暫定予算案提出は安倍元首相が前年末の解散総選挙を打って編成作業に遅れが生じた’15年以来、11年ぶりのこと。高市首相は本予算の年度内成立は困難と考え、3月27日に暫定予算案を閣議決定。
年金などの必要最小限の費用を盛り込むのが一般的だが、高校授業料や小学校給食費無償化などの費用も計上へ。
ジャーナリストの石戸諭氏は11年ぶりの暫定予算提出の責任を政権側だけに帰すのは適切ではなく、むしろ野党の国会対応にも大きな問題があるとみる。そして、いま求められているのはスキャンダル追及ではなく、「本質的な批判と対立軸の打ち出し」だと訴える(以下、石戸氏の寄稿)。

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高市政権が迫られた“つなぎ予算”の現実

高市首相が11年ぶりの暫定予算案の提出に舵を切った。首相は、自身の政権下で初めてとなる122兆円の本予算の年度内成立にこだわったが、少数与党である参院での審議が難航したため、“繋ぎ”の必要に迫られた。それでも、本予算の成立は時間の問題であり、国民生活に大きな影響を与えるものではない。

今回の措置は首相が36年ぶりの1月解散に踏み切り、予算審議が1か月ほど遅れたことに大きな原因がある。しかし、私は大きな問題が野党にもあると考える。端的に言えば国会審議の多くが「他責」に見えてしまうのだ。

高市政権は良くも悪くも現実的な方向に舵を切りつつある。3月20日の日米首脳会談はその典型だ。憲法改正を声高に訴えてきた高市首相は、憲法9条以下の法体系を打ち出すことでホルムズ海峡などへの自衛隊派遣に一定の歯止めをかけた。「これまでの主張と違う」と批判することはできるが、従来の政府見解を踏まえて「できないこと」の線引きをし、結果を持って帰ってくるほうが大事だろう。


スキャンダル追及では支持は広がらない

周知のとおり、参院での審議を前に衆院での予算審議は59時間にまで短縮され、従来の80時間を大きく下回った。数の力で押し通した政権の姿勢には私も問題を感じるが、野党も野党で一分一秒もムダにはできないはずだ。衆院予算委員会で小川淳也・中道代表が行った「WBCを現地観戦した閣僚はいるか?」といった質疑、週刊文春で報じられた松本洋平文科相の不倫疑惑を参院予算委員会で取り上げる必要はあるのか? 野党側は声高に審議時間の短さを「異常事態」と説くが、政権支持率が落ちても野党の支持率が上がらないことが世論の反応を端的に示している。

現在、審議されている予算の大枠は石破前政権で組んだものであり高市カラーは薄い。つまり、本丸は’27年度予算からだ。高市首相は予算の作り方を「根本から改める」と主張し、複数年度にまたがる予算編成に意欲を示している。肝心の経済政策が本格化していくのもこれからだ。首相が固執する成長投資は風呂敷を広げすぎで、戦略17分野は薄く広く、かつ雑多だ。高市政権のアキレス腱はまさに成長戦略と投資にあるのではないか。その意味で野党の勝負どころは、まだ先にある。

国民の意識は大きく変わった。スキャンダルから本質的な批判と対立軸の打ち出しへ。
これが野党支持の掘り起こしにも繋がる道だ。どこが変化に対応できるのか。今後の国会を注視していきたい。

高市政権「超スピード予算審議」で明らかになった野党の“他責”体質<石戸諭>
石戸諭
<文/石戸諭>

【石戸 諭】
ノンフィクションライター。’84年生まれ。大学卒業後、毎日新聞社に入社。その後、BuzzFeed Japanに移籍し、’18年にフリーに。’20年に編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞、’21年にPEPジャーナリズム大賞を受賞。近著に『「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(新潮新書)
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