臍の周囲にぐるりと印象的な刺青を宿す女性がいる。シオンさん、32歳だ(@solitude_mnm)。
ダンス講師などを経てゴーゴーダンサーや被写体モデルなど多岐にわたる活動をする。あっけらかんと語る過去に、仰天の話が飛び出した。
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同棲相手との破局が理由で刺青を入れる

シオンさんの出身は埼玉県。両親は、彼女の言葉を借りれば「昭和ゴリゴリ」、堅実な家庭で育ったのだという。

「高卒後はダンスの専門学校へ進学しましたが、そのときも親とは揉めました。親からすれば『資格が手に入るわけでもないし、趣味にしておきなさい』という感じ。美容学校も受かっていたので、そっちに行ってほしかったのでしょう。でも『私の人生だから』と押し切った形です」

中学までは剣道部でならした。ダンスに出会ったのは高校生のときだというが、「ダンス熱は冷めなかった」と笑う。熱い気持ちのまま専門学校へ入学し、両親の心配をよそに、結果としてダンスに携わる仕事で食いつなぐことができた。現在でこそ身体の至る所にある刺青だが、初めて入れたのは2018年。太ももの裏に2輪の薔薇でハートの形を作った。

「3年間同棲していた彼氏と破局して、10日くらいまともに食事を摂れず、同じ月に2回も発熱しました。
足の靭帯を切るなどの怪我もあって、『髪の毛を切るくらいじゃリセットできない』と思って刺青を入れることにしたんです」

「刺青を見るたびに頭が痛くなる」という母

気持ちのリセットは髪を切るより「刺青」。いじめによる不登校、“17歳での中絶”を乗り越えた32歳女性の「自分らしい生き方」
刺青は今では全身に
当然、昔気質の母親の反応は「最悪だった」。28歳のとき、同乗した車のなかでお腹の刺青が母親にばれ、「そんなものがあったら生きづらいに決まってる」と心配された。以来、実家にも頻繁には帰らなくなった。「元気でやっているよ」のつもりで投稿していたSNSのストーリー動画。だが母親からすれば、新着動画のたびに新たな刺青が増えていく娘。とうとう「お母さん、あなたの刺青を見るたびに頭が痛くなる」とまで言わせた。母親はごく一般的な感覚を口にしただけだとしても、シオンさんにとっては生き方を否定されたようにも聞こえる。

「結局、母と話して、私は自分の身体に刺青を入れるのをやめる気はないから、見たくないならミュートするか、決めてほしいと伝えました。それでも母は、近況が気になるから見ることを選んだようです。なんだかんだ、いつも気にかけてくれるいい親だなと思っています」

中学時代に経験した孤立といじめ

シオンさんが「刺青と直接関係ないですけど」と言いながら話してくれたエピソードのなかに、彼女の原体験に触めるものがあったように筆者は感じた。たとえば中学時代に経験したいじめ。初めての彼氏から2股をかけられていたことに端を発する。

「もう片方の女の子に『私も付き合っている』と伝えたら、その子がスクールカースト上位の女の子を使って、『無視しろ』とみんなに命じたようです。廊下を普通に歩いているだけで悪口を浴びせられたり、誰も私と関わろうとしなくなりました。
当時、私は剣道部の部長をしておりましたが、部活の際に指示を出しても誰も従わず、散々な状況でした。帰る頃になると自然と涙が溢れてきて、精神的に限界を迎えているのが自分でもわかりました。そのあと、不登校になっています」

いじめの事実を重く受け止めた母親が学校側に掛け合ってくれたが、まったくの逆効果だったという。

「いじめの主犯格の子と話し合いをする席が設けられましたが、これが火に油を注ぎました。当時流行していた前略プロフィールがめちゃくちゃに荒らされたりして、事態が収束することはなかったんです」

結局、シオンさんは同じ市内の別の中学校に転校することになった。

「転校先の学校ではうまく馴染むことができました。そこでも剣道部に所属して、前の学校と対戦した際には容赦なく叩き切りました。酒やタバコも覚えて悪い仲間も増えたけど、楽しかったですね」

苛烈な恋愛の果てに、妊娠が発覚…

その後、高校に入学すると「素行のよろしくない仲間」も増えた。最も心を痛めたのは中絶経験だろう。

「高2のとき、当時流行していたmixiで知り合った彼氏でした。おじいちゃんから代々暴走族という家系で、地元で恐れられるほどのワルでした。漢気がある反面、非常に束縛が激しい人でもありました。
たとえば男女2人ずつで泊まりで遊んだとき、なぜかそのことが彼氏に伝わっていて、数日すると急に電話がかかってきました。『今からお前の男友だちをボコボコにするけど、来る?』と言うんです。私は行きませんでしたが、その後、一緒にお泊りをした男友だちが怪我で病院送りになったと聞きました」

疑り深く、信用してもらえない。そんな日々に辟易していたシオンさんは、ついに別れを切り出した。だがその後、すぐに妊娠が発覚。母親に相談し、「『責任を取る』と言われても困るから」と彼氏には告げずに堕胎した。そのときも母親はシオンさんの気持ちに寄り添ってくれたという。

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これからの展望について、シオンさんは「緊縛のショーや被写体モデルとして活躍したい」と話す。現在は固定給で働きながら副収入としてイベントに参加しているが、いずれエンターテイメントの世界で食べていけるようになるのが目標だ。何かと気を揉んできた母親に、彼女がありのままで感謝を告げられる日が来ると良い。

<取材・文/黒島暁生>

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シオン


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【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。
『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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