人間そっくりで、今にも動き出しそうで動かない(たまに首が180度、360度回るものもいる)人形がいるだけで、そこは時間の流れが止まった不思議な空間となるのだ。
愛知県高浜市の吉浜地区(旧吉浜村)、名鉄三河線「吉浜駅」から歩いてすぐの場所にある「高浜茶屋 吉貴」もまた、この等身大人形が100体以上も大集合していて、とんでもなく不思議な空間となっている。
豪華な人形で彩られた1階
名鉄三河線(海線)の吉浜駅から徒歩3分。2階建てのファミレスぐらいの大きさの建物が「高浜茶屋 吉貴」だ。
江戸の芝居小屋を再現した2階
ここを作った吉浜地区の人形師・花雲斎紫峰(かうんさいしほう・1918~2003・本名 神谷留次)は、根っからの歌舞伎好き。吉貴の運営は娘(現オーナーの神谷京子さん)に任せっきりで、遊んでばかりいたそうで、金丸座にもしょっちゅう通っていたとか。着物を着て人力車で行くから、「また役者に間違われたよ」と自慢げに言っていたらしい。
桟敷席には既に1階も2階も観覧客で溢れている。なんと、それがすべて等身大人形。江戸時代の歌舞伎小屋にまんまタイムスリップした感じだ。この観覧している人形が、血色の良い殿様や美しい姫様も入れば、町人、鋭い眼光の茶人もいたりして、見応えたっぷり。中には、人形を作った紫峰本人がちゃっかり紛れ込んでたりして、茶目っ気たっぷりだ。
艶っぽいシーンを美しい等身大人形で再現
実は当館の向かいには、かつて紫峰人形美術館(1981~2017)というバブリーな美術館があった。『ワンダーJAPAN(4)』でも紹介しているが、大音量のBGMが流れるなか500体以上もの人形(こちらは小さめなものがメイン)が動き回っていて、その姿はいまもYouTubeで確認できる。
それに比べると、高浜茶屋 吉貴はちょっと地味かもしれない。だが、地味な中にもジワジワとくる奇妙な感じ、ここはまさに異空間だと思う。
<TEXT/関口勇>>
【関口勇】
『ワンダーJAPON』編集長(フリーランス・発行元はスタンダーズ)。廃墟、B級スポット、巨大構造物、赤線跡などフツーじゃない場所ばかり紹介。武蔵野美術大学非常勤講師。X(旧Twitter):@isamu_WJ
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