ベネズエラの優勝で幕を閉じた第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)から、まもなく1週間。メジャーリーグのレギュラーシーズンは日本時間26日に早くも開幕を迎える。

 今季は村上宗隆、岡本和真、今井達也の日本人3選手が新たに海を越えてメジャーに挑戦するが、やはり注目はワールドシリーズ3連覇がかかるドジャースの日本人トリオだろう。

 昨季、4度目となる満票MVPを受賞した大谷翔平はもとより、サイ・ヤング賞投票でナ・リーグ3位に食い込んだ山本由伸もメジャーのエリート投手として存在感を発揮。すでに2年連続の開幕投手も決まっている。

ドジャース日本人トリオの中で問われる“佐々木朗希の真価”

 そんなドジャースに“三本目の矢”として昨季、日本球界から加わったのが佐々木朗希である。

 渡米時の評価は大谷のそれに匹敵するといわれ、ポスティングシステムを使ってロッテからドジャースに移籍。160キロを超える剛速球と鋭く落ちるスプリットは、即メジャーでも通用するとみられていた。
 その証拠に2025年1月にMLB公式サイトが発表したプロスペクト(若手有望株)ランキングで、佐々木は大谷に続く日本人2人目の1位に輝き、「少なくとも2桁勝利には届く」という評価を受けていた。

 ところがふたを開けてみると、まさかの1勝止まり。5月には右肩にインピンジメント症候群を発症し、秋口まで長期の戦線離脱を強いられた。

 シーズン終盤に復帰し、ポストシーズンでは救援投手としてチームに貢献したが、2年目の今季は先発投手として再スタートを切る。指揮官のデーブ・ロバーツ監督はすでに佐々木の開幕ローテーション入りを明言しており、2年目の真価が問われることになる。

 しかし、佐々木はオープン戦でチームやファンを納得させるだけのパフォーマンスを披露したわけではない。むしろ昨季は0.00だったオープン戦での防御率が、今季はなんと13.50に悪化。
投球回数(6回2/3)を大きく上回る9つの四球を与えるなど、昨季からの“ノーコン病”は治癒の見通しが立っていない。

オープン戦で露呈した“ノーコン病”再発の懸念

 改めて直近の登板(日本時間18日)を、データを交えて振り返っておこう。

 WBC決勝の裏で佐々木はロイヤルズ戦に先発し、1回と2回は1人ずつ走者を出すも、無失点で切り抜けていた。ところが3回1死から3連続四球で満塁のピンチを招き降板。50球持たず、49球で一度はベンチに下がった。

 その回は佐々木の後を受けたニック・ロバートソンが2者連続三振でピンチを断ち切り、佐々木に失点は付かなかった。しかし、4回に特別ルールで再びマウンドに上がった佐々木は、1死一塁からオープン戦2本目の被弾で2失点。5回の先頭打者に二塁打を打たれたところでマウンドを降りた。

 結局、この日の佐々木は計3回1/3を投げ、4安打3失点。5つの三振を奪ったものの、四球は4つを数える不安定な内容だった。

直近登板を詳細データで検証する佐々木朗希の現在地

 そんな中、佐々木の投じた“71球”には明るい兆しもあった。

 30球に上ったフォーシームのうち、最速99.3マイル(約159.8キロ)を含む15球が98.0マイル(約157.7キロ)以上を計時。この日の平均97.9マイル(約157.5マイル)は、昨季のレギュラーシーズンにおける自身の平均96.1マイル(約154.6キロ)を大きく上回り、ロッテ時代の姿を彷彿とさせた。

 さらにフォーシームとスプリットに続く“第3の球種”として取り組んでいる「カットボール」も、徐々に佐々木の繊細な指先になじんできているようだ。


新球カットボール導入で広がる投球の幅と課題

 この日は自身が“ジャイロっぽいスライダー”と呼ぶ新球を19球投じた。そのうち半数以上の10球がボールとコールされたが、見逃しストライクが5球、空振りとファウルが1球ずつ、そしてフライアウトと単打が1球ずつという結果だった。

 このカットボールがメジャーで通用する球種となるかどうかは未知数だが、ほぼ縦の変化しかなかった佐々木のレパートリーに横の変化が加わることは、プラスにはなってもマイナスにはならないはず。オープン戦では試投の意味合いも強いのか、カットボールの投球割合がやや多くなっているが、レギュラーシーズンに入れば“隠し味のスパイス”として、全体の10~15%に抑えてくるだろう。

 ただ、そうは言っても佐々木の生命線はやはりフォーシームである。突如、制球を乱すシーンはもはや見慣れた光景になりつつあるが、18日の登板では98マイル以上が半数を占める中、フォーシームに限ればストライク率は64.5%(20/31)に達していた。

防御率13.50でも開幕ローテ入りを決断した首脳陣の思惑

 防御率13.50——。オープン戦の3試合で佐々木が残した防御率を見ても、開幕ローテーション入りを明言したロバーツ監督の判断には否定的な意見が多くなるのは仕方のないところ。それでも指揮官の目には、“第3の球種”と“フォーシームの制球力”の両方に光明が見えているのだろう。

「彼(佐々木)にはまだ証明すべき課題がある。打者を打ち取る安定感や、ストライクを投げ続ける能力などだ。しかし、彼はシーズン開幕から先発の機会を得ることになる。そこからどう展開していくか、様子を見ようと思う」

 ドジャースの情報を発信する米メディア「ドジャース・ネーション」によると、ロバーツ監督はそう語ったという。
オープン戦の成績にかかわらず、佐々木を開幕から先発で起用する方針は予め決まっていたのだろう。

 しかし、オープン戦とは違い、レギュラーシーズンは結果が全て。佐々木に残されたチャンスはそう多くないはずだ。1年前から急降下した評価を覆すためにも、エンジン全開で2年目に臨みたい。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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