今回の裁判では、被害者とその母親が事件について証言をした。
異例の「ビデオリンク方式」の全容
午後からは、検察側が有罪立証のために請求した、被害者のAさん(20代)の証人尋問が行われた。Aさんの証人尋問では、本人が法廷に現れることはなく、別室から映像と音声で証言をする「ビデオリンク方式」が採用された。Aさんが証言する映像は、法曹三者の目の前に設置された小型モニターに映し出された。証人尋問はAさんの体調に配慮して、休廷を2回挟みながら約3時間をかけて行われた。傍聴人は音声しか聞くことができなかったが、その証言内容は検察側の見解を裏付けるものばかりだった……。
第一印象は「すごく気さくな方だなと…」
まずは、Aさんと斉藤被告が出会うことになった経緯を整理する。事件当日、Aさんはテレビ番組のロケに出演者として参加していた。この撮影では、新宿区内の複数の店舗を回ることからロケバスが2台用意されていた。スタッフ用のバスと、斉藤被告とAさんが同乗する出演者用のものがあり、この車中で事件が起きたとされる。
裁判でAさんは、ロケバスの車内で斉藤被告と初めて対面したときの印象について問われると、「私のような相手にも話しかけてくれる、すごく気さくな方だなと思っていました」と語っていた。
車内で突如始まった性的接触…「初対面での異常行動」の詳細
斉藤被告とAさんらは、1店舗目でロケをこなすと2店舗目に移動するため、ロケバスに乗り込んだ。車内では、Aさんの一つ後方の席に斉藤被告が座っており、スキンケアの話などの雑談をしていた。その会話には事件の片鱗がうかがえるものもあった。「(斉藤被告から)『もう本当にかわいいね。モテるでしょ』とか、『芸人と飲んだことある?』と質問されました」(Aさんの証人尋問から・以下同)
直後、スキンケアの話の流れからか、斉藤被告は左手でAさんの両頬を掴んだ。一度、斉藤被告は手を離したが、再びAさんの両頬を掴むとキスをしてきたという。
「本当に驚きました。初対面でまだ朝で、斉藤が妻子持ちであることは知っていたので……。仕事中のロケバスでキスをしてくるなんて、この人異常じゃないかと思ってすごく怖くなりました」
犯行後、斉藤被告はAさんに「つい可愛くてさ、ごめんね」と謝罪。Aさんは咎めるように過去の「斉藤被告のスキャンダル」にまつわる雑談をした。だが、犯行は継続されたという。
「さらに斉藤からディープキスをされて胸を触られました」
斉藤被告はAさんの服の上から右胸を触った後、その服の中に手を入れ込むと下着を外して胸を揉みはじめたというのだ。
これらの【第1】の犯行について、斉藤被告側は「Aさんは同意していたと思っており、犯行も胸に手を当てただけ」と主張。対するAさんは、次のように性的行為に同意しない姿勢を見せたと証言していた。
「唇や歯で(斉藤被告の)舌が侵入してこないようにしたんですが、それでも舌がねじ込まれてしまいました」
この犯行を裏付けるように、Aさんは知人や母親などにLINEで性被害を訴えたメッセージを送っており、検察側が証拠として提出している。
「その口調は腹立たしくて屈辱的でした…」Aさんの悲痛な叫び
ただ、Aさんは性被害を番組スタッフに相談すると「撮影を中断することになる」と考えて、平常を装って3店舗目に向かうため、再びロケバスに乗り込んでしまった。
Aさんによると、起訴内容の【第2】の犯行が起きたのは、3店舗目の付近の路上にロケバスが停車したときのことだという。
「ロケバスの車内で私が少し後ろを振り向くように斉藤と雑談をしていたら、斉藤が身を乗り出すようにディープキスをしてきました」
この時の被害について、Aさんは「突然のことだったので身体が硬直してしまった」と振り返りつつも、斉藤被告の肩を押して抵抗はしたと証言。すると、斉藤被告は照れるような口調でこう言ってきたという。
「『可愛くて、俺ってダメだね』と言ってきました。その口調は腹立たしくて屈辱的でした……」
