『僕が親ならこう育てるね』は、ショート動画でもお馴染みの「おしゃべりひろゆきメーカー」(株式会社CoeFont)を元に作成された。
『憤怒と祈りで建国だ』は、株式会社Stand Technologiesが作成。AIが副音声で番組の内容を解説する「解説放送」の音声制作や、災害時に最新情報を多言語に翻訳して発信するシステムのAI音声制作など、さまざまな分野でAI動画・音声利用に注力している企業だ。
『憤怒と祈りで建国だ』のAI本人オーディオブック制作を担当した、株式会社Stand Technologiesの梶原彩菜さんに、完成までの過程について、お話を伺った。
声質だけでなく、話し方の癖までも再現可能
「著者本人の声によるオーディオブック化を望む声は多くあるものの、長時間にわたる収録のスケジュール調整の難しさや、朗読には一定の技術が求められることなどから、高いハードルがありました。今回、AI音声技術を活用することで、著者本人の稼働を最小限に抑えながら、著者の声によるオーディオブック制作を実現。青山先生には、『憤怒と祈りで建国だ』の前半部分を1時間ほど朗読していただいたのですが、一定のテンポや間の取り方で朗読してくださったので、AI音声モデルの再現度も高くなったと思います」学習用の音声データの量や質にもよるが、AI音声モデルはわずか数日で作成できるのだそう。
「これまでに弊社で制作してきたAI本人オーディオブックは、プロのナレーターの朗読をAI技術で他の著名人の声に変換していました。今回は新たな取り組みとして、AI音声モデルにテキストを読み込ませ、音声データを出力しています。この作り方だと、ご本人の声質だけでなく、話し方の癖やイントネーションまで再現できますね」
こうして出力された音声データを確認し、ひとつひとつ調整していくのだという。
「自然なアクセントになるように、オーディオブック本編の5倍以上の時間にわたって、音源を繰り返し聴きました。やっぱり、最後は人の手で調整することが大切なんです」
「当たり前に使われる時代」へ。オーディオブック市場の新たなフェーズ
世界的に年平均20%から25%という高い成長率を維持しているオーディオブック市場。日本でもその規模は拡大し続けているが、2004年のオトバンク創業以降、市場はいくつかのフェーズを経てきたのだそう。
「2006年頃から地道に関係者の認知度を高めていった第一期。2015年以降の各社オーディオブック市場への参入や2018年のaudiobook.jp聞き放題サービス開始によって、利用者が拡大した第二期。そしてコロナ禍を経て、オーディオブックは”知る人ぞ知るもの”から、”誰もがなんとなく聞いたことがあるもの”へと移行しました」
そして今、「市場は新たなフェーズへと突入している」と、久保田さんは語る。
「すなわち、”オーディオブックが当たり前に使われる時代”になりつつあります。例えば、企業の人材育成や、図書館での導入が進んでいるほか、病院や介護施設、老人ホームなどからも利用の問い合わせが来るようになり、さまざまな場所で活用される機会が増えているんです」
時間や身体の制約を超え、より多くの人に知のインプットを
時代と共に、オーディオブックのユーザー層も大きく変化。コロナ禍以前はビジネスパーソンが主なユーザーだったが、現在は子育て世代や目の不自由なシニア層の利用も爆発的に増えているのだという。「育児中は子どもの誤嚥などを防ぐために、”目は離せないが、耳は空いている”という時間が非常に多いという意見を聞きます。その時間を活用してインプットができるオーディオブックは、子育て世代の方々から熱い支持をいただいているんです。また、シニア層の利用拡大は、コロナ禍のウォーキングの習慣化が後押ししました。“オーディオブックで長編小説を聴くようになってから、健康のために仕方なく始めたウォーキングが、毎日の楽しみの時間に変わった”というお便りをいただいたこともあります」
ユーザーの願いを叶える、AI×オーディオブックの未来
では、AI本人オーディオブックには、どのような可能性があるのか。久保田さんは次のように語ってくれた。「著者の声をAIで再現することで、”本人の声で聴きたい”というファンの想いと、聞きとりやすさ、この2つが両立できていると思います。これは、質を担保しながらユーザーの望む形をテクノロジーで実現するという、理想的なAIの活用法だと思いますね」
今回配信される2作品は、audiobook.jpの聴き放題プランでも楽しむことができる。“読書は紙派”の方々も、この機会にAI本人オーディオブックを体験してもらいたい。
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