幼少期から英語、モダンバレエ、ピアノ、茶道などの英才教育を受けてきたお嬢様だが、実は好奇心も旺盛。
なにかと生きにくいこの時代をサバイヴするヒントを、音無鈴さんに教えてもらった。
恋愛を装って迫るマルチ勧誘のリアル
音無:最初はプロテインやサプリメントなど、1万円ぐらいで買えるものは効き目がいいよって勧めてきたんです。そこから化粧品などの金額が高いものを勧められて、最終的に空気清浄機と、お風呂に設置して水を浄化させ、綺麗な水に入れるという、30万円ぐらいする商品まで勧められたんですよ。
――だんだん高価なものを勧めてくるところが巧妙です。
音無:でも、私は19歳だったので、お金もなくて買いませんでした。
――そもそも、どこで知り合ったんですか?
音無:マッチングアプリです。
――何歳ぐらいの方でしたか?
音無:30歳ぐらいで、飲食店でキッチンを担当していた人でした。マルチは副業だったんでしょうね。2、3回デートをして、私の家にも来る仲になり、付き合おうってなったんです。その頃、いろいろとお金を使うことが多くて、バイトをいくつか掛け持ちしていた私に「いいバイトがあるよ」って勧めてきたんですよ。
――かなり早い時期に勧めてくるんですね。
音無:でも、最初は全然匂わせていなくて、恋愛感情を持たせてから「この人のために尽くしたい」みたいな心理を狙ってくるんだと思うんです。最初は「君のために大事な人を紹介する」って、さらっと言うんです。そう言われると「彼にとって大事な人を私に紹介してくれるんだ。どんな人なんだろう?」って興味を抱くじゃないですか。
――そう言われると、誰しも会いたくなります。
音無:そこから「その人はこういうものを売ってお金を稼いでいて、すごくいい人脈を築けるよ」って言われて、マルチとは言わないんですけど「ここに入会すると、商品を売ってお金が稼げるよ」って誘うんです。しかも「君のために言ってるんだよ」って特別感も醸し出すんです。
――若い人は特別感に弱いですからね。
音無:それに私は当時、年頃の大学生だし、肌荒れを気にしていたので、プロテインやサプリメントを勧めてくるんです。プロテインは無添加で1箱8000円ぐらいするし、サプリメントも1袋8000円ぐらいで3種類あるんです。サプリメントを朝昼晩飲んで、プロテインも味噌汁に入れたりすると、肌が綺麗になるよって言われたんです。
――実際に効果はあったんですか?
音無:私はあまり効果を感じなかったんです。最初は気持ち的に健康なものを摂っている意識はあったんですけど、1、2ヶ月しても、肌は別に変わりませんでした(笑)。何らかの健康成分は入っているとパンフレットに書いてあるんですけど、普通に市販のサプリメントで事足りるので、こんなに高いお金を払う必要があるのかなとは思ってました。
――どのぐらいお金を使ったんですか?
音無:最初、プロテインとサプリメントは1ヶ月ずつ買って、その後、化粧水、乳液、ブースターと3種類ぐらい化粧品も買ったんですよ。多分10万円ぐらいは使ったんじゃないかな。それに、私は19歳だったので、まだ会員にはなれなくて、彼の名義で商品を買っていたから、彼にお金が入る仕組みだったんです。
――なるほど。
音無:そのうち「俺の大事な人が出演する実演販売があるので、お前も来てほしい」って言われて行ったら、会員の方が集められていたんです。偏見かもしれないけど、いかにもマルチをやっていそうな人が登壇して「今日は、市販の洗剤と我々が販売している洗剤の洗浄力を比べます」って実演販売をしたんです。
違和感だらけの実演販売の現場
――不謹慎かもしれないけど、かなり貴重な場所にいましたね。音無:でも、私は小学生のときに習った「実験をするときは、条件を絶対に一緒にしないとならない」って言葉を覚えていたので、おかしいなって思ったんです。
――どう条件が違ったんですか?
