「恋人と長続きしない」「友人関係でトラブルが多い」――。恋愛や人間関係で同じパターンを繰り返してしまう人は少なくないが、その背景のひとつに、幼少期の親子関係に端を発する「アタッチメント」理論があるという。
現代の人間関係を読み解く“対人関係のテンプレート”を精神科医に聞いた。


人間関係を拗らせる人たちに共通する過去とは?

「恋愛が毎回こじれる人」に共通している過去とは?精神科医が解...の画像はこちら >>
 恋人関係、友人関係など、相手は違うはずなのに、気づけば似たような関係のトラブルを繰り返している。そんな“人間関係のクセ”が、心理学では「アタッチメント・スタイル」としてが知られている。その分類によって、人が親密な関係のなかでどのような行動を取りやすいのか、また関係が安定しやすいのか、あるいは拗れやすいのかといった傾向が見えてくるという。

「アタッチメント・スタイルとは、その人が近しい人物、多くは恋人や夫婦間でどのような関係性を築くのかを分類したものです。例えば、親密な関係を避け1人でいることを好む『回避型』、反対に相手と距離を感じると不安になる『とらわれ型』、人と安定的な関係を築くことができる『安定型』、さらに過去のトラウマの影響で感情が爆発する『未解決型』があります。『未解決型』だけは他のスタイルに乗っかる型で、過去のトラウマの影響を受けた言動がみられないときは、安定型、とらわれ型、回避型のいずれかの特徴を示すことが知られています」

 そう解説するのは、精神科医の生野信弘氏だ。上記4つの型があるように、人間関係の築き方に違いが生じるのはなぜなのか。生野氏は「幼少期の養育者との関係がひとつのポイント」だと続ける。

「自分は他者にとってどのような存在なのか、他者は自分に対してどう応答してくれるのか。こうした自己と他者への理解を、多くは幼少期に養育者との関係のなかで学びます。例えば、幼少期に子供のさまざまなSOSに対して、親が非応答的な対応を続けていると、子供は自分の心を守るために『他者に期待しても無駄だ』と学習し、『回避型』へと繋がるケースもあります。幼少期の親との関係が、成人後に親しい人との間で“再演”するのです。
それらの特徴を分類したのがアタッチメント・スタイルなのです」

不倫や過度な推し活にもアタッチメントの影響が

「恋愛が毎回こじれる人」に共通している過去とは?精神科医が解説する“親との関係”
付き合った男性に過剰に尽くしてしまうという稲田さん。「でも最終的には相手が離れていっちゃんうんですよね」
 なかでも、目立った言動として現れやすいのが「とらわれ型」だ。関東近郊在住の稲田愛理さん(仮名・30歳)は恋愛関係で悩むひとり。深田恭子似の愛らしいルックスで昔からモテてきたが「いざ付き合うと関係が拗れてしまう」と打ち明ける。

「今は4つ上の職場の上司と付き合っているんですけど、彼は既婚者。不倫はいけないとわかっていても、私が仕事で失敗した時に慰めてくれてつい惹かれてしまいました。ただ、相手の一挙手一投足に翻弄されている自分がいるんです。先日は私の自宅で一緒に過ごしたのですが、彼が私の手料理を半分残して夕方には帰ってしまったことがすごく気にかかっちゃって。『私のこと、もういらないのかな?』って不安が膨らんで、月曜の朝イチに泣きながら電話をかけてしまいました。そんな私にうんざりしたのか、向こうは最近すごくよそよそしいですね……」

 これまでも男性と付き合うと見捨てられ不安から、日に何度も電話やメッセージを送るなど、確認行為が止まらなかったという稲田さん。前出の生野氏は、こうしたとらわれ型の特徴について「人と親密になることを求める一方、相手と揉めてしまいがち」だと指摘する。

「その背景には、幼いころ養育者から一貫性のない対応をされた経験がベースになっていることがあります。親から優しくされたかと思えば、あるタイミング突然突き放される……不安定なやりとりが繰り返されるうちに、子どもは強く、大げさに訴えることでしか愛情や関心を得られないと学習していくのです」(生野氏)

 稲田さんの場合も、親との関係が「再演」していた可能性もゼロではないという。

複数のコンカフェ嬢を“推し”に

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週5でコンカフェに通う大谷さん。「推しと付き合いたいとは思いませんね。客とキャストというお金を介した関係のほうが安心します」
 一方、とらわれ型が人に依存してしまうのに対し、親密な関わりを避けがちなのが「回避型」だ。都内在住の大谷健さん(仮名・33歳)も、「これまで一度も女性と付き合ったことはない」と話す。


「過去にタイプの女性からアプローチされたこともありますが、価値観が合わなかったり、束縛する人だったら面倒だなと思って避けてしまいました。でも、今は行きつけのコンカフェが5店舗ほどあるから、案外充実していますよ。僕は一人のコンカフェ嬢にガチ恋したりはせず、複数推しを作って店舗や推しの店外イベントになるべく顔を出して、しっかりお金を落とすようにしています。できるだけ感じよく接する“良客”でいることで、互いに心地よい関係が築けますから」

 大谷さんがコンカフェ嬢に使う金額は年間200万円ほど。「ある意味コンカフェ依存なのかもしれませんね」と苦笑する。生野氏はこうした「推し活」などの行為に依存するのも「回避型」の特徴であると指摘する。

「その背景には拒否的な養育環境がベースとなっていることがあります。どれだけ泣いて不安を訴えても親が受け止めてくれず、むしろ否定的な対応をとられるといった体験が積み重なり『自分の気持ちはどうせ伝わらない』と学習してしまうのです。人は自分を受け入れてくれないという信念から、自力でコントロールでき快楽が得られるモノ(例:酒や過食)、行為(例:ワーカホリック)に依存する傾向があります。店の女性との付き合いも、一見すると人への執着に思えますが、お金でコントロールできるという安心感が前提となっているため、モノや行為への依存と近いのです」

アタッチメント・スタイルは「性格診断」とは異なる

 このように自分自身を知る一助となるアタッチメント・スタイルだが、注意したいのは「回避型」や「とらわれ型」といったこれらの名称は、その人の性質そのものを指す言葉ではないということだ。

「これらの型はあくまで『その人が親密な他者とどう関係を築くのか』を示したテンプレートであり、それゆえ、別の人との関係ではアタッチメントの安定性が異なることもあり、さらに同じ人との関係であっても時間の経過とともにカテゴリーが変化していく可能性も秘めています。少なくとも『幼少期に親から〇〇されたから回避型になる』など、単純なイコールにはなりません」(生野氏)

 たとえ親との関係が不健全だったとしても、その後の人間関係のなかで『安定型』へと変わっていくこともある。
アタッチメント理論によって表現されるアタッチメント・スタイルは、そうした可能性までも示してくれる概念なのである。

生野信弘氏
医学博士、精神科専門医。対人関係療法による過食症の治療およびトラウマ関連疾患の診断と治療を専門としている。最新刊は『一人がいいのに独りはさびしい』

取材・文/中村よしこ

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