『孤独のグルメ』原作者で、弁当大好きな久住昌之が「人生最後に食べたい弁当」を追い求めるグルメエッセイ。今回『孤独のファイナル弁当』として取り上げるのは、駅ビルで購入した20%引きの弁当。
孤独のファイナル弁当 vol.26「仕事机で343円バラエティ弁当!」
今日はスタジオに入って『孤独のグルメ Season11』のタイトルバック曲を録音していた。毎回新しいタイトル曲作ってる番組はそうないと思います。シリーズの中ではかなりアッパーな曲で全員歌も歌って、30秒に4時間ぐらいかかった熱録でした。その録音中にこの連載の締め切りの催促が来たという、まさに綱渡りのドキュメンタリーであります。
終わって夜7時過ぎ、外は冷たい雨。楽器とノートパソコンを背負って傘を差して、駅ビルの地下に弁当を買いに。選んだのが「おかずたっぷりバラエティ弁当」。タイムサービスで20%引き、343円。安い!
あまり腹がいっぱいになると眠くなって原稿書けないから小さい弁当。仕事場には電子レンジなどないので、冷えたごはんが寒々しいからカップのなめこ汁も購入。
仕事場に来て、手を洗ってお湯を沸かして、さあファイナル弁当実食だ。
まずなめこ汁を啜る。
おかずは、卵焼き、ウインナ、コロッケ、ハンバーグ、大学芋、煮豆、ポテサラそして付け合わせの具なしスパゲティ。確かにバラエティに富んでるが「たっぷり」と言っても全体が小さいから一個一個が少ない。ごはんはおにぎり1個半分ぐらい。
でもいい。最初にコロッケひと口。うん、コロッケだ。丁寧に食べてもこりゃ3口だな。ごはん。
ウインナ半分。なんだこりゃおもちゃか。でもそこが楽しいじゃないか。でごはん。
ハンバーグ。これまた弁当用極限の小ささと薄さ。肉感の希薄さ。
ごはん、そして汁。極小なめこの熱いトゥルトゥル感がひたすらありがたい。
一息ついて箸を置き、しみじみ。今かけているBGMはニール・ヤングのアルバム『ズマ』。これがもうこの弁当にピッタリ。若い頃さんざん聴いたやつだからね。
さて卵焼き。まあ、これも駄菓子みたいもんだ。駄菓子いいじゃないか。懐かしい。
大学芋。ひとかけ。いよいよ貧乏臭くていい。臭いといえば下に煮豆。芋と豆、二大屁の素。OK。仕事場ひとりだから、屁し放題。こんな弁当食って、でっかい屁をしてそれが最後の弁当って、イタチの最後っ屁か。楽しいじゃん。な、イタチ。
付け合わせスパ、あるとなぜか嬉しい。っていうのも貧乏性か。
なめこ汁啜り「あぁ、今日の録音楽しかったな」と思う。テレビで流れるのが楽しみ。ごはんもおかずもほぼなくなった。最後に残ったのは薄味ポテサラひと口。ご馳走様。
うまかった。書いたぞ。
―[連載『孤独のファイナル弁当』]―
【久住昌之】
1958年、東京都出身。漫画家・音楽家。代表作に『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)、『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など。Xアカウント:@qusumi
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