音無:市販の洗剤は水を使わずに使用して、勧めている洗剤は水を使って溶かして使っていたんです。そんな条件で使えば、市販の洗剤が圧倒的に汚れを落とせないじゃないですか。
――怖いですね。
音無:それを見た私は疑問に思ったから「条件が一緒じゃないので、結果に差が出るのは当たり前じゃないですか」って言ったんです。
――勇気がありますね。
音無:そうしたら、会場全体が「シーン……」ってなっちゃったんです。そこで彼から外に連れ出されて「俺の大事な人に恥をかかせるんじゃねえ」って言われて、そこで別れました。だから、知識があれば騙されないけど、知らないと騙されちゃうんだなって思いました。
――別れて正解ですよ。空気清浄機や水の浄化装置は買いませんでしたか?
音無:彼の大事な人の家にも連れていかれたこともあり、プロジェクターがある販売専用の部屋があったんです。そこでパンフレットを出されたんですけど、段階があって、まずは金額的にも買いやすいものから買わせて、次に化粧品、次に家具やキッチン用品、最終的に空気清浄機やお風呂の浄化装置を売るんです。そのときに「これは某芸能人も使っていて、うちにも今2台置いてあるんです。これを使うと眠りも変わるし、体の内面や栄養も変わるので、最終的には買ってほしい」ってセールスするんです。
――具体的な話をするんですね。
音無:そこで、私は「何が違うんですか?」って聞くタイプなんですよ。そうしたら資料やデータを出してくるんです。それを聞くと会員しか買えないレア感もあって、ちょっと魅力的に思っちゃうんです。今思えば、騙されなくてよかったです。
――密室、特別感、レア感などマルチの常套手段が揃ってますね。出会いはマッチングアプリでしたが、最初どんな文言がマッチングアプリに書いてあるんですか?
音無:「肉体関係ではなくて、誠実な出会いを探しています」みたいな感じでした。会ってみたら、見た目も30歳に見えないぐらい若い感じで、清潔感もあったし、話しやすかったんです。でも、今思えばその話しやすさが、マルチで慣れていたんだなって思います。
――どういう見た目だったんですか?
音無:髪型のセット、肌の質感や香り、洋服のシワもちゃんと綺麗にしていて、しかも飲食店のキッチン担当なので、ご飯も作れるんです。完璧とまではいかないけれど魅力的な人だったんです。
――そういった雰囲気もマルチのためなんでしょうね。口説き方や振る舞いもスマートでしたか?
音無:聞き上手なんですよ。私の悩みも「大変だったね」「どうしたらいいか、一緒に考えてみよう」って、私との共同作業感を出すんです。
――共同作業は女性が弱いですからね。
音無:私はやっていないんですけど、もし私が知人を紹介していたら、最終的にはその人の収入になるじゃないですか。それをうまく「一緒にやろうよ!」って言いくるめてくるんです。あとプロテインやサプリメントの効果を、次に会ったときに「可愛くなったね」「肌がきれいだよ」って褒めてくるんです。
――慣れていますねえ。
音無:19歳なので、どんどん勘違いしていったけど、高価だし、実演販売のこともあったし「あれは嘘だった」って気が付けて良かったです。
――ちなみにあちらの方も上手なんですか?
音無:上手でしたね。私は経験人数が多い方じゃなかったから、それこそ色々とやり方を教えてくれるんですよ。でも、年頃の女性を狙っているので、連絡先には女の子の名前がめちゃめちゃあったんです。
――実演販売のときに「王様は裸だ!」と言えてよかったですね。
音無:危機感を感じましたし、逆に周りはどうして気が付かないんだろうって思いました。もしかしたら、私だけ知らなかったかもしれないけど、一か八か突っ込んだら、めちゃめちゃ濁されたので、これは黒だって確信したんです。
――その後、彼はパッと消えたんですか?
