「戦争反対」投稿を批判する人の言い分とは?
アメリカによるイランへの攻撃以来、多くの著名人がSNSで「戦争反対」を訴えています。しかしながら、これが議論を二分する事態に発展しています。“脳内お花畑”だとか“何も分かっていない”と、戦争に反対する人たちが現実を理解していないと批判する意見が相次いでいるのです。これは主に「保守」的な考えを持つ人たちによるものです。ここでカギ括弧をつけたのは、主にネット上で自らをそう位置づける人々の空気感を指しています。そして、「保守」こそが大人である、という論理から、リベラル的な考えを批判していいと早合点している人たちのことでもあります。
今回の件で「戦争反対」に反対する人たちの声には、こうした「保守」の問題点が凝縮されているように感じるのです。
爆笑問題らが所属する芸能プロダクション「タイタン」の太田光代社長のケースが象徴的です。とことん率直な言葉で意見を表明したにもかかわらず、批判にさらされたからです。ただ平和を願う純粋な思いからの投稿だったにもかかわらず、一部のネットユーザーから特定の政権批判だととらえられたことに、驚きを隠せない様子でした。
「戦争反対と声を挙げることがなぜダメになったの」という太田氏の言葉は、この異様な現状を如実に表しています。
「『戦争反対』を訴える人は現実が見えていない」という主張
では、「戦争反対」に反対する「保守」の言い分はどうでしょうか。ネット記事へのコメントやSNSへの投稿からは、次のような傾向がうかがえます。それは、「戦争反対」には国際情勢へのリアリズムがない、というものです。
“日本の周辺には危険な国がたくさんある。ただ「戦争反対」のスローガンを繰り返しても意味がない”とか、“「戦争反対」はみんな同じ気持ち。
つまり、「戦争反対」は理想論であり、そこに異を唱える自分たちほどには現実が見えていない、もしくは見ようとしていない、という立場です。
こうした声から、「戦争反対」は中身のない理想論に過ぎず現実はそんなに甘くないという考え方があることがうかがえます。つまり、「戦争反対」を訴える人たちは子どもであり、自分たちはさらにその先を見据える大人である、という構図を描いているわけですね。
自らを“責任を持つ大人”という立場だと自認しているから、太田光代氏に対しても「特定の政権批判をしている」といういちゃもんをつけてくるのです。
本来ならば対立が生まれるはずはないが…
しかしながら、こうした構図そのものが稚拙であることは言うまでもありません。それは、アイドルグループ「仮面女子」の猪狩ともか氏が言う通り。<ただ、戦争を回避・抑止する方法が人それぞれ違うだけで、ある人にとっては防衛力を高めて戦争を仕掛けたくない国にして抑止する、ただ平和を訴えるなど、多種多様な意見がある中での『戦争はしたくない』『回避したい』『抑止したい』ということなんだと思います。結果的に大多数の人は戦争は嫌なんですよね。大切な人や場所を守りたいんですよね>(3月29日 自身のXアカウント)
全くもってその通り。本来ならば対立が生まれるはずのないところに、“「戦争反対」はいかがなものか”といってツッコミを入れてくる人たちが出てくる。
重箱の隅をつつくような“せせこましさ”のワケ
一体なぜこのような事態になっているのでしょうか?それは、“責任を持つ大人”と自認している人たちに自信がないからなのではないでしょうか。もっとわかりやすく言うならば、「保守」的な考えを持つ人たちの本質的な弱さです。
大局において、平和や戦争反対という題目で一致しているのならば、各論での相違でいちいちチクチクと言う必要はありません。にもかかわらず、“君たちはわかってないね”とばかりに、中途半端な知識で逐一マウントを取る。
しかしながら、この反応の早さは裏を返せば神経過敏であるということです。常に「保守」的な政策に反する人たちの意見に気をもんでは、その都度訂正せずには気がすまない。
そうした落ち着きのなさが、いま「保守」的だと自認する人たちの決定的な幼さなのです。そして、それが今回の「戦争反対」に対する、重箱の隅をつつくようなせせこましさにあらわれているのです。
非常時に人間の正体が暴かれるのだとすれば、いまの「保守」と呼ばれる人たちの態度ほどわかりやすいものはないでしょう。
皮肉に気付けないほどにナイーブ。それこそが、いまの「保守」のあられもない姿なのです。
文/石黒隆之
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。
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