離婚件数は減少傾向にある一方で、20年以上連れ添った夫婦の“熟年離婚”の割合は増加している。その先に広がるのが、50代・60代の婚活市場だ。

モラハラ事実婚から逃れた吉田ななみさん(仮名・58歳)は、結婚相談所での活動を経て、マッチングアプリへと主戦場を移した。登録2週間で200件、1ヶ月で300件の申し込み――。だが、そこで待っていたのは、強烈な個性をまとった男性たちとの出会いだった。

熟年婚活のリアルと、その中で彼女が見つけたものに迫る。

58歳女性が婚活を始めたら“1ヶ月で300件”の申込みが…デ...の画像はこちら >>

アプリに登録してから「2週間で200件…」

――結婚相談所を退会してマッチングアプリを始めたきっかけを教えてください。

吉田ななみ(以下、吉田):結婚相談所のイベントで知り合った女性が、アプリでも並行して活動していて、アドバイスしてくれたんです。「あなたは自分で動けるタイプだから、相談所よりアプリのほうが活動しやすいんじゃない?」と。

結婚相談所では10ヶ月ほど活動して、30人ほどの方とお会いしました。ただ、私が希望する年代の男性は、お子さんを望んでいるケースが多くて。ニーズがマッチしていないな、ということがわかったんです。

このまま続けても、投資している感じが否めないなと思って。それで、大手のマッチングアプリに切り替えました。

――マッチングアプリに登録されて、どんな反響がありましたか。


吉田:登録して2週間で200件、1ヶ月で300件のお申し込み(※いいね)が届きました。

最初は使い方もよくわからず、申し込み数だけがどんどん増えていく状態で。ただ、プロフィール写真に風景や食べ物を載せている方も意外と多いんですよね。ご本人の写真をきちんと載せている方に絞っていくと、分母は大きくても、実際に候補になる分子は限られていきました。

アプリを始めていま4ヶ月目に入ったところですが、1ヶ月に4~5人ほどとお会いしています。

初回デートの内容に衝撃を受けた

――結婚相談所との出会いと比べて、マッチングアプリはいかがですか。

吉田:結婚相談所では、お見合いから始まって、仮交際、本交際といった段階がきちんと設定されていました。でも、マッチングアプリにはそうしたステップがなく、人によって温度感がまったく違うんです。

初対面の日に、いきなり「今日を記念日にして、来年一緒にお祝いしましょうね」と言った方もいました。

マッチングしてもメッセージすら来ない方もいれば、逆にマッチングした瞬間に「今から会えますか」と送ってくる方もいる。本当に、のめり込み具合も人それぞれですね。

衝撃的だったのは、初回のデートで映画やドライブに誘われたことです。初対面の男性と暗い場所や密室は避けたいなと思って、場所を変えてもらいましたが。
そういう感覚がないのかな、と少し驚きました。

“サプライズ”の行き先は、まさかの…

――初回のデート場所から、それぞれの個性が見えてしまうと。

吉田:そうですね。初回のデートで、フルコースのディナーをご馳走してくださったケースもありました。

一方で、逆の意味で驚いたこともあります。いつも「何が食べたいですか」と聞いてくれて、私が場所を決めていた方がいたんです。その方との3回目のデートで、「今回の場所はお任せしたいです」と伝えたら、「いやあ、プレッシャーだな。じゃあサプライズな場所で」と言われて。連れて行かれたのが、フードコートでした。とんだサプライズだなと……。

――その他、印象的なエピソードはありますか。

吉田:66歳の男性とメッセージのやり取りをしていたのですが、とにかくご自分の考えを押し付けてくる方がいました。

たとえば、私が「今日は会社の同僚と食事会に行くので、連絡が遅くなります」と送ると、「出かけるんですか。
寒いですよ。出かけて帰ってきたら疲れちゃいますよ。具合が悪くなりますよ」と返信がくる。さらに「会食って疲れちゃいますよね」といった具合で。

いつもご自身の考えが正しいという前提で、「あなたもこうですよね」と圧をかけてくるような文章なんです。結局、その方とは会う前に吐き気がしてきて。ああ、これはもう体が拒否しているんだな、と思ってやめました。

“いい人”だったのに…生理的NGのワケ

――「この人こそ!」と思えるような出会いはありましたか。

吉田:50代の男性で、とても気が合って、話しやすくて、「いい人だな」と思える方がいました。ただ、その方の口臭がすごくて……。

1回目にお会いしたときは向かい合って話していたので、そこまで気にならなかったんです。待ち合わせで声をかけられた瞬間に、少し違和感があったくらいでした。

でも、2回目にお会いしたとき、隣同士でプラネタリウムを見たんです。
すると、だんだん異臭が漂ってきて。上映が終わる頃には頭痛がしてきて、「このニオイには耐えられないな」と思ってしまいました。口臭さえなければ、もう今ごろ婚活を卒業できていたかもしれないのに……。とても残念でした。

――婚活を続ける中で、学んだことや工夫していることはありますか。

吉田:結婚相談所での学びは大きかったですね。セミナーで、「男性は視覚的な情報で相手を選ぶ傾向があるけど、女性は相手の声に心地よさを感じやすい」と教わったんです。確かにそうだな、と。なので、アプリでマッチングしてある程度やり取りをした後、実際に会う前に通話して相手の声を確認するようにしています。

それから、プロフィールに音声をつけられる機能もありますよね。気になる方が音声を公開している場合は、お声を聞いてみます。私にとっては大切な判断材料のひとつになっています。


婚活は水物。相性とタイミングを大切に

――最近、熟年離婚が増加傾向ですが、離婚後に再度パートナー探しを考えている方に、伝えたいことはありますか。

吉田:実際にお会いする男性の中にも、離婚後に新しいパートナーを探している方は多いです。お話をしていると、「前妻とはうまくいかなかったけど、別の人だったらわかり合えるんじゃないか」という希望を持っていらっしゃるんだろうな、と感じることがあります。

夫婦仲は決して悪くなかったけれど、お子さんがどちらかの親と関わりたくなかったとか、実家との同居がきっかけで関係がこじれたとか、本当に事情はさまざまです。性格や相性もありますよね。他の人にとっては耐えられなかったことでも、自分にとっては平気なことかもしれません。

それに、タイミングも大きいと思います。婚活は本当に水物で、同じ人がずっと待っているわけではありません。時期を逃せば、その人はもう別の方と出会っているかもしれない。でも、この歳になっても、仲良くなれる人がいるんだなっていうのは、不思議で、どこか希望でもあります。

マッチングアプリには、必ずしも結婚を望んでいる人ばかりではないので、ニーズを見極めることは大事だと思っています。
私は将来を共にできるパートナーを探しているので、これからも希望を持って活動を続けていきたいですね。

<取材・文/秋山志緒>

【秋山志緒】
大阪府出身。外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle
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