笑顔でそう言い切る時東ぁみさんの顔に、迷いはなかった。
2005年のデビュー以来、メガネっ娘アイドルとして一世を風靡した彼女の現在地は、すっかり「防災ガチ勢」へとシフトしていた。
ちなみに、地域の防災活動をリードする民間資格「防災士」を取得したのは2007年、アイドル全盛期のど真ん中だ。
今年は東日本大震災から15年の節目。「笑顔で学んでほしい」という言葉の裏には、重い現実と「どこまで伝えるか」という葛藤があった。
「話のネタ」が「使命」に変わった日
――アイドル活動の全盛期に、なぜ防災士の資格を取ろうと思ったんですか?時東ぁみさん(以下、時東):念願のアイドルになれたのはよかったんですが、代わりにもうひとつの夢だった、体の不自由な方やお年寄りにスポーツを教えるような仕事を諦めなければならなくなったんです。
落ち込む私を見て、当時のプロデューサーのつんく♂さんが「人助けがしたいなら、こんな資格もあるぞ」と紹介してくれたのが防災士でした。
――取得した当時、防災士という資格は世間にほとんど知られていませんでしたよね?
時東:そうなんです。だから、当時は「やった!番組でのトークネタが増えた!」くらいの感覚でした。それに、「家族が守れればいいや」くらいの意識でいたんで、自分から積極的に防災について話すことはほぼありませんでした。
――その意識が変わったきっかけは何だったんですか?
時東: 2011年の東日本大震災です。家族や周りの人たちの間だけで防災知識を共有しているのはもったいないというか、もっと発信をすれば、ファンの方はもちろん、それ以上に多くの人を助けられるかもしれないと思ったんです。
リアルな悲劇を、そのまま伝えない理由
――いろいろな防災活動をされていますが、被災者の声を直接聞く機会はありますか?時東:はい。プライベートよりもメディアでお話しできる方から聞くことがほとんどですね。特に多いのはラジオで、被災経験のある方などをゲストにお呼びすると、自然と当時のお話になるんです。
――被災者の方から話を聞く時に、気をつけていることはありますか?
時東:無理に言葉を引き出そうとしないことです。話している途中で言葉が詰まってしまったら、そこで無理に続けてもらう必要はないですし、フラッシュバックで辛くなってしまうくらいなら、その話はしなくていいと思っています。
過去に何があったかよりも、今、何を頑張っているか、今どうなっているかの方が大事だと思っているので。
――実際に色んなお話を聞いてきて、印象に残っているエピソードはありますか?
時東:忘れられないのは、ラジオに出演してくださったある防災関係の方のお話です。
その方は、ご自身が実際に見たり、聞いたりしたお話をいくつもしてくださったんですが、津波が迫ったある幼稚園で、先生方が園児を乗せた体操マットを必死に持ち上げて助けようとしていたそうです。でも、先生方の足元には、マットに乗れなかった子どもたちが……。
この話はラジオには乗らず、曲の途中で話してくださったんですが、聞きながら号泣してしまって。ラジオ的には放送事故でした(苦笑)。
あと、津波が来る直前に「家の様子を見てくる」と言って自宅に戻った方が、そのまま戻ってこなかったという話も聞きました。残されたご家族は、「あの時に止めていたら」と深く後悔されたそうです。それ以降、講演では「津波警報が出たら、解除されるまで絶対に家に戻らないでください」と必ず伝えるようにしています。
被災体験を「リアルに伝えない」真意とは
時東:リアルに伝えることは、いくらでもできるんです。数字を並べたり、被災者の声をそのまま届けることも。
でも、そうすると「怖いから聞きたくない」「考えたくない」となってしまう方もいるんです。
そうならないために、できるだけ直接的な言葉や表現は避けるようにしています。
――子どもに防災を伝えるのって、難しくないですか?