なお、Aさんが【第2】の犯行の存在を述べた一方で、斉藤被告側は「犯行はなかった」と全面的に否認している。
起訴罪名の中で法定刑が最も重い「不同意性交」の罪
その後、3店舗目の撮影をこなし、最後となる4店舗目のロケも終わった。Aさんは、4店舗目の撮影を終えるとスタッフからこのように指示されたと振り返る。「ピンマイクを外すためにロケバスで待機するように言われました」
そのロケバスの車内では、斉藤被告が先に乗り込んで着替えをしていたのだ。「私なんかが勝手な行動をすると迷惑がかかる」と思ったAさんは、スタッフの指示に従ってロケバスに戻った。すると、車内で斉藤被告から「今日はこんな可愛い人に出会えて幸せだった」と伝えられたという。
その直後、起訴内容の【第3】の犯行である「口腔性交」が行われたとのことだ。
Aさんは驚きながらも、体を使って強く抵抗。だが、抵抗も虚しく1分程度にわたる「口腔性交」が行われてしまった。
犯行後も続いた斉藤被告の「理解し難い振る舞い」
「『また連絡してね』と言われディープキスをされました」
Aさんは「やっと終わる」と思ったかもしれない。しかし、斉藤被告は来た道を引き返すようにロケバスに戻ってきたのだ。
「一度出て行った斉藤が戻ってきました。私もバスから降りました。2人きりになったら何をされるかわからないからです」
なお、斉藤被告は【第3】の行為に及んだことは認めているが、「Aさんの同意があったと思っていた」と否認している。
PTSDを発症して生活が一変
Aさんは斉藤被告から「連絡先を交換したい」と言い寄られたため、電話番号を交換してしまった。ロケ終了後も、斉藤被告から数回にわたって連絡があったと話す。これらの連絡を無視すると「怒るかもしれない」と思い、Aさんは数回にわたって返信していたと話した。つづけてAさんは、事件後の精神状態について証言。事件を受けて、Aさんの生活は一変してしまったというのだ。
「PTSD(心的外傷後ストレス症)を発症しました。日常的に(事件が)フラッシュバックしたり、関連する物や道に近づけなくなりました」
加えて仕事にも大きな支障となったと話す。
「テレビの仕事がなくなりました。いわゆる出演者のブラックリストに私が載っているとのことでした」
2500万円提示の示談を拒否した被害者の“揺るがぬ決断”
その示談の内容は「2,500万円」の示談金と引き換えに、①刑罰を求めないこと、②斉藤被告の芸能活動の再開を認めること、の2点だった。だが、そんな高額な示談金を目の前にしても、Aさんの意志は固かった。
「やはり初公判の態度であったり、反省していないことと罪を認めていない態度から示談は受け入れられません。自分の罪を認めてしっかり反省して、もう二度とこのようなことをしないように求めます」
「実刑を求めます」法廷に響いた被害者の強い意思
そして検察側から「被告人にどんな判決を求めるか」と問われると、このように答えた。「厳しい処罰を求めます。実刑を求めたいと思います」
傍聴席からはAさんが証言する声だけが聞こえたが、前半のハッキリとした口調から一変、犯行時の質問になると徐々に小声になったことが印象的だった。
Aさんの赤裸々な証言に、斉藤被告は終始表情を変えることはなかったが、今後の裁判に備えるためか、何度も手元の用紙にメモを取っていた。そして退廷する際、斉藤被告は裁判官に向かって浅く一礼すると、ドアの奥に消えていった——。
文/学生傍聴人
【学生傍聴人】
傍聴歴7年、傍聴総数1000件超。 都内某私立大の大学院に在籍中の現役大学院生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴をはじめ、有名事件から万引き事件など幅広く傍聴している。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行なっている。
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