音無:ちょこちょこ連絡はしてきてたんですけど、私がネットで調べて「あなたのやっていることは、こういうことですよね。調べてもいい評判がないし、お金を使ったけど肌も綺麗になってない」って言い、連絡先もすぐにブロックして削除しました。
「マルチ」「いただき女子」勧誘にハマりやすい人の共通点
音無:寂しがり屋で暇な人です。あと、「何かしてあげたい!」という世話好きな人は、マルチなどに引っかかっちゃうタイプかもしれないです。
――それに似た話で、中高年男性が若い女性に恋愛感情を抱き、犯罪に走るケースがあります。逆に「いただき女子」に手玉に取られて、多額の借金を抱える人もいます。
音無:はい、はい。実は大学で「パパ活女子と男に貢ぐ女性の心理」という論文を書いたんですよ。
――インテリジェンスですね。
音無:いただき女子にハマらないようにするには、男性の人間関係、家族関係が重要なんです。
――どういうことですか?
音無:お金を払って肉体関係を持っていいという思考は、罪悪感を抱くから、普通の人は浮かばないんですよ。でも、買春を良しとして、なおかつ経験したことがある男性は、家族との情緒的な絆が不足していたり、ぬくもりを求めている人なんです。性欲ももちろん関係しているけど、心理的側面の方が大きいんですよ。そういう人がパパ活にハマりやすいんです。それに男女平等の意識があまりない人は、買春をすることに対しての抵抗感があまりないんですよ。
――「女性=お金」の考えになるんですね。
音無:奥さんや娘さんとの関係がうまくいってない、独り身で寂しい、日常がちょっと満たされてない人って多いと思うんです。そういう中で「暇だし、ちょっとパパ活でもしてみようかな」みたいな感じで流れていくケースも結構あるんです。だから、仲間と一緒にできる趣味、スポーツを見つけたり、何か一つでも自信を持てるものがあるといいと思うんですけど、今の時代ってなかなか難しいですよね。
パパ活女子に騙されないために必要な視点
――逆に、パパ活女子に引っかからないようにするには、どうすればいいんですか?音無:引っかかる男性は多分優しい人が多いんだと思います。パパ活する男性の中にも、女性を下に見てるタイプと、本当に好きになってしまい、助けになりたいっていうタイプがいるんですよ。多分、助けになりたいと思っちゃうタイプが騙されちゃうんです。だから、身内の訃報や病気を口にする女性は基本的に疑った方がいいです。やっぱり恋愛的な感情はパパ活からは生まれないことを知った方がいいです。
――確かに。50代以上の男性が20代の若い女性と付き合ったり、結婚を持ちかけられたりすることなんて、ほとんどないですからね。
音無:逆に男性が20代だったときに、50代の女性と付き合えますかってことを考えてほしいです。
――男女に限らず、パパ活をしているような人は、どうすれば日常が満たされるんでしょうか?
音無:私がマルチに関わらずに済んだのは、「おひとり様」にハマって、映画、焼肉、カラオケ、ピクニックと一人で行けるようになって、楽しめるようになったからなんです。
――ピクニックまで(笑)。
音無:友達や彼氏がいなくても楽しめるし、アダルト業界に入ったのも、実は友達がいないからなんですよ。友達や彼氏がいなければ、別に身バレしてもいいやって思えるじゃないですか。
――前向きだ。
音無:私は女性だから「おひとり様」も平気でしたけど、男性は性欲が関わってきますよね……。
――最終的にはそこに辿り着く人が多く見られます。
音無:そういう人はパパ活はするけど、お店には行かないんです。
――そこは妙に純愛で潔癖なんですよ。
意外すぎるセクシー女優デビューのきっかけ
音無:マッチングアプリをたまにやっていたんですけど、出会った人の中にシチュエーションプレイがめちゃめちゃ好きな人がいたんです。私が新入社員役で、相手は上司役とか。そのうちに上司と社長とか一人二役をやり始めたので、ちょっと驚いたんですけど、私がうまく機転を利かせて、相手に合わせたんです。そうしたらプレイ後に講評シートを取り出して、演技や対応力などを講評し始めたんです。
――ある意味ハードなプレイですね(笑)。
音無:プレイ中はタガが外れていて理性がなくなっているし、没頭できるし、私は演技に向いているのかなと思ったのがきっかけなんです。普通の仕事をしていてもハリがないし、承認欲求も強いし、セクシー女優が合っているなと思い、辿り着いたんです。
――デビュー時には「上流階級の家系」と謳っていましたが、高偏差値の大学なんですよね?
