マーケティングも手掛けるBRANDit Japanのカントリーマネージャー・大瀧直文氏はこう話す。

「現在、インドから盛んに海外旅行に出掛けているのは、富裕層と年収300万円以上の上位中間層です。
その比率は1:2程度ですが、今後はインドの経済発展に伴って、後者の割合が増えていくものと見られます。旅慣れている前者がトラブルを起こすことはほぼありませんが、後者は海外旅行の経験がまだ浅い人が多く、自分の国の常識が海外でも通用すると思っている。インドはお金を払う人に対しては従順な社会で、例えばホテルのビュッフェでシェフを呼んで、そこにない料理を作らせるような要求をしても『イエッサー』で対応してもらえたりする。それを海外でもやってしまうので、結果としてトラブルとなってしまうこともあるのです」

 では、どのように「おもてなし」をするべきか。

「『とりあえず主張してみよう』というのが彼らのスタイルですが、相手と議論になったり、その結果、自分の主張が通らなかったりしても、あまり根に持たないところがインド人の良いところです。まずは彼らの求めていることを聞いて、意に沿えない理由を説明すれば、納得してくれることがほとんどです」(大瀧氏)

 7%台という高い経済成長率を維持し、日本との関係も良好なインド。「台湾有事発言」で訪日中国人が激減するなか、観光立国を進めるうえで、インド人観光客は今後ますます無視できない「お客様」になっていくだろう。それだけに、彼らとは腹を割った付き合いをしたいものだ。

大瀧直文氏
RANDit Japan・カントリーマネージャー。国内外の広告業界で20年の実績を持つ。5年間のインド駐在を経て同国における観光マーケティングに精通。JNTOデリー事務所や日系企業のメディアキャンペーン、クリエイティブ制作など多数プロデュース

(取材・文・撮影/SPA! インバウンド取材班)
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