自動販売機を取り巻く環境が大きく変化しています。物価高で購入者が減少したうえ、電気代や人件費が上がったことにより、維持するコストも高騰しているのです。
キャッシュレス対応には10万円程度の改修費用が必要で、出費ばかりが目立つようになりました。
 自動販売機は高値で売れるため、メーカーにとっては長らくドル箱のような存在でした。それがもはや“お荷物”になりつつあります。

ポッカが事業売却、ダイドーは「2万台の自販機」を撤去…「マイ...の画像はこちら >>

自動販売機事業を売却するポッカ

 ポッカサッポロフード&ビバレッジは、3月5日に自動販売機事業をライフドリンクカンパニーに売却することを決定しました。自動販売機の台数は約4万台、売上高は96億円。

 ポッカはレモン食品やレモン飲料に強みを持っており、2025年度のレモンセグメントの売上高は6.0%増加した一方、レモン以外の飲料は20.2%も減少していました。

 親会社のサッポロホールディングスは、国内食品飲料のコスト構造改革を実施中。レモンに経営資源を集中し、収益力を高める計画を進めていました。自動販売機事業の売却はその一環です。

ダイドーは「2万台の自販機」を撤去する?

 自販機で苦戦しているのはポッカだけではありません。

 コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスは2025年度に507億円もの最終赤字となりました。これは、自動販売機事業を主因とした904億円の減損損失を計上したため。減損損失とは、資産価値が投資額に見合わないと判断された際の会計処理のことです。自動販売機事業が以前のように稼げなくなったことを物語っています。


「お~いお茶」の伊藤園も自動販売機事業で140億円の減損損失を計上しました。2025年5月~2026年1月は8800万円の赤字。伊藤園がこの期間で最終赤字になったのはこれが初めて。伊藤園は自動販売機ビジネスを自前で運営することにこだわっていましたが、2026年5月に子会社に移すことを決定しています。従来のビジネスが成り立たないことを示しました。

 ダイドーグループホールディングスは、2025年度が303億円の最終赤字でした。2024年度は38億円の黒字。ダイドーの主力の販売チャネルは自動販売機で、国内飲料売上全体のおよそ9割を占めています。その自販機の売上が2.5%減少しました。

 ダイドーは全国に展開する27万台の自販機のうち、2万台を撤去する計画を打ち出しています。

“マイボトル時代”に突入か

自販機離れに拍車をかけているのが、消費者の節約志向とマイボトルの急速な普及。味の素AGFが1万人を対象に行った調査(「マイボトルに関する生活者飲用実態・意識調査から読み解く」)によれば、マイボトルの家庭内保有率は70%に達し、その半数以上が「ほとんど毎日」使用しています。

 なお、マイボトルの保有率は、日本宅配水&サーバー協会の調査「水分補給に関するアンケート結果」でも72.0%。
マイボトルや水筒が日常生活に欠かせないものになっていることが分かります。

 味の素AGFはマイボトル専用のパウダードリンクを開発。2024年3月にマイボトルスティックシリーズの発売を開始しています。

 これまで、粉末飲料はインスタントコーヒーやスポーツドリンクが主流。最近ではフィットネスブームで、プロテイン飲料の需要が伸びていました。しかし、ペットボトル飲料の普及が著しかったお茶については、市場開拓が進んでいませんでした。

 節約志向の高まりでマイボトルの普及が進むと、商品ラインナップの拡充が急速に進む可能性があります。食品メーカーにとってはビジネスチャンスが生まれる一方、ペットボトルの飲料を販売するナショナルブランドにとっては需要縮小にもなりかねません。

棚の取り合いが激しさを増す

 飲料の主戦場は自動販売機からドラッグストアやスーパーマーケット、コンビニエンスストアへと移行しています。ナショナルブランドの脅威となっているのが、小売店のプライベートブランドです。

 ドラッグストア最大手のウエルシアはツルハホールディングスと経営統合を果たしました。これにより、5600店舗を超える巨大小売チェーンが誕生しました。親会社はイオンであり、プライベートブランドのトップバリュはいっきに販売網を拡大したことになります。


 トップバリュの公式ホームページによると、ウエルシアで販売している「国産茶葉使用緑茶(ウエルシア専用)」の本体価格は、2000mlペットボトルで税込138円。価格において、ナショナルブランドはとても太刀打ちできません。

 プライベートブランドは、イオン以外でも各スーパーやディスカウントストア、コンビニ大手が開発に力を入れています。競争は激しさを増しています。今後、仮にナショナルブランドが小売店へのリベートに頼って販売数を確保しようとすれば、中長期的には利益が削られる結果にもなるでしょう。

「低価格」を打ち出し、生き残りを図る

 独自に低価格飲料を製造販売するメーカーも勢いづいてきました。ポッカから自動販売機事業を買収したライフドリンクカンパニーです。

 この会社は商品カテゴリを水と炭酸飲料、お茶に集中し、「LDC お茶屋さんの緑茶」などの商品を低価格で販売しています。販売数量は右肩上がりで伸びており、2026年3月期は8400万ケースで、前期比で15%伸びる見込み。商品数を絞り込んで安く売るという新たなブランドが台頭しているのです。

 インフレの長期化により、これまでのビジネス構造は破壊されました。低価格と高付加価値の二極化が進む中で、各メーカーが生き残り策を模索しています。


<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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