世の中には、平気でウソをつく人がたまにいます。幼い子供ならともかく、立派な大人がです。
でも、ウソはいずれバレるのが世の常ではないでしょうか。
 今回取材に応じてくれた男性も、街角の交通トラブルで迷惑なウソに遭遇したそうですが、男性の潔白はすぐに証明されたようです。

「あなた、当たり屋?」接触事故を起こしたのに“意味不明な主張...の画像はこちら >>

配達中に起きた接触事故

「あんなに堂々と白を切り通す人、初めて見ましたよ。最後はあんなに泣きじゃくることになるとは、本人も思っていなかったでしょうね」

 苦笑いしながら当時を振り返るのは、フードデリバリーの配達員として働く浜坂さん(仮名・27歳)です。その日、彼は担当地域である都内の繁華街を駆け回っていました。現場は人通りも車の往来も多いエリアですが、普段は「歩行者優先」のルールが比較的守られている場所だそうです。

 異変が起きたのは、彼が通りの向かいにあるケバブ屋へ商品を受け取りに行こうとした時のことでした。浜坂さんはいつものように左右の安全を確認し、横断歩道を渡り始めました。ところが、その途中でポケットのスマホが着信を告げます。

「通知を確認しようと、ほんの数秒だけ立ち止まってスマホに目をやったんです。その瞬間でした。路地から右折してきた白いワンボックスカーが、僕の体に接触してきたんですよ」

 衝撃で手に持っていたスマホは地面に叩きつけられ、浜坂さんはその場にひざまずいてしまいました。一歩間違えれば大怪我に繋がる、危険な接触事故でした。


まさかの”当たり屋”呼ばわりしてきた被害者

 幸い、浜坂さんに大きな怪我はありませんでした。彼は折れた心を立て直すように立ち上がり、運転手に抗議しようと運転席へ歩み寄りました。しかし、窓が開いた瞬間に飛び出してきたのは、謝罪ではなく耳を疑うような罵声だったそうです。

「開口一番、『あなた、当たり屋?』ですよ。信じられませんでした。運転席にいたのは40代か50代くらいの中年女性でしたが、完全に僕が悪者であるかのような口ぶりで、まくし立ててきたんです」

 呆気にとられた浜坂さんでしたが、黙ってはいられません。「おばちゃん、そっちが当たってきたんだぜ! ここは横断歩道だぞ、わかってんのか?」と反撃しました。しかし、女性ドライバーは全く反省の色を見せず、それどころかヒステリックに声を荒らげます。

「いい加減にしてよ! 私はちゃんと一旦停止しました! あんたがスマホ見ながらボーッと歩いてて、自分から私の車に当たってきたんでしょ!」

 女性はクラクションを何度も鳴らし、「邪魔よ、どいて!」と訳の分からない主張を繰り返します。自分の過失を一切認めず、力技でその場を押し通そうとする態度に、浜坂さんは強い憤りを感じたといいます。

YouTuberのおかげで暴かれた真実の映像

 埒が明かないと判断した浜坂さんは、警察に通報しようと再びスマホを手に取りました。すると、その様子を側で見ていた一人の青年が声をかけてきたそうです。彼はカメラ機材を手にしており、たまたまその場所で野外ロケを行っていたYouTuberでした。

「あの、すみません。
さっきの一部始終、僕のカメラにバッチリ映っていますよ。確認しますか?」

 その一言に、浜坂さんは救われた思いがしたといいます。彼は女性ドライバーを車外へ呼び出し、青年のカメラに記録された動画を突きつけました。そこには、女性が一旦停止を怠り、スマホに気を取られていた浜坂さんに気づく様子もなく、ノーブレーキで突っ込んでいく姿が鮮明に記録されていました。

「動画を見せた瞬間、それまであんなに威勢よく怒鳴っていたおばさんの顔から、サーッと血の気が引いていくのが分かりました。証拠がないと思って高を括っていたんでしょうね」

 映像という「動かぬ証拠」を前に、女性の嘘は無残にも崩れ去りました。スマホを見ながら歩いていた浜坂さんにも注意不足はあったものの、横断歩道上での歩行者妨害、そして前方不注意は、言い逃れのできないドライバー側の過失です。

大号泣するも時既に遅し

 真実が明らかになった瞬間、女性ドライバーの態度は180度変化しました。しかし、それは反省の態度というよりは、あまりにも身勝手な「パニック」でした。

「突然、その場に泣き崩れたんです。『私、絶対前を見ていましたから!』『わざとじゃないんです!』って、子供みたいに大号泣し始めて。さっきまでの攻撃的な態度はどこへ行ったんだと、周囲の人たちも呆れ返っていましたよ」

 人通りの多い街角で、大人が声を上げて泣きじゃくる異様な光景。
しばらくして浜坂さんの通報を受けた警察官が現場に到着しましたが、女性は警察官に対しても涙ながらに支離滅裂な弁解を繰り返していたそうです。

「結局、警察官の方も困惑していましたけど、動画の証拠があったので話は早かったです。彼女はそのまま交通違反の切符を切られ、厳重に注意を受けていました。僕のスマホも弁償してもらうことになりましたし、最後はスカッとしましたね」

 浜坂さんはそう言って、新しいスマホを手に再びデリバリーの仕事へと戻っていきました。一方、あの女性ドライバーは、警察官に促されながらも最後まで肩を震わせていたといいます。自分の嘘に溺れ、自業自得の結末を迎えた女性。その涙に同情する者は、現場には一人もいませんでした。

<TEXT/八木正規>

【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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