「この後、18時までには保育園に子どもを迎えに行きたいんです」
ある日の正午、都内で取材が終わった後で、その場に同席していた男性が発した言葉に一瞬、耳を疑った。「お迎えで仕事を上がるため」ではない。
‘26年4月現在、吉岡さんは障害者雇用事業の立ち上げと、様々なバックグラウンドを持った人材同士が交流する共創施設の組織開発・実務支援に関する仕事を、それぞれ別の企業から業務委託契約として請け負っている。このほか、教員の複業やキャリア形成を支援するNPO法人の運営にも携わっているが、こちらは無償。すべて合わせると、月の収入は25~30万ほどになる。妻は一般企業で総合職として働いており、共働きで生活をしていく分に、特段の不自由は感じていない。
大学卒業後は広告代理店など計3社に8年ほど在籍し、ウェブ広告のデータ分析などを行っていた。28歳のとき妻の妊娠が発覚。育休を取ったことをきっかけに将来を考え直し、’24年4月からフリーランスに転身した。女性の場合、育児と仕事の両立を考慮して正社員からフリーランスへと転身するケースはしばし聞くが、男性が同種の選択を行うことは珍しい。どのような試行錯誤を経て、現在のスタイルに辿り着いたのかを聞いた。
「ワーキングタイム」以外は家事に邁進
「掃除、料理、洗濯、遊び、お風呂と寝かしつけなど、全ての家事と育児はお互いワンオペで引き受けられるようにしています。妻が仕事やプライベートで家を空ける時もありますが、いつも苦もなく家事と育児をしています」と語る。
育休を取得して得た「キャリアブレイク」
「転職先での担当領域がそれまでの担当業務とかけ離れており、それまでの経験を思うように活かせませんでした。仕事がうまく行かず、社内の人間関係も次第にギスギスしてきてしまいました」
当時は深夜残業も当たり前。
「当時は、企業が自社広告を出稿する際の最適な出稿プランを検討したり提案したりする業務が中心でした。そのためには一定水準に至るまで事例をリサーチしたり、人に話を聞きに行ったりしなくてはいけません。納期が近付けば、徹夜でクライアント向けの説明資料を準備することも少なくありませんでした。広告業界は、スピード感を持って仕事を提供することも求められる。質量ともに求められる環境の中で、猛烈に働いていました」と振り返る。
仕事量にも人間関係にも思い悩んでいた頃、妻に「本当はどう生きたいの?」と聞かれたことを機に、対話を通じて相手の目指すべき地点を引き出す「コーチング」を知った。その後、妻が出産し、1年間の育児休業期間を取得したことを機に、自身もコーチングについて学び始めた。このキャリアブレイク期間が、結果として生き方を変える転機になったという。
「人の相談に乗る以上、まずは自分自身の価値観を明確に把握できていないといけません。それで自覚したのは、自分は『顔の見える相手を助ける姿を子どもに見せたい』という思いがあるということ。特に規模の大きな会社ほど、一つの案件に関わる関係者の数が増え、自分が誰を助けているのかが見えにくくなってしまう。
「『妻』が家事をする必要はない」という気づき
「妻は、元々バリバリ仕事をするのが好きな人。一方、僕は忙しくはしていたものの、仕事自体が好きなわけではなかった。妊娠中、妻のつわりがひどかった時期に家事を積極的に代わっており、それを機に『妻が動けないときは自分が動く』『自分が動けないときは妻が動く』という柔軟な視点を得ました。そしてそのためには、会社員よりもフリーランスの方がより柔軟に働けるだろうという結論にたどり着きました」
「会社員の場合は勤務時間があらかじめ決められており、その時間は会社のために働かなくてはいけません。けれどもフリーランスの場合、成果物さえきちんと出していれば時間は問われず、自分のペースで働くことができます。家庭を大切にしつつも、顔の見える相手を助けているという実感も得られて、フリーランス転身後の方が『生きやすい』という実感が得られるようになりました」
近年では「イクメン」という言葉も浸透してきてはいるものの、男性が家庭を優先する働き方は、現在の日本でまだ一般的とは言いづらい。記事の後半では、吉岡さんが「主夫兼フリーランス」というスタイルを受け入れられるようになるまでの葛藤や、仕事を引き受ける際に重視しているポリシーにフォーカスする。
【吉岡 茂樹】
大阪教育大学総合学習専攻卒業。大学卒業後、広告代理店にてWEBマーケティング支援に従事。2022年より事業会社にて、企業向け研修のプログラム設計やマーケティングを担当。
<取材・文/松岡瑛理>
―[フリーランスも知らないフリーランスの稼ぎ方]―
【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san
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