ジャーナリストの岩田明子氏は、今回の衝突は遠い中東の出来事ではなく、日本のエネルギー安全保障や外交にも直結する重大局面だと見る。そして、日本の対応を考えるとき、どうしても頭をよぎるのが安倍晋三元首相の中東外交だったという。(以下、岩田氏の寄稿)。
対立長期化で日本への影響は甚大。日米首脳会談が一つの山場に
安倍元首相だったら、どう対応しただろうか? イランと米国・イスラエルの対立を見るに、考えざるを得ない。「報復を決して放棄しない」
3月12日、殺害されたアリ・ハメネイ師の後継者に選ばれたモジタバ・ハメネイ師が初めて声明を出した。徹底抗戦の姿勢を示しながら、「あらゆる手段」でエネルギー輸送の要衝・ホルムズ海峡を封鎖するとも宣言した。
この封鎖によって最も深刻な影響を受けるのは日本だ。原油の中東依存率が95%にも達するためだ。ホルムズ海峡経由のLNG輸入は全体の6%にすぎないが、5%を占めるカタール産LNGもイランによるドローン攻撃を受けて生産を停止している。
高市首相は石油備蓄の先行放出を決めたが、すでに急騰しているガソリン価格を抑え込むのは容易ではない。
そうした中、世界が注目する日米首脳会談が19日に予定されている。関税政策が主題とされるが、予測不能なトランプ大統領のことだけに、中東への自衛隊派遣やタンカー護衛の後方支援などを要請しかねない。そのとき、高市首相は一方的な要求にうまく対応できるのか……?
安倍外交の不在 問われる高市首相の対応力
振り返れば、第1次トランプ政権とイランの緊張が高まった’19年には安倍氏が仲介役としてハメネイ師と会談した。イランは西側諸国の仲介を拒絶したが、安倍氏がロウハニ大統領と毎年会談するなど中東外交に力を注いできたこと、ハメネイ師が大統領だった1983年に父・晋太郎氏が和訳のコーランを友好の証しとして手渡していたことなどから、安倍氏を歓迎したのだ。その会談が決定的な成果を生むことはなかったが、安倍氏は突出した外交力で、イランにも米国にも配慮した独自のスタンスを取ることができた。だが、高市首相には独自の外交ルートはなく、経験は乏しい。本来であれば、水面下で各国と電話会談を重ねて停戦の道を探るところだが、12日には中東諸国の駐日大使らとの会合を前に体調を崩してキャンセルした。
ご存じのとおり、予算案の強行採決で国会は紛糾している。石川県知事選では反対を押し切って高市首相が応援に行ったのに自維推薦候補が敗れたため求心力低下も囁かれている。内外ともに難題山積の中、日米首脳会談をどう乗り切るのか注目したい。
【岩田明子】
いわたあきこ●ジャーナリスト 1996年にNHKに入局し、’00年に報道局政治部へ。20年にわたって安倍晋三元首相を取材し、「安倍氏を最も知る記者」として知られることに。’23年にフリーに転身後、『安倍晋三実録』(文藝春秋)を上梓。現在は母親の介護にも奮闘中
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