「努力しているのに結果が出ない」「何を選べばいいのかわからない」「頑張っているのに、なぜか空回りする」――そんな悩みの原因を、実業家・作家の権藤優希氏は、能力不足やスキル不足ではなく、その人の内側にある“OS(オペレーティングシステム)”にあると説く。権藤優希氏の新刊『人生のOS』で語られるのは、目の前のノウハウやテクニックといった仕事の方法論ではなく、人生そのものを支えている思考や価値観、行動習慣の土台だ。
人は何によって動き、どこで迷い、どうすれば前に進めるのか。権藤氏に聞いた。

「人生のOS」とは、人生を無意識に動かしている“見えない土台”

――まず、この本でいう「人生のOS」とは何でしょうか。

ひと言でいえば、その人の人生を無意識のうちに動かしている「思考」「価値観」「行動習慣」の土台です。パソコンやスマートフォンがOSによって動くように、人にもまた、日々の判断や選択を支える見えない設計図がある。私はそれを「人生のOS」と呼んでいます。何を大切にするのか。何を基準に決めるのか。誰のために動くのか。そうした根本の部分は、その人の仕事の仕方にも、人間関係にも、生き方にも表れてきます。本書で伝えたかったのは、人生の成否を分ける決定的な差は表面的なスキルではなく、その人がどんなOSで生きているかだ、ということです。

スキルは“アプリ”。OSが整わなければ人生は噛み合わない

――多くの人は、うまくいかないと「もっと勉強しなきゃ」「スキルが足りない」と考えます。


そうですね。でも私は、何万人もの人と向き合ってきて、成果を決めるのはスキルではないと強く感じています。知識や技術はもちろん必要です。ただ、それはあくまでアプリのようなものです。どれだけ便利なアプリを増やしても、OSが不安定なら動作は重くなる。人生も同じで、OSと行動、努力、スキルが噛み合っていなければ、頑張るほど苦しくなることがあるんです。逆に、自分のOSを自覚して行動している人は、環境が変わっても適応できるし、時代が変わっても立て直せる。本書の中でも、これからの時代に必要なのは、外側のスキルよりも、内側の答えのない問いに向き合う力だと書きました。OSを自覚し、更新していくことこそが、生き抜く鍵になると思っています。

「向いていない」と思った営業で、トップセールスになるまで

――こうした考え方の背景には、ご自身の経験もあるのでしょうか。

大きくあります。私はNECで営業として働き始めましたが、当初はまったく向いていませんでした。話もうまくないし、知識も足りず、上司から「明日から同行しなくていい」と言われたこともあります。
でも、そこで「才能がない」で終わらせず、「自分にできることは何か」と考え直しました。そこでたどり着いたのが、「話すより聞く」という姿勢です。8割聞いて2割話す。相手の言葉をよく聞き、本当に困っていることをつかむことに徹した結果、営業の質が変わり、数字も伸びていきました。その結果、入社3年目には埼玉県警、千葉県警、神奈川県警を同時に担当し、Sランク事業部で過去最高水準の売り上げを記録、トップセールスになることができました。特別な才能があったわけではなく、「人に喜ばれる仕事をする」という軸を持てたことが大きかったと思います。

「人に喜んでもらう」が、自分のOSだった

――その経験が、この本の核につながっているのですね。

当時はまだ「人生のOS」という言葉では捉えていませんでした。でも振り返ると、自分の中でずっと動いていた軸は、「人に喜ばれる仕事をする」ということだったんです。どんなに数字を追う日々の中でも、目の前のお客様の笑顔をゴールにしていた。それが自分のエネルギー源でした。OSというのは、最初から立派な言葉で定義されているものではありません。うまくいった経験や、本気で向き合った時間の中から、あとになって輪郭が見えてくるものなんです。


人生を動かす五つのOS

――本書では、人生を動かすOSを五つに整理しています。

まず土台になるのは、「自分に正直になる」ことです。ここでいう正直さは、単に現実を冷静に見ることではなく、「本当はどうしたいのか」という自分の声に誠実であることです。他人の期待や社会の正解を優先しすぎると、人は少しずつ自分の本音を見失ってしまう。だからこそ、まずは自分の内側にある声を聞くことが出発点になります。そのうえで大切なのが、「ワクワクするほうを選ぶ」ことです。ワクワクというと軽く聞こえるかもしれませんが、人は心が動く方向にしか、本当の力を注げません。理屈では正しく見えても、気持ちがまったく動かない道は長く続かない。一方で、少し怖くても惹かれるものがあるなら、そこに自分の可能性があることが多いのです。

