沖縄の空き家で少年らが発見した2億円超の現金と債券。逮捕者も出るなど、ニュースは県内外で大きな波紋を呼んでいるが、反社会的勢力の影も見え隠れし全容は未解明のままだ……。
SPA!取材班が独自取材により、事件の真相や謎に包まれた持ち主の正体を追った!

沖縄の空き家から「2億円」。壁の中に眠っていた遺産のナゾと、...の画像はこちら >>

盗んだ金でゾンビたばこ購入。不良少年十数人が逮捕!

 発端は、ただの“肝試し”だった。空き家に忍び込んだ少年たちが、壁の中から見つけたのは大量の札束が……。噂が広まると不良少年たちが続々とここを訪れ、現金や金目のものを探して出して持ちだした。大金を手にした一部の少年たちは、その資金で違法ドラッグを購入し夜の街で乱痴気騒ぎを起こしていたーー。まるで海外の犯罪映画のワンシーンのようだが、舞台となったのは沖縄だ。事件発覚前に情報を得ていたという地元メディアの記者はこう証言する。

「きっかけは、昨年夏に会った、沖縄の政財界に幅広い人脈を持つXさんとの何気ない会話でした。彼は、『あの一件、なんで報じられないんですかね』と、地元で広がっているというある噂について打ち明けたのです。なんでも、昨年春頃にある少年の自宅から500万円が見つかったところから空き家の存在が明るみに出て、ほかの人間も押しかけて計1億円以上の現金が空き家から持ち去られたというのです。しかも、警察からは厳重な箝口令が敷かれているという話でした」

 11月になって、ようやく地元紙『琉球新報』が「空き家に1億円 少年ら持ち出す」と見出しで報じると、SNSを通して瞬く間に日本じゅうに拡散した。記事では、中高生による現金持ち出しのほか、現金の一部が、沖縄で蔓延する違法薬物「エトミデート(通称:ゾンビたばこ)」の購入費用に充てられていたとも指摘していた。


「この一件が報じられてから、ようやく沖縄県警が逮捕に踏み切りました。1月に空き家に忍び込んだ中高生16人を邸宅侵入、窃盗容疑で書類送検されたのです。さらに3月、これに関連して、銀行から無記名債券を換金して約1億円を手に入れた男女も組織犯罪処罰法違反などの容疑で逮捕されました。発見された現金は、福沢諭吉の肖像が印刷された“2世代前”の古い紙幣。少年らが屋敷の中で面白半分に壁を壊したりしているうちに、出てきた紙幣もあったそうです。無記名債券も空き家にあったようで、少年たちは価値がわからなかったようですが、嗅ぎつけた“大人”が換金したのでしょう」(前出の記者)

 この債券は昭和から平成にかけて発行されていた「ワリコー」や「ワリチョー」と呼ばれる割引金融債だ。無記名で購入でき、償還期間後は紙の証書を持っていれば誰でも換金できた。富裕層の脱税や資産隠しに使われることもしばしばあった。

持ち主は商業地の大地主。貸金業も営んでいた

沖縄の空き家から「2億円」。壁の中に眠っていた遺産のナゾと、肝試しで“宝”を当てた少年たちの「衝撃の末路」
ツタが生い茂り、びっしり覆われる邸宅。元の邸宅がどんな建物だったのか、想像もつかない(昨年8月撮影、写真提供=安藤海南男)
 この空き家には、報道で出ただけでも2億円以上の現金や債券が眠っていたことになる。では、この空き家の持ち主は一体、誰なのか。元夕刊紙記者で沖縄事情に詳しいジャーナリストの安藤海南男氏はこう明かす。


「件の空き家は那覇市内の閑静な住宅街に建っていました。事件が明るみに出る前に私も訪れたのですが、門扉が固く閉じられ、幾重にも重なってツタが自生する塀に囲まれた敷地に2階建てとみられる邸宅があり、独特の威容を放っていました。登記簿によると、土地は約1342平方メートルの広さで、玄関の方面からは県庁も望める好立地。那覇市のメインストリートである国際通りにも近く、地価が高騰している中にあってかなりの資産価値があることは想像に難くありません」

