「これで今日はもう20本目じゃないですかね」
−196ストロングゼロ〈無糖ドライ〉の350ml缶を片手にそう語るのは、名古屋でアパレルショップを経営するCANTAさん(34歳)。

1日に10本ストロング系を飲んでいた筆者だが、「俺より強い奴に会いに行く」という気持ちで市井のアルコール依存症を探したところ、早々に凌駕する相手が現れた。
350mlを20本ということは、1日に合計で7リットルの酒を飲んでいることになる。

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同じ味しか飲まないワケ

−196のアルコール度数は9%のため、「飲んだ容量(ml)×アルコール量(%)×0.8(比重)」で純アルコール量を計算すると、「7000ml×9%×0.8=504g」である。厚生労働省によると、「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」の1日当たりの純アルコール摂取量は男性で40g以上とされている。

「今は毎日、−196ストロングゼロ〈無糖ドライ〉を飲んでいますが、それまではハイボール缶でした。ただ、物価高の影響でハイボールが200円から240円になったタイミングで−196に切り替えたんです。でも、最近はこれも高くなっていて、コンビニで買うと177円します。この間ドン・キホーテに行ったら103円だったので、驚いて2本買ってしまいました」

−196にはさまざまなフレーバーがあるが、酒飲みにはよくある話で、CANTAさんは同じ味しか飲まない。

「もともとグレープフルーツなどを飲んでいたのですが、人工甘味料が入っているため、副作用が結構ヤバくて……。極端に眠くなったり、食欲が旺盛になりすぎたんです。それに太るし、自分で分かるぐらい凶暴になったり、横着になりがちだったので、今は無糖だけを飲んでいます」

接客中に飲酒していた

もちろん、人工甘味料にそんな副作用はない。しかし、そのような理屈を立てないと、ストロング系の奇妙な酔い方は説明できないのだ。

それに、夜に20本も飲むわけではない。CANTAさんは自身のアパレルショップで、飲酒しながら接客しているのだ。

「お客さんも酒好きな人が多く、店内で飲みながら買い物をしてもらっています。
それに、僕がお酒好きなことを知っているので、みんなお酒を買ってきてくれるんですよ」

これがサラリーマンだったらあり得ない話だが、CANTAさんは個人事業主。いくら勤務中に酒を飲もうとも、それで客が来るのであればその行動は正解である。

筆者が原稿を書くためにガソリンのようにストロング系をあおっていたことと大して変わらない。まぁ、さすがに筆者の場合は、取材のように人と会うときは飲酒しないようにしていたが、会社にいるときは飲んでいた。よく考えれば、当時はサラリーマンだったか……。

食欲はあるけど、全部吐いてしまう

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午前9時の打ち合わせ前にも……
「酒カスキャラ」が定着しているCANTAさん。周囲も面白がって飲ませようとするものだから、太陽が昇っている間から酒を飲んでいることに罪悪感を覚えなくなる。

「どれだけ飲んでも、寝酒をしないと眠れないので、ベロベロで帰って家でウイスキーを飲みます。シングルやダブルではなく、耐熱タンブラーに並々入れて飲んで途中で気絶します。そこから、8時に起きて、昨晩残った酒を飲みます。耐熱タンブラーに入れているから、まだ氷が残っているんですよ」

いわく、キンキンに冷えた状態で飲む、朝のウイスキーは「最高にうまい」そうだ。

「そして、身支度を整えてから。近所の立ち飲み屋に行って5杯ぐらいハイボールを飲んで、12時に店をオープンします」

どうやら飲んでいるのはストロング系だけではなさそうなので、純アルコール量は前述の計算から、だいぶかなり変わってくる。
人間は1日にそんなに水分を取れるものか?

