夫に対する不満を17年も前から溜め込んできた
「遅くとも10年で離婚します」伊藤啓子さん(仮名・52歳)はそう決意を口にしたうえで、資産運用、断捨離、美容ケアに励んでいることを熱弁し始めた。21年間連れ添う夫(54歳)は大手企業の管理職で年収1500万円。自宅で習字教室を開く啓子さんの年収は約300万円だ。都内の戸建て住宅で暮らし、一人息子は名門私立高校に通う。一見すると絵に描いたような幸せな家庭だが、夫に対する不満を17年も前から溜め込んできた。
夫は子供の夜泣きなど知らん顔。育児も家事もすべてワンオペだった。
夫婦の会話は家にいてもLINEの中だけ
子供が1歳になる頃に何度か“夫婦の営み”があったが、啓子さんは納得がいかなかった。「あなたが子育ても家事も一切しないのに、私が眠る時間を削って『する』なんてムリ」
そう伝えると、夫は不満を態度で示すようになった。
啓子さんが電気を消し忘れると、わざとらしく「またか」と大きなため息を漏らす。夕食の品数が少ないと「またか」。子供が泣いても「またか」。啓子さんは夫の声を聞くことも嫌になり、常に耳栓をするようになった。
離婚願望が“収入の壁”を突破した一言
「一緒に暮らすのは私の人生にとってムダでしかない」
啓子さんは心酔する故・細木数子の「六星占術」を頼りに、離婚計画を立て始めた。この先、特に運気が上がるのは58歳と62歳の年。62歳の年には、子供が社会人になる。第二の人生を歩む好機と考え、離婚のリミットに定めた。
離婚に近づくのが楽しみで仕方ない
貯金と収入を投資信託につぎ込むと、2年で資産は約2倍の3500万円に増えた。目標は1億円だが、6000万円になったら離婚に踏み切る。いつでも出ていけるよう、洋服や本はメルカリで断捨離している。“夫の次”も考える啓子さんは美容意識が高い。皮膚科や美容外科に通っては美肌ケアに力を注いでいる。「今では年を取り、離婚に近づくのが楽しみで仕方ない」
私が離婚したくてしょうがない女性たちを取材して新書『夫に死んでほしい妻たち』を書き上げてから10年、妻たちはよりたくましくなった。離婚のリミットを設定して綿密な計画を立てる女性が増えた。
一方で、妻たちが熟年離婚を誓う原因は変わらない。夫が家事や育児をしない、イベントを大切にしない、話をしない――モラハラが積もり積もって妻を離婚へと駆り立てる。離婚後の老後不安は、計画性で乗り越える。とっくに妻たちは夫婦生活を諦めているのだ。それに気づかない男性がいかに多いか……。
【ジャーナリスト 小林美希氏】
週刊エコノミストを経て’07年にフリーに。雇用、育児などを取材。『夫に死んでほしい妻たち』『年収443万円』『ルポ イバラキ』など著書多数
取材・文/週刊SPA!編集部
―[夫は見てはいけない 妻たちの[熟年離婚]計画]―
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