2024年7月、ロケバスの車内で女性に性的暴行を加えたとして、不同意性交などの罪に問われている、お笑いトリオ「ジャングルポケット」の元メンバーの斉藤慎二被告(43)に対する第2回公判が、今年3月17日に東京地裁(伊藤ゆう子裁判長)で開かれた。
被害者は「死にたい」とも…元ジャンポケ斉藤“ロケバス事件”。...の画像はこちら >>
 今回の裁判では、被害者とその母親が事件について証言をした。
実際に裁判を傍聴した筆者が、注目の証人尋問で明らかになった内容を詳報する。

法廷には水色の遮蔽…異様な空気感で第2回公判がスタート

 筆者が法廷に入ると、法廷の中央の証言台を囲むように水色の遮蔽が設置されていた。

 この裁判では、被害者のAさん(20代)の氏名など、個人を特定できる事項に秘匿決定がされている。そのため、証言をするAさんの関係者を傍聴席から見えなくするための措置であろう。

 開廷直前、法廷の横のドアから現れた斉藤被告は初公判と変わらず、黒色のスーツに紺色ネクタイ姿。弁護側の席に座ると、両肩を上下に動かしたり深呼吸をするなど緊張しているような様子だった。特に、証言席を囲む遮蔽板にやや驚いた表情をしたことが印象的だった。

 第2回公判では、斉藤被告の有罪立証をするために検察側が請求した、証人2名の尋問が行われた。今回の裁判で証言をしたのは、被害者のAさん(20代)とその母親。まずは、母親から証人尋問が行われた。

母親に送られたLINEが示す“切迫した状況”

 遮蔽板の奥にある証言台の椅子に座る音がすると、その中から女性の声がした。Aさんの母親だ。事件当時、Aさんは母親と同居しており、事件を知る最も身近な人物である。まず、事件当日の朝、外出前のAさんの様子についてこう振り返る。


「テレビの撮影に行くということで、緊張とわくわくしているような、そういう感じに見受けられました」

 期待を胸に現場へ向かったAさんは、撮影中に使用されたロケバスの車内で、斉藤被告から計3回の性的行為を受けたとされている。Aさんが外出したのち、仕事中のはずのAさんから、こんなLINEのメッセージがあったと母親は話す。

「娘の方から『ジャンポケ斉藤 めっちゃ気持ち悪いんだけど』『チューしようとしてきた』という内容のLINEがきました」

 そんなAさんからのメッセージに驚きつつも、母親は「『サイテー』『そんなことばっかりしてるんだろうね』」と返信。さらに母親は、「娘のために」と斉藤被告を痛烈に批判する内容を送信していた。

「私は『たいして面白くないのにね』とLINEしました」

 このLINEのやり取りは、Aさんが斉藤被告から1回目の被害を受けたときのこと。その後も2回にわたって性被害を受けたとされる。

帰宅直後に母親が見た“娘の異変”

「撮影がはじまったのかな」

 Aさんと母親とのメッセージのやり取りがなくなってから、数時間が経った。撮影後、Aさんは母親が待つ家に帰宅してきた。

 Aさんは帰宅するとすぐに、母親がいるリビングに向かった。そして部屋に入るなり、ロケバスの車内であった事件を打ち明けてきたという。母親は驚きながらも、「えっ、あの人に?」と斉藤被告なのか尋ねると、Aさんは「うん」と答えたと回顧する。さらに母親は、Aさんにこのように聞いた。

「抵抗したんでしょ?」

 これに対して、Aさんは「当たり前じゃないの」と答えたという。
性被害を打ち明けてきた当時のAさんの様子について検察側に問われると、母親は声を震わせながら、一言一言ゆっくりと証言する。