「普段飲む酒はほとんど炭酸入りだから、お腹はずっとパンパン。それでも、二日酔いになるのは年に3回ほどです。だって、毎日の飲酒ルーティーンが決まっていますからね」

その分、1日1食しか食べられない状態だ。

「先輩にごちそうされることもあります。お腹はパンパンでも、酔っ払って『酒マンチ』になっているので食欲はあるんです。それでたくさん食べるのですが、胃が終わっているので、最後は先輩の目の前で全部吐いてしまいます」

病院で「見たことない数値が出た」

ここまで読んできて分かると思うが、CANTAさんはアルコール依存症である。病院にもしばらく行っていなかったが、昨年末にようやく血液検査を受けた。

「翌朝、病院の先生から電話が来て、『見たことない数値が出た』と言われたんです。そこから『今日、予約を取るので来てください』ということで、全身検査を受けました」

急いで病院へと向かったCANTAさん。健康診断におけるγ-GTは一般的に40~60が平均値とされるが、彼は「1100」という数字を叩き出した。

筆者は「2410」のため、「なんだ半分か」と思ったが、そもそも2人とも数値が異常なため話にならない。本来は100を超えただけでも、脂肪肝、肝炎、肝硬変、胆道疾患の疑いがあるのだ。

「それでも、糖尿病、肝硬変、がんは全部平均値でした。
肝臓の数値もγ-GTだけが高いようで、医者からは『肝臓強いね』と言われました。それを聞いて安心して、今も飲んでいます」

何も問題は解決していないのだが、いざ体を壊して初めてアルコール依存症に気づくものである。幸か不幸か、アルコール耐性が強すぎる我々は、「その日」が来るまで浴びるように酒を飲んでしまうのだ。

買いだめせず、都度買いに行くのはなぜ?

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とても3日間の酒量とは思えない
そんなCANTAさんが酒に溺れ始めたきっかけは、ありふれた出来事だった。

「20歳の頃働いていたアルバイト先が、休む間もないくらい忙しかったんです。でも、仕事終わりに汗だくでビールを一気に飲んだとき、初めて『酒がうまい』と思ったんです」

そこで、酒の味を覚えたCANTAさん。とあるコンビニのオーナーと仲良くなり、廃棄の弁当や発泡酒を無料でもらうようになった。

「すぐに酔っ払いたかったので、ワンカップを挟んだことがありましたが、周囲から『それはやめろ』と言われてやめました。意外と高いですしね。今はアパレルショップの目の前がコンビニなので、毎日お酒を買っています。店員さんとも仲良くなって、たまにビールなどを奢ってくれるくらい顔なじみになっています。ほかのコンビニでも毎日買っているので、自然と缶に刺して飲むためのストローが出てくるようになりました」

何度も買いに行くのは面倒ではないか?

「段ボールで箱買いしたほうが安いはずですが、それは『なんか違う』と思うんですよね。ワンカップのように、『それをやったらおしまい』な気がするんですよ」

ここまで読者がどれほど感情移入しているかは分からない。
でも、筆者は痛いほどCANTAさんの言っていることが分かる。買いだめしていると、いよいよ毎秒飲んでしまうのではないかという不安に襲われるのだ(実際、すでに飲んでいるのだが……)。

酒のおかげで店を始めたし、結婚もした

こうして毎日、504グラムのアルコールを摂取しているCANTAさん。普段から吐き気とむくみが当たり前……。でも、飲まないと仕事にならないのだ。

「人見知りなため、シラフだと接客もできないんですよ。それでも、酔っぱらっていれば酒の勢いで話しかけられるんです。というか、飲まないと会話したくないんです」

いくら、アルコール依存症だと言われても、何度も酒の力に助けられてきた。

「誰もいない新天地に飛び込んだのも、お店を始めたのも、結婚も全部酒の勢い。今はブランドもやっているのですが、それも酔っぱらったときに考えたデザインを採用してもらっています」

酒では失敗しかない。でも、失敗の倍くらいの成功はある……。そう語るCANTAさんだが、周囲からは何度も酒をやめるよう説得された。

「お母さんと嫁にずっと『やめるように』と怒られていたんですよ。
でも、最近は何も言ってこないので、もう諦めたのでしょうね。すると、今度は怖い先輩たちが『いい加減にしろ』と怒ってくれるようになりました。そこで、朝から飲むのをやめるため、『夕方5時までは飲まない』という約束をしました」

