ジャーナリストの石戸諭氏は、今回の騒動が政権周辺の“応援団”の軽率さを浮き彫りにしたと見る。「真に恐れるべきは有能な敵ではなく、無能な味方である」という格言を想起させた(以下、石戸氏の寄稿)。
高市応援団が招いた「SANAE TOKEN」騒動
「真に恐れるべきは有能な敵ではなく、無能な味方である」という格言を想起させた。無能な、は大仰かもしれないが「軽率すぎる応援団」ならば許されるだろう。話題の「SANAE TOKEN(サナエトークン)」騒動である。発信源は格闘技イベント「ブレイキングダウン」でおなじみの起業家・溝口勇児氏だった。自身が立ち上げたYouTube番組「NoBorder」で、高市早苗首相の名前を冠した仮想通貨をつくったと2月25日に発表した。
その話題性からサナエトークンの価格は高騰したが、高市首相は早々にXで「本件について我々が何らかの承認を与えさせて頂いたこともございません」と否定した。即座に金融庁が関連業者への調査に乗り出すと報道されたことで、瞬く間に急落に転じた。
問われる“高市ブレーン”の真偽
事の詳細は続報を待つとして、さしあたり指摘しなければいけないのは高市応援団の脇の甘さだ。彼女は老獪な年配政治家らが取り仕切る永田町にあって、アウトサイダー的な位置づけだった。藤井氏を筆頭に、SNSなどで盛り上げてくれる応援団の存在が必要だったことまではわかる。しかし、自身の名前を使って名を上げようとか、何かを売り出そうとする動きは「首相」になれば比にならないほどに増える。根拠は怪しくとも「あの政策の発案者は自分」とアピールを始める人々も同様だ。ここへの警戒心が薄かったことは否めないだろう。
それはメディアにも返ってくる。高市政権は政策の方向性もブレーンもわかりやすい政権だ。経済政策に関しては、日本成長戦略会議や経済財政諮問会議に名を連ねるエコノミストの名前を見つけて、発信を追えば骨格が見えてくる。本来、メディアが重視しなければならないのは、こうした人事に裏打ちされた「本物のブレーン」の発信のほうだ。
あちこちに登場する “高市ブレーン”が本物、あるいは有能な応援団か、軽率な発言者かを見極めないといけない。
「勉強させていただいている」は政治家一流の社交辞令にすぎない。
【石戸 諭】
ノンフィクションライター。’84年生まれ。大学卒業後、毎日新聞社に入社。その後、BuzzFeed Japanに移籍し、’18年にフリーに。’20年に編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞、’21年にPEPジャーナリズム大賞を受賞。近著に『「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(新潮新書)
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