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売上高過去最高を記録した任天堂の憂鬱

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 一般的に株価は半年から1年先を織り込んで動くと言われています。任天堂の株価は、Nintendo Switch 2発売後の昨年8月に終値1万4795円と上場来高値を更新したあと、一時期40%以上下落し、現在は1万円前後。

 2月3日に発表された第3四半期決算では、売上高1兆9058億円(前年同期比約2倍)、Switch 2の全世界販売台数は1737万台(2025年12月末まで)と数字的には絶好調でしたが、アナリストなどからは「任天堂は今後苦しい局面を迎えるかもしれない」との声が上がっていました。
果たして任天堂は本当にピンチなのか? 任天堂を苦しめるといわれている4つの“憂鬱”を見ていきましょう。

「Switch 2」爆売れでも任天堂がピンチと言われる理由。懸念される4つの“憂鬱”と大きな“金脈”
前世代から大幅にスペックアップしたNintendo Switch 2

(1)製造コストの高騰による採算悪化

 まずもっとも指摘されているのが、素材やパーツの高騰によるハード本体の採算悪化。たとえばNintendo Switch 2には、データを高速処理するための12GBのメモリ(DRAM)やプレイデータをセーブする256GBの本体保存メモリ(NAND型フラッシュメモリ)が搭載されています。こうした記憶装置は、AIデータセンター向けの需要が旺盛で、一般情報機器用のメモリも割を食って供給不足となり、価格が高騰し続けています。

 第3四半期決算の数字を見ると、売上総利益率は、前年同期の59.1%から37.4%へと下降。「Nintendo Switchに比べて利益率の低いNintendo Switch 2の販売割合が高くなった」ことが理由として挙げられています。今後さらにメモリを筆頭に部品の値上がりが想定を超えると、利益率の一層の低下は避けられないのは確かでしょう。

(2)ハードの値上げに踏み切るのは困難!?

 製造コストの上昇に合わせて、ハードの値上げができれば採算は改善しますが、単純な値上げは難しいというのが大方の見方です。

 デフレ時代が長かったため、ゲームハードは発売時がもっとも価格が高く、その後しばらくすると値下がりする……といったイメージが値上げの足かせになっていそうです。過去にはWiiが、2006年12月の発売時には2万5000円(税込)でしたが、2009年10月には2万円(税込)に値下げされています。また、ニンテンドー3DSは、立ち上がりの不調を挽回するという狙いではあるものの、発売半年後には2万5000円(税込)から1万5000円(税込)へと、大幅値引きが実施されました。

 買いやすい価格になるのを待っているファミリー層も存在するなかで、“値上げは禁断の一手”というのは頷けます。ちなみにPS5の希望小売価格に関していえば、2020年11月発売の通常版(ディスクドライブ搭載型)5万4978円(税込)が、3度の値上げを経て、現在7万9980円(税込)にまで上昇してきており、客層の違いはあるものの、従来よりはゲームハードの値上げに対して消費者の抵抗感は薄れていそうです。

(3)キラーソフト不足で本体販売が伸び悩む懸念

「Switch 2」爆売れでも任天堂がピンチと言われる理由。懸念される4つの“憂鬱”と大きな“金脈”
海外でもブレイクの兆しがある『ぽこ あ ポケモン』公式サイト
 ゲームハードが売れ続けるには、そのハードで絶対に遊びたい、いわゆるキラーソフトが重要になります。Nintendo Switchでいえばローンチタイトル『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』、ローンチから1ヶ月後にリリースされた『マリオカート8 デラックス』、ローンチ7ヶ月後の『スーパーマリオ オデッセイ』。
さらに2020年3月発売の『あつまれ どうぶつの森』がハードを強く牽引しました。

 現状、Nintendo Switch 2においては専用ソフトがまだ少なく、ローンチタイトル『マリオカート ワールド』(全世界販売1403万本 ※12月末時点)や『ドンキーコング バナンザ』(全世界販売425万本)、『カービィのエアライダー』(全世界販売176万本)あたりが主力。今後のソフトラインナップも超強力といえるタイトルは確定しておらず、いわゆる“ソフト不足”がハードの足を引っ張るのではないかと言われています。

 ただ、これに関しては個人的な意見ですが、3月5日発売の『ぽこ あ ポケモン』のように、新しい切り口を持ったタイトルがブレイクする可能性は常に秘めていますし、『ゼルダ』や『スーパーマリオ』『どうぶつの森』などの新作が今後控えていると考えると、それらの看板タイトルなしに任天堂ハード史上最速のスタートダッシュを決めたNintendo Switch 2は、もう一段の爆発力を秘めていると言えます。

(4)AIによる開発環境の変化

「Switch 2」爆売れでも任天堂がピンチと言われる理由。懸念される4つの“憂鬱”と大きな“金脈”
携帯ゲーミングPC「Steam Deck」も好調のSteam
 短期的というよりは中長期的な話になりますが、進化したAIの活用でゲーム制作が容易になり、ある程度のクオリティのゲームがインディーを中心に多数登場する未来が予測されています。こうなると膨大な時間と予算をかけて制作する従来型のコンシューマゲームは埋もれてしまうのではないか……というのが、AI時代の任天堂への逆風シナリオとして一部で論じられています。
 
 仮にオールドメディアならぬ、“オールドゲーム”といったイメージがついてしまった場合、既存のゲームメーカーはどう対応するのかは気になるところです。

 また、クオリティの高いインディーゲームが増えることで、PC用DL配信プラットフォーム・Steamがさらに存在感を増しそうです。海外ではゲーム専用機不要論も根強く、ゲームハードを普及させてユーザーを囲い込み利益を上げるビジネスモデルが、すでに過去のものになっているという指摘もされています。

 とはいえ、このあたりの論調はスマホの無料ソーシャルゲームが市場を席巻した2010年代にもよく見かけました。どこか懐かしさすら感じます。

映画とテーマパークでキャラクター資産を活用

「Switch 2」爆売れでも任天堂がピンチと言われる理由。懸念される4つの“憂鬱”と大きな“金脈”
4月公開予定の『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』公式サイト
 ここまでネガティブなシナリオを見てきましたが、任天堂の今後に関して明るい話題もあります。まずは映画ジャンルの成功。
2023年公開の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は全世界興行収入約2000億円以上の大ヒットとなりました。

 4月24日からはその続編の『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』が全国公開予定(北米は4月1日公開)。さらに、2027年5月7日には実写版『ゼルダの伝説』の公開も控えています。豊富なキャラクター資産をゲーム以外にも活用するという点で、任天堂にとって映画の成功は大きな意味を持ちます。

 もうひとつはテーマパーク展開。今年開業5周年を迎えた、USJ内の任天堂エリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」。この1月には「“深化したポケモン体験”を創造する新プロジェクトを本格始動」とUSJからアナウンスがあり、新たなアトラクションに期待が集まります。海外に目を向けると、昨年5月にはアメリカの「Universal Orlando Resort」に海外2箇所目となる「スーパー・ニンテンドー・ワールド」が開業しています。

 また、『ポケモン』関連では、株式会社ポケモンとよみうりランドの共同事業として、この2月5日に初の常設施設「ポケパーク カントー」がオープン。ややチケットが高いという不満は見受けられるものの、「世界観がリアルに再現されていてポケモン好きにはたまらない」と概ね好評です。

 単純にゲーム販売だけを考えると難しい舵取りを迫られているように見える任天堂ですが、強みであるファミリー層の心を掴み、世界的なエンターテイメント企業として着実に前に進んでいることが伺えます。<文/卯月 鮎>

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【卯月鮎】
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。
ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も
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