シラフだと字も書けない

しかし、依存症になった以上、急にアルコールを摂取しなくなると、頭痛、めまい、吐き気、震え、不安、不眠などの「離脱症状」が起こる。

「いわゆる『酒うつ』ですよね。朝の5時に目が覚めて、少しアルコールが抜けている状態で、もう一度寝ようと目をつぶっても不安が訪れてしまうんです。店の売り上げや嫌いな奴の顔など、普段は考えないようにしていたネガティブな事柄が一気に頭の中にあふれかえるんです。酒を飲んでいればそんなこと『どうでもいいや』と思うのですが、シラフの状態だとずっとそのことを考えてしまい、気持ちが落ち込みます」

仕事に熱中していればそんなことも忘れられるかもしれないが、体も言うことを利かない。

「手が震えるんです。もうペンも握ることができず、字も書けません。領収書にサインもできないし、マウスを持つ指も震えているから全部ダブルクリックになります。気を紛らわすために何か飲もうとしても、片手だとこぼしてしまうので、両手で握り締めて持つしかありません」

そのため、断酒するうえではベンゾジアゼピン系抗不安薬であるロラゼパムが必須である。どれだけ覚悟があっても、そのつらさは耐えられるものではない。

「何も食べていないのにずっと吐き気もするんです。
食事もできないし、38~39℃ぐらいの熱が出ていたと思います。ソワソワするし、すごくネガティブになるし、嫌なことばかり考えてしまう。余計なことばかり……。めちゃくちゃしんどいです」

人によるが、離脱症状は3日から1週間続くと言われている。どこが痛いわけではないが、まるで生きた心地がしない。この苦痛から逃れる唯一の手段が「飲酒」なのだ。

「夕方まで頑張ったのですが、どうにかなりそうで……。目の前にあるコンビニという『薬局』に駆け込んだんです。500mlのハイボールを2本、つまり1リットルを一気飲みしたところ、体中に酒が回って、4時間後にはちゃんと字が書けるようになりました。これが3カ月続いたので、『もう我慢しないで飲もう』という気持ちになったのです」

夢か現実か分からなくて漏らした

もちろん、こんなに体を痛めつけて生きていて、健康でいられるわけがない。

「去年は小便と大便をそれぞれ2回ずつ漏らしました。夢の中でトイレにいて小便していたのですが、パッと起きた時に夢か現実か分からなくて、気づいたら思いっきり漏らしていました」

体だけでなく、金銭的にも余裕はない。

「お店をやっているので計算は早いですが、普段自分が飲んでいる酒の代金なんて考えたくないですね。1日177円を20本で3540円。でも、食事をしないことを考慮すれば、そこまで青ざめるような金額ではない。ただ、これが1カ月、1年、3年と続くと、『払えるけど、何も残らんな』というやるせない気持ちになります」

1日に3540円も使っているということは、1カ月で10万円分はストロング系に費やしていることになる。ただ、CANTAさんは勤務中以外にも居酒屋や家でも飲んでいるため、それを計算に入れると、もう……。

この金でお店の設備を充実させたり、家族にプレゼント、あるいは貯金することもできただろう。しかし、CANTAさんにとって酒は必要経費なのだ。

「医者には『この生活を続けていたら、いつか肝硬変になるかもしれない』と言われています。でも、この生活を続けていても続けていなくても、いつかみんな病気になるし、死にますよね? だから聞き流しています」

ストロング系は「合法ドラッグ」

元アル中として数少ないアドバイスをするとしたら、タバコやエナジードリンクなど、新たな依存先を見つけることを勧めたいが……。

「タバコは僕、人生で一口も吸ったことないです。副流煙しか浴びたことがありません。本当に酒だけですね」

変な話、薬物に手を出したこともない。

「むしろストロング系こそが『合法ドラッグ』だと思うんですよ。持っていても捕まらない。安いし、どこでも買えるし、どこでも飲める……。言い方は良くないですけど、トべますよね。こんなものが許されている国、世界を見渡してもないですよ。だから、僕はもうこれだけで十分です」

長生きはできないと分かっているので、だったら幸せに死にたい……。

人に迷惑をかけることもあるが、真面目に仕事に打ち込むために酒に逃げている。酒を飲まなければ、店の売り上げはみるみる落ちるだろう。そう思うと、気軽に「やめたほうがいいですよ」とは言えない。

しかし、本当にその正解は酒なのだろうか……。

<取材・文/千駄木雄大>

―[今日もなにかに依存中]―

【千駄木雄大】
編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)がある
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