沖縄の空き家から「2億円」。壁の中に眠っていた遺産のナゾと、肝試しで“宝”を当てた少年たちの「衝撃の末路」
取材班が現地へ向かうと、空き家は現在取り壊され更地となっていた
 取材班が3月に同地を訪れたところ、件の空き家は取り壊され、だだっ広い空き地が広がるのみとなっていた。空き家の隣には、極東最大規模の米軍嘉手納基地の土地を多く所有し、“県内最大の基地地主”と言われる人物の邸宅があった。エリア内はビルが建ち並ぶ中、基地地主と空き家が並ぶ一帯だけは視界が広々と開けており、高級住宅街のようであった。

「持ち主に関する情報ですが、登記簿によると土地は元の所有者から親族とみられる男性に2004年に相続登記されています。そして、さらにその4年後に相続者の男性と同姓の人物を含む9人に相続されていました。所有者が複数にまたがる中で住人がいなくなり、風雨にさらされるままになってしまったのでしょう。20年ほど、空き家の状態が続いていたそうです。沖縄メディアが、何人かの相続人に取材を試みたそうなのですが、あまり多くを語りたがらない様子だったそうです」(安藤氏)

 現地で取材をすると、古くから地域の事情に明るい近隣住民が空き家の由縁について明かしてくれた。

「あそこは、明治期に内地から文具の卸業として沖縄に渡ってきた一族の土地だよ。
初代は事業を拡大させて成功し、二代目になってからは戦後の闇市が立ち並んだ一帯の土地管理を生業にしていたと聞いている。一族は平和通り(国際通り近くのアーケード街)一帯の大地主として有名でしたね。一方で、不動産事業に絡んで貸金業のようなこともしていたようで、一時期は銀行の設立申請までしていた。なぜ、それほど大量の現金を自宅に置いていたのかって? それはわからないが、周辺では知る人ぞ知る資産家であったことは間違いないよ」

 この二代目の妻が2004年に死去し、子と見られる親族Aが相続。Aも2008年にこの世を去り、9人の親族に相続されたようだ。

「一族は、事業に関連する資金など、現金を自宅に置いておく必要があったのでしょう。当人たちが逝去していくなかで、こうした遺産の存在が相続人に伝わらぬまま、放置されていたのではないでしょうか」(前出の記者)

空き家の現金をめぐって蠢く半グレやヤクザ

沖縄の空き家から「2億円」。壁の中に眠っていた遺産のナゾと、肝試しで“宝”を当てた少年たちの「衝撃の末路」
大金を手にした少年らは繁華街で違法薬物を購入したという。一族が残したカネは夜の街に消えていった(写真はイメージです)
 空き家の正体は闇の中ながら、一方で、事件発覚から約半年が経過したが、初報から時間を置いて債券の顛末が表沙汰になったように、今後、さらなる真相が明らかになる可能性もあるという。

「空き家にあった債券を換金して現金化した男女のほかにも、屋敷の中にあった金品を手に入れた者がいる可能性がある。少年たちは空き家にある現金のことを仲間内で共有し、邸宅への侵入を繰り返していましたが、この手の話はすぐに広まるもの。少年たちの中には『(空き家の件で)ヤクザに追い込みをかけられている』と言って行方をくらませた子もいたそうです。実際に、家の中に総額いくらあったか判明していません。今後、事件捜査がさらに進んでヤクザや半グレといった反社会勢力の関与が浮上することも十分あり得ます」(安藤氏)

 事件に関与した少年のなかには、生活保護を受給せざるを得ないほどに困窮した家庭の子どももいたという。
現金が持ち去られていたとされる時期は、沖縄でエトミデートが中高生に広がっていったタイミングとも重なる。

「米軍基地地主の済む高級住宅街にある空き家に眠っていた資産家の遺産が、沖縄の過酷な現実からの逃避のために使われていたのだとすれば、こんなに皮肉なことはありません。沖縄は所得の不平等、格差が全国に比して高いとされていますが、事件は、持てる者と持たざる者の明暗を照射しました」(同)

 新事実が明るみになることはあるのか。事件がはまだまだ終わっていない。

取材・文・撮影/SPA! 2億円空き家取材班
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