時東:めちゃくちゃ難しいです。なので、親子向けのイベントは楽しく防災を学べるようにクイズをしたり、防災ソングをみんなで歌ったりします。
大人向けの企業講演だったら、「お母さんが亡くなった場合、お父さんは子どもの好きな食べ物やアレルギー、通学路を把握していますか?」といった、直接的ではないけれどリアルな話をします。
伝える相手によって内容は変わりますが、共通しているのは「笑顔で伝える」「オブラートに包む」というスタンスです。それは逃げじゃなくて、より多くの人に届けるための私なりの戦略なんです
防災は「ボランティア」じゃない
時東:一番の場は、オンラインサロン仲間と取り組んでいる「時東ぁみのみんなでBOUSAIキャラバン(以下、BOUSAIキャラバン)」という防災イベントです。昨年までで10回開催することができました。
コロナ禍に立ち上げたオンラインサロンの仲間たちと企画していて、私が主導でステージを企画、スポンサー集め、運営を行っています。
――企画からスポンサー集めまで全部ご自身で……。なぜそこまで自分で手がけるんですか?
時東:なぜか「防災=ボランティア」というイメージがあって、お金が発生しにくい世界なんです。それに、災害が起きた時だけ防災意識が上がって、その後また低迷していくという波があって、防災関連のビジネスはどこも苦労しているんです。
命の守り方を伝えることに対価が発生しないのはおかしいと思いますし、うまくビジネスとして続けることが、防災を続けることだと思っているので。
――『時東ぁみ』だからこそできる企画、というのはどんなものですか?
時東:アイドル活動で培ったイベントプロデュース関連のノウハウもありますが、会場の特徴やクライアントの要望に合わせて企画を組むので、毎回オーダーメイドで全然違う企画になります。
例えば、災害時の避難場所に認定されている施設と組んで開催した時は、劇団員を仕込んだリアル避難訓練をやりました。お客さんには避難してきたという設定で参加してもらって、劇団員が起こしたハプニングをみんなで解決していくという内容です。
時東:不思議なんですが、防災だけはアイデアがポンポン浮かんでくるんですよ。私も一応子育てしている母なのでご飯を作っているけど、料理のレパートリーは一切浮かばないのに(笑)。
それに防災ガチ勢なので、マネージャーから「イベントの相談が来てるんですが」といわれたら、すぐに「いいですよ。やりましょ、やりましょ」って言っちゃうんですよ(笑)。
3月も「BOUSAIキャラバン」を2か所でやりますし、今年の夏までスケジュールが決まっています。
何本も同時進行しているので、いつ、どこでやるイベントの話をしているのかが、たまにわからなくなることもあります(苦笑)。
――スケジュールがそんなに詰まっているとは驚きです!昨年はどんなイベントをやったんですか?
時東:年末に「防災×介護」に挑戦したのですが、これがけっこう大変でしたね。自力で動けない方や認知症の方がいる現場では、ほかの防災イベントで当たり前に行っている避難訓練がうまくできなかったんです……。
でも、こういった災害弱者と呼ばれる方々にこそ届けなければいけないので、今年はこの分野を深掘りしていきたいと思っています。
風化は止められない。でも教訓にはできる
時東:防災そのものへの意識は、確実に上がっていると思います。講演中にメモを取る方や、質問コーナーで手を挙げる方が増えました。
ただ、個々の災害への関心は風化しているのではないでしょうか。能登半島地震ですら、2年が経った今、日常の話題にはなりにくいですよね。それが現実だと思います。
――風化するのは仕方のないことだと?
時東:悲しいですが、止められないと思います。被災した地域に家族や知人がいない限り、毎日意識し続けることは難しいですよね。
ただ、忘れることと教訓にしないことは別の話で、「あの災害では火災が多かった」「津波の被害がひどかった」という記憶を、自分の住む地域や生活環境と重ねて考えてもらえれば、それで十分だと思っています。
――では、この15年で防災意識が高まった今だからこそ、やっておいてほしいことはありますか?
時東:この15年の間に防災グッズを買ったり、ハザードマップを確認したりと、一度は備えをした方も多いと思います。
といっても、身構える必要はなくて、今日持っているバッグの中を見て、充電器が入っていれば、それも防災になっています。ウェットティッシュが入っていれば、それも立派な備えです。そういう身近なところから、自分なりの防災を確認してもらえればうれしいですね。
<取材・文/安倍川モチ子 写真/本人提供>
【安倍川モチ子】
東京在住のフリーライター。 お笑い、歴史、グルメ、美容・健康など、専門を作らずに興味の惹かれるまま幅広いジャンルで活動中。X(旧Twitter):@mochico_abekawa
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