歌舞伎町・トー横に集まる少年少女は、単なる“不良”ではない。虐待やネグレクト、貧困で家に居場所を失い、生きるために性売買や闇バイトに流れ込む子どもたちが少なくないのだ。
実際に14歳でトー横に出入りし、売春をしていた18歳女性は、稼いだ金をホストに搾取され、保険証まで奪われたという。未成年を食い物にする歌舞伎町の構造と、そこに追い込まれる若者貧困の実態を追った。

「最近は一日100人くらいの未成年がトー横にいる」

「14歳で売春、稼いだ金はホストに徴収されて…」保険証まで奪...の画像はこちら >>
東京・新宿区歌舞伎町の通称「トー横」と呼ばれる一帯に出入りしていた女子中学生を脅し性売買をさせたとして、警視庁少年育成課は2月8日までに、児童福祉法違反などの疑いで、派遣社員の森田永樹容疑者(30歳)を逮捕した。

2月20日深夜、歌舞伎町周辺を記者が訪れると、路上には未成年と見られる若い男女の姿が多く目立っていた。路上での性売買の問題が指摘されてきた大久保公園周辺はまばらで閑散としていたが、隣接するホテル街ではいまだにそれらしき女性の姿があった。

その多くは15歳~20歳前後と見られる若い女性だったが、中には中高生ほどの年齢に見えるあどけない顔立ちの少女も見受けられた。

「最近は一日100人くらいの未成年がトー横にいます。前より増えているのはTikTokでトー横がよく取り上げられているからでしょう」

そう語る木島未由さん(仮名・18歳)も、かつて14歳からトー横に出入りし、性売買をしていた一人だ。現在は新宿・歌舞伎町で若者を支援するボランティア団体の一員として活動している。

「中学2年生の頃、父親からの暴力を苦に家を出て、生活のために地元の繁華街で売春をしていました。あるとき、私をよく買っていた客の男から『歌舞伎町に来たらプラスでお金をあげるよ』と言われました。とにかく生きるためのお金が少しでも多く欲しかったのと自暴自棄だったこともあり、言われるがまま、歌舞伎町へ向かいました」

必死に客を取っても生活はラクにならなかった

「14歳で売春、稼いだ金はホストに徴収されて…」保険証まで奪われた少女が語る、トー横“性搾取”の底なし沼
「トー横ができたばかりの頃は、家がしんどかったコたちの自助グループのような機能も果たしていたと思う。でもいつの間にかTikTokとかでキラキラコーティングされて、今のような“10代が憧れる場所”になってしまった印象です」と木島さん
トー横のある新宿区・歌舞伎町はほかの地域に比べて圧倒的多数の買春客が存在し、何人も相手にすれば高い収入を得られた。木島さんは親から離れるため、路上で必死に客を取った。しかし、生活はラクにならなかったという。


「多いときで一日20万円ほど稼げることがありましたが、14歳なので家を借りられない。結局、道端で出会ったホストにアパートを借りてもらっていたんですが、稼いだお金をそのホストに徴収されてしまい……。保険証なども奪われた状態だったので、逆らうことができなかったんです」

一時は児童相談所にも保護されたが、自分から出てきてしまったという。

「スマホすら使えない刑務所のような児相の生活に耐えられなくて、またすぐに歌舞伎町に戻ってしまいました。私はそのあと女性支援団体と繫がれたのでなんとか立ち直れましたが、今も歌舞伎町には、かつての私のように弱みを握られて不当な売春をさせられている女のコがたくさんいます」

会社員が副業で未成年売春をあっせん

「14歳で売春、稼いだ金はホストに徴収されて…」保険証まで奪われた少女が語る、トー横“性搾取”の底なし沼
ホテルの入り口に立ってスマホを見ながら客待ちをする女性たち。「22時以降になると摘発対象になるから散っていくが、それまでの時間だったらトー横周辺に中高生はいくらでもいる」と金尻氏
「性売買で生活費を稼ぐ貧困少女を男性が食い物にする、こうした手口は歌舞伎町では少なくないです」

そう話すのは、歌舞伎町で少女たちの保護活動を行うNPO法人「ぱっぷす」代表の金尻カズナ氏だ。

「虐待やネグレクトを理由に家出をし、居場所がない貧困少女が最も支配しやすい。それを知っている男性が、歌舞伎町に集い、たむろしている少女に声をかけて家に住まわせたり、意に反して歌舞伎町で性売買をさせたりする例が少なくありません。最近は道端で声をかけるだけでなく、SNS経由で売春を強要されたという事例も後を絶ちません。SNSの投稿からお金に困っているような少女を見つけ、『裸の写真を送ってくれたらお金をあげる』とメッセージを送る。写真を受け取ったあと、『これを親や友達にバラまかれたくなければ客と待ち合わせしてホテルへ行け』と指示し、管理売春を強要するんです」

性売買をさせる男たちの素顔

「14歳で売春、稼いだ金はホストに徴収されて…」保険証まで奪われた少女が語る、トー横“性搾取”の底なし沼
歌舞伎町でアウトリーチ活動を行っている金尻氏でも「もう正直、顔で年齢を測ることはできない」と語る。「20歳くらいかな?と思って話を聞いていたら、12歳だったこともあります」
卑劣な手口で路頭に迷った貧困少女をおびき出し、性売買をさせる男たち。その素顔は意外なものだった。

「未成年者の管理売春を行う加害者の多くが、実はベンチャービジネスをやっているような若い男性。副業感覚で未成年者の性売買に手を染めているケースが意外に多いんです。
ただ、彼らも借金を抱えて生活がままならなくなっていることもあり、貧困の連鎖の一端を感じます」

少女たちを騙す男のなかにはそういった会社員だけでなく、ホストも多い。

「女性からお金を巻き上げているように見える彼らも、ホストクラブ側からひどい搾取を受けているケースがあります。ホストクラブが大学の学費を肩代わりするケースもあり、働き続けるよう追い込まれるんです」

自分は騙されていると知っていても、居場所のない少年少女は結局、トー横に集うしかない。自分と同じような境遇の仲間が多くいるからだ。

「世間は歌舞伎町に集まるような子供たちを“不良”だと断罪します。でも、その多くが貧困や虐待に苦しむ“サバイバー”であるという認識がもっと広がってほしい。安心と安全が保たれた家がなく、さらに行政や学校からも見放され、生きていくためのお金もない。そうなれば、男のコは売春のあっせんや闇バイトに走り、女のコは買春客に頼らざるを得なくなります」

歌舞伎町に集まっているのは単なる非行少年少女ではなく、「普通に生きる」こともできない子供なのだ。

「14歳で売春、稼いだ金はホストに徴収されて…」保険証まで奪われた少女が語る、トー横“性搾取”の底なし沼
U35貧困の惨状
【「ぱっぷす」代表 金尻カズナ氏】
ソーシャルワーカーとして、性産業に取り込まれた被害者などへの支援事業を行っている

「14歳で売春、稼いだ金はホストに徴収されて…」保険証まで奪われた少女が語る、トー横“性搾取”の底なし沼
「ぱっぷす」代表の金尻カズナ氏
※2026年3月24・31日合併号より

取材・文/週刊SPA!編集部 

―[U35貧困の惨状]―
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