ビッグマウスで日本中を敵に回した男が、今はボクシング界の“興行師”になっている。日本人初の世界3階級制覇を達成した亀田興毅は現在、「SAIKOU×LUSH」のプロモーターとして話題選手やアーティストを呼び込み、異色のボクシング興行を仕掛けている。
しかしその裏では、現役時代に稼いだ7億円を詐欺で失い、ゼロからの再出発だった――。激動のセカンドキャリアを直撃した。

「騙されて7億円パーやね」亀田興毅が明かす、“ゼロから再出発...の画像はこちら >>

「子どもの幼稚園代も危うかった」引退後の苦労

──現役を引退した時点で、将来はプロモーターをやろうと決めていたんでしょうか?

亀田:い~や、全然。もう全く関係ない仕事しようかと思っていました。自分は中学を卒業するときに親父に「家を出て働くか、ボクシングをやるかどっちや」って言われて、しかたなくやっていたのが始まりで、ボクシングは好きじゃなかった(笑)。しかも日本ボクシングコミッション(編集部注:日本国内のプロボクシングを統括・管理する団体)とずっと裁判やってたからなぁ……。

──引退後は一時ジムを運営されていましたが、今はノータッチらしいですね。そこからプロモーターへと転身されたのはなぜ?

亀田:ちょうど裁判が終わったあたりで、コロナ禍でボクシングの興行が激減していました。やるにしても座席数を減らさなあかんとか、無観客試合とか。そうなったらボクサーは食っていかれへん。選手が大勢引退していくのを目の当たりにして、興行が必要だなと思ったのが始まりです。

──今は井上尚弥選手っていうスターがいて、日本ボクシング界もずいぶん活性化しましたし、安心できますね。

亀田:そうですね。
彼の活躍は過去にない凄いものです。ただ、これまでの歴史を振り返っても辰吉丈一郎さんや畑山隆則さんとかスター選手が出てきた瞬間は既存のファンに加えて新規ファンも集まり盛り上がっても、引退してしまうとファンは離れていく。その繰り返しです。だから井上尚弥選手が引退したあとが重要になってきます。なので選手ではなく、ボクシング自体にしっかりとお客さんをつけなあかんと思っています。スター選手じゃなくても、ボクシングには常にその時々のチャンピオンがおる。チャンピオンになればちゃんと飯が食えるという業界にしないといけない!

──「ボクシング自体のファンを増やさないといけない」とのことですが、亀田さんが手掛ける「SAIKOU×LUSH」では、その点を意識した仕掛けをしているのでしょうか?

亀田:毎大会ハーフショーとしてライブの時間を作っていて、これまでASKAさんやT−BOLAN、TUBE、ET-KINGさん、BAD HOPさんといったアーティストに歌っていただきました。あとは会場内で、ご当地の人気店を集めたグルメフェスも同時開催しています。ライブもあってグルメもあって……となったら、普段ボクシングに興味がない人でも「ちょっと行ってみよか」となるかもしれない。すぐに結果の出るものではないですが先々を見据えて今の間から取り組んでおけば自社のノウハウにもなるかなと。

──すごく楽しそうですが、なんだかすごくお金もかかりそうな……。

亀田:かかる、かかる! ようわかりましたね! だからお金ちょうだい(笑)!

──それこそ、引退後しばらくはお金には苦労されたと聞いています。
ちなみに、「3150FIGHT」は現役時代に稼いだお金で運営しているんでしょうか?

亀田:いや、スポンサーをかき集めて、なんとか「3150FIGHT」の資金を作りました。現役時代は30億円くらい稼いだけど、税金引かれたり経費で減って、残ったのが7億円。でもそれも投資で全部なくなった。投資っていうか、まぁ騙されて7億円パーやね。これまで、ずーっとボクシングしかしてきてない人間やで? なんも分からんかった。でも、20代のうちに勉強できてよかったと思てる。引退したばかりの頃に失敗したから、ほんまにゼロからのスタートやった。一時は子供の幼稚園代もなかった。今はようやく飯を食えるくらいにはなりました。たまに家族で外食するくらいで、そんなに贅沢はできないけど。

現役時代も今も“バズリ”を意識

──正直、亀田さんほどの知名度があれば、ただお金を稼ぐだけならいくらでやれそうな気がします。もともとボクシングが好きなわけではないならば、「興行数が激減したところで自分には関係ない」とはならなかったのでしょうか?

亀田:言われてみればそうやな。
でも、コロナ禍のとき、親父が「3150ファイトクラブ」っていう企画をYouTubeでやってたんですよ。若い子たちを集めてプロボクサーに育て上げるっていう。でもせっかく練習頑張っても、その子たちがプロとして上がる舞台がほぼない。それならその舞台を作ってプロとしてリングにあげたいじゃないですか。それもプロモーターになったきっかけ。

──お話を伺っていると、かなり面倒見が良い印象です。やっぱり長男気質なんでしょうか?

亀田:う~ん。長男でそういうふうに育てられたからなのかな? でもやっぱり周りのみんながええ感じやったら嬉しいじゃないですか。話してて思ったけど、だから俺、金貯まれへんのかな(笑)。選手を稼がせたろうと思ってるから、俺より「SAIKOU×LUSH」に出場してるボクサーのほうがよっぽど儲けてるで。ヒロキング(福重浩輝)なんかキャッシュで車買ってるぐらいやもんな(笑)。

──最近ではちょくちょくX(旧Twitter)の投稿も話題になりますよね。
「僕の子供を産まないかい?」とか、ちょっとシュールな感じで。

亀田:やっぱりバズりを起こしていかないといけない。自分が現役の頃はSNSがなかったけど、「新聞でどれだけ大きく記事にしてもらえるか」は常に考えていた。普通に真面目なことを喋ったって、小さい記事にしかならない。とにかく話題を作らなあかんってことで、いろいろパフォーマンスもやってきたし、ある意味、俺は昔からずっと“バズること”について考えてたんやろね。

──(笑)。これからもボクシング界を盛り上げていってください!

そうですね。それと、引退から10年かけてようやく飯食えるようになった。でも今は心に余裕がない、いわば心が貧しい状態だけどここからの10年で心に余裕とゆとりを持てるように次の10年、勝負や!

【亀田興毅】
現役時代、プロボクシング日本人史上初の世界三階級制覇。2015年現役引退後、ボクシングジム運営などを経てプロモーターへと転身。自身がファウンダーを務めるプロボクシングイベント「SAIKOULUSH」が、4月17日(金)、18日(土)、19日(日)にキルギス共和国にて開催。イベントの模様はYouTube「SAIKOULUSH OFFICIAL」にて生中継。


取材・文/原田イチボ@HEW 撮影/荒熊流星

【原田イチボ(HEW)】
1990年生まれ。編集プロダクション「HEW」所属のライター。アイドル、プロレス、BL、銭湯サウナが好き。Twitter:@ichibo_h
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