音無:親の教育方針が、自分が敷いたレールに乗ってほしいって感じの人だったから厳しかったです。いわゆる減点方式で、テストで98点を取ると、その2点のミスを責めるんです。母に勉強を教えてもらったときも、めちゃめちゃヒステリックだったんです。私がわからないところがあると、結構叩かれたりしたこともあります。
――それは厳しい。
音無:中高も一貫校で、高校も難関大学受験コースだったんです。
――そういう私立の難関大学だとスクールカーストがありそうです。
音無:はい、はい、はい。ありました。それも大学の論文で書きました。
――聞きたい話題をことごとく研究していたんですね(笑)。どういった論文ですか?
音無:どうして「いただき女子」ができるのかを研究したんです。「いただき女子」って、実は貧困層がやっているわけではないんですよ。私立のお嬢様学校に通う、一般家庭の女の子がやっていることが多いんです。
――意外ですね。
音無:というのも、私立のお嬢様学校はお金持ちの子が多いじゃないですか。でもスクールカーストがあって、生活水準はちょっと上だけど、本物のお金持ちの家庭からしたら下位になる家庭の子も、ごちゃ混ぜに入学してくるんです。
――なるほど。私立のお嬢様学校に通う「富裕層の女の子」ではなくて、私立のお嬢様学校に通う「一般家庭の女の子」ですね。
音無:そうなんです。そこでお嬢様学校に入ると、お金持ちの子はハイブランドのバッグや洋服を身に着けているので、金銭感覚がめちゃくちゃ違うことに気が付くんです。バイトでやっと10万円稼ぐなかで、親から50万円ぐらいお小遣いをもらっている子が一緒にいるから「うわ~!」ってなっちゃうんです。そこで「私はパパ活をやって、ハイブランドのバッグや洋服がほしい」ってなるんですよ。
――普通の学校なら水準が同じですけど、お嬢様学校だと露骨にスクールカーストが出てくるんですね。
音無:私の周りにもパパ活をやっている子がいました。しかも、ちゃんと受験をして入学した子はプライドが高いんです。
――頭はいいけど、一般家庭という。
音無:でも、この業界は平等ですよね。世間から見たら異色の職業じゃないですか。SNSでもすぐに叩かれますし。差別はいけないですけど、区別される職業だからこそ団結感があると思います。
――それは納得します。
音無:言い方は悪いけど、異端者の集まりみたいな感じだから、みんなで助け合っていこうという気持ちが、女優や業界関係者にすごくありますよね。頑張ったら褒めてくれるし、頑張ればチャンスが与えられるから、居心地がすごくいいです。それに、区別される側の人間なんだって自覚しているので、SNSで発信する内容もちゃんと考えないといけないなって思っています。
――そういう意味でもセクシー女優になってよかったですか?
音無:セクシー女優になってよかったですし、毎日が楽しいですね。
【音無鈴】
X:@osuzu_chan1022
Instagram:@osuzu_chan1022
<取材・文・撮影/神楽坂文人(X:@kagurazakabunji)>
【神楽坂文人】
世界一セクシー女優を取材しているカメラマン、ライター、インタビュアー。元成人誌編集者のため、最後の砦として活躍中。年間イベント取材数300本超え! 年間インタビュー数200本超え! バイクで都内を駆け巡り1日で複数の仕事を受けている。X(旧Twitter):@kagurazakabunji
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