しかし、あおり運転の加害者はこのルールを完全に無視し、前の車のバックミラーを強烈な光で照らし続け、執拗に精神を追い詰めます。
今回は、過去に大きな反響を呼んだ実録エピソードから、あおり運転という暴挙に出たドライバーが迎えた、あまりに皮肉で驚くべき結末を紹介します。まさか、その運転手の正体とは……。被害者がその恐怖をいかにして切り抜けたのか、2つの事例を最新の法規と共にお届けします。
①暗闇の中での恐怖
社用車を運転している最中にあおり運転に遭遇した渡辺優子さん(仮名・30代)。助手席には課長が座っており、日頃の疲れからかぐっすりと寝ていたそうだ。「すでに辺りは暗くなっていて、私は法定速度を守りながら運転していました。でも、後続車が突然、ハイビームで車に迫ってきたんです」
はじめは気にせずに走行していたのだが、その車は徐々に車間距離を詰め、何度もパッシングを繰り返してきたという。不安になった渡辺さんは、助手席で寝ている課長を起こして説明した。しかし……。
“先に行かせろ!”
寝ぼけていた課長は、そのように不機嫌そうに言い、再び寝ようとした。
「後続車はますます接近してきて、車は蛇行運転をはじめました。怖くなったので、再度課長に頼み込むと、ようやく課長は座席のシートを起こして状況を確認しました」
その時、後続車は強引に渡辺さんの車を追い越すと、加速と急ブレーキを繰り返しながら車の前を走りはじめたようだ。
「課長は冷静に、『距離を取れ!』と言いましたが、その車のスピードは落ちることなく、私は同じペースで走り続けました」
渡辺さんは恐怖心から、その車に合わせて走行するしかなかった……。
あおり運転をしてきた相手はまさかの人物で…
渡辺さんは、「運転代わってください」と課長に訴えた。車を路肩に停め、課長はついに警察に通報することを決めたそうだ。その瞬間、覆面パトカーが現れサイレン音を鳴らしながら停車。渡辺さんの車と後続車は停車を求められたという。「警察官が近づいてきてあおり運転の状況を確認すると、後続車の運転手が調査されることになりました」
すると、その運転手の正体が“まさかの取引先の営業マン”であることが発覚し、渡辺さんはア然とした。翌日、会社に謝罪に来たのだが、その後の展開は驚くべきものだったようだ。
「土下座レベルの謝罪をしていましたが、ドラレコを確認した部長が冷酷に“契約解除”を告げたんです。私は、部長や同僚たちに『大変だったね』と声をかけられ、思わず泣いてしまいました」
課長の“武勇伝”に失笑
しかし、その後の課長は、この出来事をまるで“武勇伝”のように語っていたという。
「私を助けたことを誇るかのように、『あの時、俺がいなかったらどうなっていたか分かっているだろう?』と話していましたね」
ただし、ドラレコには課長の言動がしっかりと残っていたのだとか。
「課長、起きてください~!」
「課長、助けてください~!」
「(眠たそうに)何だよ、もう……」
そんな会話だけでなく、課長が座席のシートを倒して寝ている姿も録画されていたのだ。もはや失笑するしかなく、課長が部長から叱られたことは言うまでもない。
②もはや“逃げることができない”と思った瞬間
そんな中、田中勇気さん(仮名・50代)は、八王子から相模湖に向かう途中であおり運転に遭遇した。
「バックミラーに映った1台のRV車が異常に接近してきました。わずか2メートルほどまで車間を詰められ、軽くブレーキを踏んだら衝突しそうな距離感でした」
後部座席にいる友人たちも状況を察知。女性陣は怖がっていたという。「空気を壊したくない」という思いから慎重に運転をしていたのだが、後続車はさらに車間を詰め、パッシングを繰り返した。
「もはや“逃げることはできない”と思いました。私は、車を端に寄せて停車することにしたんです」
停車すると、予想通り、後続車も真後ろにぴったりと停まったのだとか。
あおり運転の相手が一瞬で縮こまった理由
「20代前半くらいの男性5人が詰め寄ってきました。窓を5センチほど開けて話を聞くと、『曲がり角で割り込まれた』と言うんです。冷静に振り返っても、それは完全に彼らの言いがかりでした」彼らのしつこい訴えに対して、田中さんは渋々車を降りることに……。
すると、彼らは一斉に後ずさり。4人は自分たちの車に戻ったそうだ。リーダーと思われる1人が残ったため、田中さんは一歩前に出て、「こんなことで人生を棒に振ったらもったいないですよ。
「彼は、その言葉に驚き、今にも泣きそうな顔をしていました。『二度とこんなことはしません。本当にすみませんでした』と謝り、アクセル全開で去って行きました」
その後、田中さんは笑顔で車に戻り、何事もなかったように旅を楽しんだ。
「実は、当時の私は“プロ格闘技の選手”でした。大胸筋とか腕周りが発達していて、常人では到底ありえない肉体だったでしょうね」
■ 数字が語る「暴走の代償」と取り締まりの現実
あおり運転の加害者が仕掛ける執拗なハイビーム攻撃。これは単なるマナーの問題ではなく、道路交通法第52条に抵触する明確な違反行為です。この「前照灯の切り替え義務」を怠った場合の反則金は、普通車で6,000円。しかし、これが「妨害運転罪(あおり運転)」とみなされれば、もはや反則金では済みません。最大で3年以下の懲役または50万円以下の罰金という重い刑事罰が科され、即座に免許取り消しとなる可能性も十分にあります。
いつ誰がそんな理不尽な暴挙に遭遇してもおかしくないのが、今の公道という場所です。
執拗な威嚇を前に、決して感情で応戦してはいけません。
毅然とした対応で距離を取り、法的な手続きで逃げ道を塞ぐ——。理不尽な悪意から自分の日常と人生を守り抜くために、賢く立ち回る知恵こそが、私たちドライバーにとっての唯一の防衛策なのです。
<取材・文/chimi86 再構成/日刊SPA!編集部>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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