作家の乙武洋匡氏は「教員不足の背景には、長時間労働と待遇のアンバランスがある」と指摘する(以下、乙武氏による寄稿)。
「でもしか教師」が蘇る危機
その昔、「でもしか教師」という言葉があった。教員不足により、「教師にでもなるか」「教師にしかなれない」といった不純な動機で教師を目指す人を揶揄するような言葉として使われていた。いつしか死語となった言葉が、蘇りかねない深刻な状況に陥っている。’25(’24年度実施)年度の教員採用試験の倍率は、過去最低の2.9倍。ついに3倍を切ってしまった。さらに深刻なのは小学校の採用倍率で、こちらも過去最低の2倍を記録している。「教育は国家の礎」とも言われるが、そんな礎を現場で支える人材が圧倒的に不足している。なぜ、若者は教師を目指さなくなったのか。大きくは2つある。まず初めに挙げられるのが、過酷な長時間労働だ。
群馬県高崎市は、共働き世帯を支援する施策として、朝7時に校門を開門する方針を打ち出した。だが、教員側は「負担増につながる」と猛反発している。「子どものために」という美辞麗句を用いればいくらでもやれることは見つけられるが、それに伴う教師側の負担について語られることは、ほとんどない。
限界に達した「やりがい搾取」
本来ならば、これだけ「やるべき内容」が増えているなら、「減らす内容」も同時に考えていかなければ道理が通らない。しかし、教育現場に対しては「あれもやるべき」「これもやるべき」という声は上がるものの、「これはやめていい」という提言がなされることはまずないと言っていい。膨れ上がる一方の業務に、教師は疲弊しきっている。2つ目は、それに見合う報酬が支払われていない点にある。給特法という法律によって、公立校に勤務する教師には残業代が支払われない仕組みになっており、「定額働かせ放題」といった批判もされている。昨年にはこの問題が政治的に注目を浴びたが、“定額”部分のペースアップは図られたものの、結局「定額働かせ放題」という仕組みにメスが入れられることはなかった。
この状況下で「今すべきこと」は誰の目から見ても明らかだ。
【乙武洋匡】
1976年、東京都生まれ。大学在学中に執筆した『五体不満足』が600万部を超すベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。その後、小学校教諭、東京都教育委員などを歴任。ニュース番組でMCを務めるなど、日本のダイバーシティ分野におけるオピニオンリーダーとして活動している
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