「子どもが地団駄を踏んで『嫌だ嫌だ』という振る舞いをすることがあると思うんですけど、そのような感じで、やるせない気持ちをあらわしていました」

 つづけて、当時のAさんの表情について「半分泣いて、悔しさ、つらさと入り混じったような顔をしていました」と振り返ると、母親は数秒沈黙した後、小声で発言した。

「『死にたい』とも……」

「まずうがいして」母親の悲痛な思い

被害者は「死にたい」とも…元ジャンポケ斉藤“ロケバス事件”。母親の証言で明かされた“被害当日の全貌”
事件発覚後、斉藤被告が所属していた「吉本興業」は契約解除の声明を出していた(同社HPより)
 そんなAさんのただ事でない話を聞いて、母親は急いでこのような提案をした。

「『とにかくまずうがいして』と言いました。娘の体が汚れてしまってすごく嫌だったからです」

 また、Aさんは「身を清めるように」とシャワーを浴びることもあった。その後、Aさんは母親に「寝る」と伝えて自室に行くと、床に就いた。

 さらに、会話の中で母親は「警察に相談しようよ」と被害申告を提案したこともあったという。これに対して、Aさんは「でも、証拠はないよ」と被害申告に消極的だったと話す。それでも母親は引き下がらず、「でもドライブレコーダーとかあるんじゃないの?(警察に)行ってみようよ」とAさんに伝えた。

 結局この日、Aさんは斉藤被告からの性被害を警察に申告することはなかった。

5日後に警察へ…被害申告までの経緯

 そして事件から5日後、Aさんは警察署に赴いて性被害の相談をしている。Aさんの気持ちが変化した理由に、母親のせめてもの想いがあった。

 事件当日の会話の中で、母親は普段からAさんが通院していた「メンタルクリニック」の医師に相談するように提案。事件から4日後、Aさんは通院することになった。
そこで、母親はAさんに気持ちの変化があったと振り返る。

「(Aさんは)先生のことをかなり信頼していて、(事件について)色々な相談をしていたところ、先生が『それは警察に行った方がいい』と助言してくださいました。それで警察署に行くことになりました」

 通院した翌日、母親はAさんに同行して警察署を訪れ、斉藤被告からの性被害の申告をした。

 終始、Aさんの隣に寄り添っていた母親は、事件後の我が子の変化について声を震わせながら、「めっきり暗くなりました。泣いたり、とても暗くて溜息ばかりついて……見ていられませんでした」と振り返る。

母親自身の経験と重なる「深い傷」

被害者は「死にたい」とも…元ジャンポケ斉藤“ロケバス事件”。母親の証言で明かされた“被害当日の全貌”
3月13日(金)、初公判時の東京地裁前、傍聴席を求めて集まった人々/筆者撮影
 さらに、過去の母親自身の経験を踏まえて、Aさんの状況について、このように心配した。

「事件当日の仕事に期待を持って出かけていたのに、ものの数時間で想像もしないようなことになってしまって、とても今日まで苦しんでいます。20代という一番人生で良い時期を、こんなことで苦しみを受ける姿を見ていると、とてもつらいです……」

「私も学生のころ、露出狂に遭ったりしました。でも誰にも言えず、今この歳になってもこの道(筆者注:被害を受けた場所)を通ると、『あっ』と鮮明に思い出します。娘はどんな想いでいるのか。今後生きていくうちは、ずっと瞬間瞬間で思い出すことがあると思うととてもかわいそうです」


「なんで私ばっかり…」Aさんの言葉が突きつける被害の現実

 母親が証言する中で、昨今取り沙汰されている芸能界の性被害問題に触れて、Aさんはこのように吐露したこともあったと述懐する。

「なんで私ばっかりこんな目に遭うの?」
「よくテレビとかで同じようなことをされたとの報道があるけど、なんでと思っていたけど。その人たちの気持ちがやっとわかった」


 斉藤被告は終始、表情を変えることなく証言を聞いていた。
母親の尋問が終了して一時休廷になった後、午後からAさんが証言した。法廷で被害者本人が語ったこととは——。

 後編では、Aさんの証言内容を詳報する。

文/学生傍聴人

【学生傍聴人】
傍聴歴7年、傍聴総数1000件超。 都内某私立大の大学院に在籍中の現役大学院生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴をはじめ、有名事件から万引き事件など幅広く傍聴している。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行なっている。
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