ただし、心が動く道にはたいてい不安も伴います。だから三つ目として、「より困難なほうを選ぶ」ことが必要になります。これは無理をするという意味ではなく、不安があるからやめる、という癖に支配されないことです。人生を変える局面は、多くの場合、少し怖い。
だから不安をなくすことより、不安を抱えながらも進める自分になることが大切なのだと思います。そして、その挑戦を独りよがりなものにしないためにあるのが、「誰かに喜んでもらう」というOSです。これは単に“いい人でいる”ことではなく、相手にとって本当に意味のあることは何かを考え、その喜びや成果に貢献しようとする姿勢です。自分が評価されることを目的にするより、誰かのために動くほうが、結果として自分の力も引き出されていきます。

最後に、それらを現実に変えるのが、「決めて、行動して、結果にする」ことです。どれだけ良い考え方があっても、決めなければ人生は動きません。行動しなければ何も始まらず、途中でやめれば結果にはつながらない。人生は思考だけでは変わらず、最後は行動によってしか変わらない。だからこそ、この五つは別々の教えではなく、人生を前に進める一つの流れとしてつながっているのです。

一つでも軸が見つかれば、人生は動き始める

――五つ全部を、最初から備える必要はないとも書かれていますね。

それはとても大切なことです。OSは五つ全部をフル装備しなければいけないわけではありません。本書でも、「このなかのたった一つでも、これなら大切にできそうだと思えるものがあればそれで十分」と書きました。
一つのOSが定まると、他のOSもあとから自然に育っていく。一つの軸が、ほかの要素を連れてくるんです。だから、最初から完璧を目指さなくていい。まず一つ、自分が本当に大切にしたいものを選ぶことです。

何者かになることではなく、本来の自分に戻ること

――本書では、OSを整える実践法にも触れています。

OSを整えるというのは、何者かになることではありません。本来の自分に戻ることだと思っています。うまくいかないとき、立ち止まったとき、迷ったときに、「自分は何を大切にしたいのか」を思い出す。そのためには、短くてもいいから毎日触れることが大事です。OSは、軽く、短く、毎日触ることで整っていく。そうやって少しずつ、自分の軸を日常に戻していくんです。

人間関係もまた、OSを左右する

――人間関係についての記述も印象的でした。

人生のOSは、一緒にいる人によって大きく影響を受けます。否定的な人に囲まれると、前向きな気持ちも少しずつ削られてしまう。
だから私は、共鳴できる人と付き合うことを大切にしています。挑戦を笑う人とは距離を置き、前に進もうとする人とは深く関わる。それは冷たさではなく、自分のOSを守るために必要なことなんです。

人生は何度でも再起動できる

――この本を通して、もっとも伝えたかったメッセージは何でしょうか。

「人生がうまくいかなかったのは、あなたのせいじゃない」ということです。能力や価値の問題ではなく、OSと行動や努力が噛み合っていなかっただけかもしれない。だから必要なのは、自分を責めることではなく、自分の生き方を見直すことです。迷いや停滞は、自分がダメだという証拠ではなく、OSを点検するタイミングなのだと思います。時代がどう変わっても、最後に残るのは、スキルがある人よりOSを更新し続けられる人だと思っています。人生は一発勝負ではなく、何度でも立て直せるものです。OSは、もうあなたの中にある。だから焦らず、自分の人生を自分の手でつくっていってほしいですね。

【権藤優希】
CIAOグループ創業者。実業家、著者、教育家。東京・大阪を拠点に、飲食・小売・美容・教育を横断する複合事業を展開する。「新しくて、面白くて、イケてる」をコンセプトに、日本のライフスタイルを再定義するブランド群を成長させてきた。飲食事業では、2週間漬け込む自家製レモンサワーが累計20万杯を突破。米粉を使った韓国式「賞味期限1時間ベーグル」は、「カリ・もち・ジュワ」の新食感が話題となり注目を集め、また「食べる健康」にとどまらず、韓国式バレエフィットネス、韓国発ヴィーガンコスメ専門店、アパレルブランド「FASCINO+」などを通じ、「内側と外側から整える健康美」を推奨している。NEC在籍時には、3年でトップセールスを達成。その経験をもとに、セールス、コミュニケーション、習慣形成をテーマとした講演・研修を全国で行う。2025年、有料職業紹介免許を取得し、人材会社を設立。「転職支援ではなく人生支援」を掲げ、10名のエージェントとともに、一人ひとりの「なりたい自分」を実現するキャリアナビゲーションを行っている。実業・出版・教育の3領域から、「人がワクワクする瞬間をデザインする」ことを使命に活動中。著書は6冊。新刊『人生のOS』
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