今回取材に応じてくれたのは、事業で成功を収めた兄を持つ、地方銀行勤務の吉澤さん(仮名・39歳)です。彼は、開口一番「正直、兄さんが“やらかしていた”なんて、あの電話が来るまで微塵も思っていませんでした」と打ち明けてくれました。

誰もが疑わなかった兄の羽振り

「優秀な起業家」の兄が経営する会社を尋ねたら…驚きの事実が明...の画像はこちら >>
 吉澤さんには3つ年上の兄・真斗さん(仮名・42歳)がいます。実家は京都で造り酒屋を営む家で、もともと両親は長男である真斗さんに家業を継いでほしかったそうです。しかし大学時代、真斗さんはイギリスへ留学。帰国後は英会話関連のビジネスを立ち上げ、これが思いのほか当たったといいます。

「親もね、『あれだけ稼いでるなら無理に継がせなくていい』って空気になってました」

 英会話教室に加え、通信教育事業にも手を広げ、業績は右肩上がりだそうで。お盆や正月に帰省する真斗さんは、いつもブランドスーツ姿で、腕には誰が見ても高そうな時計。

「兄は昔から見栄っ張りなところもありましたけど、それが“成功者の証”に見えていたんです」

 最近は帰省の頻度は減っていったものの、顔を出せないときには高級菓子やブランド小物が必ず届いたそうです。

突然の電話「保証人になってくれ」

 異変は、ある平日の夕方に起きました。

「仕事が終わってスマホを見ると、兄さんから着信があったんです。珍しいなと思って出たら……」

「優秀な起業家」の兄が経営する会社を尋ねたら…驚きの事実が明らかに。「嘘を重ねるとこうなってしまうのかと」
電話する男性
 電話口の真斗さんは、いつになく歯切れが悪かったそうです。

「申し訳ないけど、どうしても急にお金が必要になった。おまえ、保証人になってくれないか?」

「一切迷惑はかからないし、しばらくしたら保証人も外すから……」

 真斗さんはそう畳みかけ、金額を告げます。「100万円」

「金額を聞いた時、私は少し不思議に思いました。『あれだけ羽振りの良い兄がなぜ100万円も工面できないの?』と」

 その場では「少し考えさせて」と答え、電話を切った吉澤さん。
すぐに姉夫婦へ連絡します。

「事業が順調なら、身内に保証人を頼む必要あるのかしら。でも、100万円って中途半端ね」

 姉も真斗さんの無心さに違和感を覚えたといいます。

本人の口から出た“破綻”という2文字

 不安を拭えないまま迎えた週末。吉澤さんと姉夫婦は、名刺に記載された住所をたよりに、真斗さんの会社事務所へ向かいました。

 しかし、そこにあったのは別のテナントの看板。受付で事情を話し、不動産会社に確認してもらうと、衝撃の事実が明らかになります。なんと、家賃を半年以上も滞納し、先月強制退去させられたのだとか。

 吉澤さんは、すぐに真斗さんの携帯に電話をかけたそうですが、その日は一度もつながることなく、吉澤さんたちは一度解散したそうです。

 その次の日、吉澤さんは起床してすぐに真斗さんに電話をかけると、すぐに繋がったといいます。

「兄さん、昨日さ、僕たち兄さんの会社に行ったんだよ。でも、そこには何もなかった。不動産会社に確認したら“強制退去”だって。
ねえ、一体どういうことなの? 事業は順調じゃなかったの? 全部ウソだったの?」

 最初は反応がなかったそうですが、真斗さんはボソボソと話しはじめたそうです。

「実はさ、もう何年も前にビジネスは破綻してたんだ。大学まで留学させてもらって、家業も継がずに好きな人生を歩ませてもらっていたので、なかなか本当のことを言えなかったんだん。ごめん。この前電話でお願いした100万円は、当座の生活費と借金の返済に当てようと……。俺さ、もうこれ以上借金できなくなったんだ。情けないよな。本当にごめん」

 まさに青天の霹靂だった兄からの言葉。吉澤さんは、しばらく何も言い返せず沈黙が続いたそうです。

全てを吐露し一からのやり直し

「兄も辛かったでしょうね。とっくに破綻しているのに肉親にはそのことを明かせず、“成功者”を演じるために見栄を張り続けていたんです。ハイブランドのプレゼントも、身につけていたアクセサリーから自家用車まで、全部借金だったんでしょうね」

 その後、吉澤さんたち肉親のすすめで、現在真斗さんは自己破産を検討しているとのこと。
一からやり直す準備をしているといいます。

「一度嘘をついてしまうと、その嘘がどんどん取り返しのつかない方向に膨らんでいくのですね。兄もこんな人生は望んでいなかったと思います。今回、姉たちと一緒に兄の会社に踏み込んだことは大正解だったと思います」

 真斗さんは、自己破産が認められた暁には、姉夫婦が引き継いだ家業である造り酒屋で働くそうです。

<TEXT/八木正規>

【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
編集部おすすめ