昨年3月の起訴から約1年、沈黙を破って法廷で語られたこととは——。
現在の仕事は…「芸人です」
東京地裁の4階にある429号法廷。この法廷は、芸能人や政治家、暴力団員などの「有名裁判」に度々使用され、入廷時には傍聴人の手荷物を預かるなどの厳重な警備が敷かれている。俗に「警備法廷」と呼ばれている。そんな特別な法廷で、斉藤被告の裁判が開かれた。法廷に現れた斉藤被告は、上下黒色のスーツに紺色のネクタイ姿。浅く一礼をして弁護側の横の椅子に腰をかけた。つい1年半前までテレビに頻繁に出演し、お茶の間の人気者だったはずの斉藤被告は、終始神妙な面持ちだった。
裁判長は開廷の宣言をすると、斉藤被告を証言台に立たせて人定質問がはじまった。人定質問で「仕事は何をしていますか」と問われると、目の前に座っている裁判長の方を向き、はっきりとした口調でこう答えた。
「芸人です」
筆者には、斉藤被告の強い意志がうかがえた。
3つの時間帯で及んだとされている犯行内容
裁判長による人定質問が終わったのち、検察側による起訴内容の朗読がはじまった。今回の裁判では、被害者の氏名などについて秘匿決定がされたため、「Aさん」と呼称がついている。起訴状によると、斉藤被告は以下の3つの時間帯で犯行に及んだとされている。
* * *
・第1
斉藤被告は、2024年7月30日午前9時22分頃から41分頃までの間、東京都新宿区内の路上に停車中のロケバスの車内で、初対面のAさん(20代)の両肩を手でつかんでキスをして、右胸を揉むなどしたとされる。
・第2
また、同日午前10時25分頃から40分頃までの間、同区内に駐車中のロケバスの車内で、Aさんの両肩を手でつかんでキスをしたとされる。
・第3
さらに、同日午後0時1分頃から9分頃までの間、同区内に停車中のロケバスの車内で、Aさんと口腔性交をしたとされている。
* * *
検察側は、いずれの犯行もAさんが斉藤被告からの突然の性的行為に恐怖や驚愕を覚えたうえ、ロケ中だったため時間に余裕がなかったことや、斉藤被告の芸能界での影響力から行為を断ると自身の不利益になると考え、同意しない意思を表明することが困難な状況にあったと指摘。さらに、Aさんが同意していないことを斉藤被告も認識していたとしている。
「同意してくれていると思っていました」と容疑を否認
つづいて、裁判長は「何か間違っている点はありますか」と斉藤被告に罪状認否を求めた。すると、斉藤被告は緊張だろうかやや重い声になりつつ、はっきりとした口調で起訴内容を否認した。「私の行為にAさんが同意してくれていると思っていました」
この裁判の争点は、①前記の【第1】~【第3】の犯行があったのか否か、②斉藤被告はAさんが同意していないことの認識(故意)があったか否か、の2点。
弁護側は、【第2】の犯行を全面的に否認。さらに、斉藤被告はAさんが同意していないことを認識していなかったことや、検察側が指摘するような強引な行為はしてないと弁解。「斉藤さんに故意がないのは明らかです」として、次のように強調している。
「斉藤さんに言い渡されるべき判決は無罪判決です」
耳を疑うような「具体的な発言内容」も
検察側の冒頭陳述によると、犯行当日、斉藤被告とAさんは新宿区内でテレビ番組の撮影に参加しており、二人は初対面だった。
その内訳は出演者用とスタッフのみが乗車する、計2台。検察側は、前者の車中で事件が起きたとしている。
検察側は裁判で犯行当時の状況について、二人の具体的な発言内容を踏まえながら説明。その内容は耳を疑うものだらけだった……。
斉藤被告が問われている「第1の犯行」
ロケバスの車内では、斉藤被告の一つ前の座席にAさんは腰をかけていた。ロケ中、会話を重ねるごとに、次第に仲睦まじくなっていったとのこと。ロケバスからスタッフが全員降りたのを確認すると、斉藤被告はAさんにこう言ったという。「ホントかわいいね。肌きれいだね」
この発言のあと、斉藤被告はAさんにキスをしたり、服の上から胸を触ったのち、さらに服の中に手を入れて右胸を揉んだとされる。Aさんは、斉藤被告の行為を咎めた。
「やめてください。大丈夫ですけど、仕事がまわらなくなるのでやめてください」
この行為を裏付けるように、検察側はAさんは被害直後に、母親などにLINEで被害を申告する旨のメッセージを送っており、書証としてスクリーンショット写真を提出している。
口腔性交に至るまでの生々しいやりとり
第1の犯行から40分ほどが経過し、ロケバスの車内で再び二人きりになったとき。斉藤被告はAさんに向かって発言した。「彼氏いるの?かわいいね」
そう言い残すと、斉藤被告は座席から身を乗り出して、Aさんの両肩を手でつかみキスをしたとされる。Aさんは両手で斉藤被告を押し返すなどして抵抗。その際、「やめてください」と斉藤被告に伝えている。
二人は撮影のために、ロケバスを降車した。
弁護側も口腔性交をしたことは認めている
第3の犯行は、斉藤被告が問われている罪名の中で、法定刑が最も重い「不同意性交」の罪で起訴されている。第2の犯行から1時間20分ほどが経過してからのこと。斉藤被告が着替えをしようとロケバスの車内にいたとき、ピンマイクを服から外すためにAさんが乗車してきた。それを見ると、斉藤被告はAさんに卑猥な言葉とともに、こう言い放った。
「今日は会えてうれしかったよ。(筆者注:過度に卑猥な言動のため省略)ごめんね。ついかわいくてさ」
直後、斉藤被告とAさんは口腔性交をした。
検察側の冒頭陳述が終わると、弁護側もAさんの具体的な発言内容を引用しながら、斉藤被告の身の潔白を主張しはじめた。だが、そのAさんの発言内容は、検察側のものと著しくかけ離れているものだった。
ロケバスの車内で実際に何が起きていたのか——。後編では、弁護側が提示したAさんの発言や当日の状況、さらに示談の行方や今後の審理の見通しについて詳しく見ていく。
文/学生傍聴人
【学生傍聴人】
傍聴歴7年、傍聴総数1000件超。 都内某私立大の大学院に在籍中の現役大学院生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴をはじめ、有名事件から万引き事件など幅広く傍聴している。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行なっている。
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