ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)連覇を狙う侍ジャパンは、無敗のまま1次ラウンドを突破することになりそうだ。
 8日のオーストラリア戦を前に、すでに決勝トーナメント進出が決まっていた侍ジャパン。
3連勝を飾ったことで、プールCの1位通過も確定した。

1位通過も…内容には課題が残った侍ジャパン

 これで10日夜に行われるチェコ戦を残すのみとなった侍ジャパンだが、その先には“いばらの道”が待っているといわざるを得ない。
 ここまでの3試合を改めて振り返っておくと、初戦の台湾戦は、序盤から打線が爆発し、2回に一挙10点を挙げる猛攻。5人が登板した投手陣も盤石で、台湾打線をわずか1安打に抑え込み、13-0(7回コールド)と、これ以上ないスタートを切った。

 ところが、続く韓国戦とオーストラリア戦は相手に先制点を許し、主導権を握られる厳しい展開が待っていた。特に世界ランキング11位の“格下”オーストラリアとは緊迫する投手戦から、6回に先制され、ビハインドのまま試合終盤に突入する予想外の苦戦を強いられた。試合前、すでに決勝トーナメント進出が決まっていたことで、チーム内にちょっとした油断もあったかもしれない。

 絶対に負けられない韓国戦にしても、打撃戦を制したとはいえ、安打数は7-9で相手が上回った。“一発攻勢”がライバルにとどめを刺したが、ある意味で侍ジャパンらしくない戦いだったといえるだろう。

メジャー組頼みの打線、NPB組の不振が浮き彫りに

 3試合を通じて、目立っているのは、メジャー組の活躍だ。打率.556、2本塁打、6打点をマークしている大谷翔平(ドジャース)は言わずもがな、吉田正尚(レッドソックス)と鈴木誠也(カブス)のバットが振れている。メジャートリオはチームすべての6本塁打と、チームの25打点のうち17打点を挙げている。

 逆にいえば、昨季まで国内でプレーしていたNPB組はサッパリ。好調と呼べる打者は、大谷超えの出塁率をマークしている源田壮亮(西武)くらいだろう。


 また、侍ジャパンの真骨頂でもある“つなぐ野球”ができたのは台湾戦くらいで、直近2試合の得点圏打率は.231(13打数3安打)と、効果的な1本がなかなか出なかった。

 特にメジャートリオをつなぐ役割が期待された近藤健介(ソフトバンク)の不振は今後に向けて大きな懸念事項だ。決勝トーナメントになれば、データも豊富にそろっているメジャートリオは徹底的に弱点を突かれることになる。そのため、データも少なく、相手投手にとって未知となるNPB組の打者の奮起は必要不可欠となるはずだ。

 また、渡米して行われる決勝トーナメント(準々決勝以降)は一発勝負となるだけに、ちょっとした油断やミスが命取りになり得る。指揮を執る井端弘和監督には、より緻密でスピーディーな采配が求められることになるだろう。

井端監督の采配に疑問の声も

 そして、その井端采配に疑問を抱くファンも少なくない。

 現役時代は三拍子そろった内野手として活躍し、選手としてWBCにも出場経験のある井端監督。しかし、NPBでは監督歴がなく、経験値の浅さには不安の声も根強い。

 今大会も、井端監督の“動きの鈍さ”がところどころで露呈しているのが現状だ。

 たとえば、オーストラリア戦の4回裏、2死満塁の場面で大谷が打席に立ったが、二塁走者の牧秀悟(DeNA)がまさかの牽制死。井端監督はチャレンジを要求したものの、申告が遅かったため認められなかった。

 改めて当該シーンを見ると、チャレンジの要求が決定的に遅かったわけではないが、ルールはルールといったところだろう。
今後に向けていい勉強になったと考えるしかない。

 また、1点を先制された直後の6回裏に2死一二塁で9番の若月健矢に打順が回ったが、井端監督はここで代打を送らず。ベンチには控え捕手が2人いるにもかかわらず、勝負手を繰り出さなかったことにSNSなどでは疑義を唱える声も多かった。

 井端監督とすれば、失点につながるエラー(悪送球)を犯した若月にリベンジのチャンスを与えたいという考えもあっただろう。しかし、短期決戦ではそんな“温情采配”が得てして仇となって帰ってくるものだ。

 結果的に吉田に起死回生の逆転弾が生まれ、8回裏には若月の代打、佐藤輝明(阪神)がタイムリーを放ったことで命拾いした格好となった。それでも、後手後手になりがちな井端監督の采配はまだまだ改善の余地がある。

チェコ戦で問われる井端監督の判断力

 そして1次ラウンド最後のチェコ戦に向けて問われるのが、井端監督の判断力だ。

 12打数無安打と大スランプに陥っている近藤以外にも、村上宗隆(ホワイトソックス)と岡本和真(ブルージェイズ)は、2人合わせて20打数3安打と本調子には程遠い状態。不振の選手に代わって森下翔太(阪神)、佐藤あたりのサブメンバーを先発させ、出場機会を与えるのも一つの手ではないか。

 メンバーで唯一まだ出場がない小園海斗(広島)を含めて、短期決戦で非常に重要となる選手の調子の見極めをチェコ戦でしっかり行っておくべきだろう。1位通過が確定した今、どの選手がスタメンに名を連ねるかで井端監督の考えもわかるはずだ。


 これまでWBCで胴上げされた3人の監督(王貞治、原辰徳、栗山英樹)は、NPB監督としてチームを日本一に導いた経験を有していた。決戦の地、マイアミで井端監督が宙を舞えるかどうか、それは自身の手腕にかかっているといっても過言ではない。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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