「かつての常識は、もう二度と戻らないのか――」。昨年の調査によれば、お花見や歓迎会を開催した企業はわずか23.8%。
前年の29.1%をさらに5.2ポイント下回り、コロナ前の51.8%から「半減」という衝撃的な数字を記録しました(出典:東京商工リサーチ TSRデータインサイト・2025年4月発表)。
今回は、過去に大きな反響を呼んだ実録エピソードから、メガバンクという巨大組織を震撼させた、令和の新入社員による驚愕の言動をプレイバック。

さらに記事の後半では、いまや飲み会を「労働時間に含む」という、かつては考えられなかったルールを導入している企業の「驚きの割合」についても紹介します。

■「花見は廃止しました」令和の新入社員に絶句

4月は新社会人が街にあふれる季節。中途採用に力を入れ始めたメガバンクだが、まだまだ新卒一括採用の文化が根強く、毎年多くの新入社員が入社する。そして平成の時代を生き抜いてきた上司と、世代間による価値観の違いから衝突するのである。

筆者(綾部まと)は新卒でメガバンクに入行し、地方や都内の営業店で法人営業を経験した。そこで数々の新入社員を見たり、彼らの噂を聞いてきた。今回はメガバンクにおける、令和の新入社員による驚きのエピソードをご紹介する。

①自分の歓迎会なのに「絶対に行かない」

「花見は廃止しました」「歓迎会は行きません」令和の新入社員の...の画像はこちら >>
平成の頃に比べてだいぶ減ったが、今でも銀行では飲み会が多い。人事異動が頻繁にあり、その度に歓送迎会が行われるからだ。令和の新入社員を迎えた都内の営業店で支店長代理を務めるAさんは語る。

「支店では毎年、新入社員が入ると歓迎会を行うんです。店全体と取引先課ごとで最低二回、一橋会や三田会など、大学ごとにやる時もあります。
俺の部下に来た新入社員は早稲田出身で、早稲田はあまり大学で集まらないため、大学毎の飲み会はありませんでした」

課の歓迎会を設定するために日程の都合を聞くと、彼は「行きません」と答えたのだという。

「お前の歓迎会だぞ、と言っても、彼は『嫌です!』と明るく拒否。プライベートの時間を割いて、会社の人間と会いたくないんだとか」

確かに上下関係がはっきりしているメガバンクでは、飲み会で疲れてしまう気持ちは分かるが……。

「俺たちの頃は、先輩から誘われたら断ることなんてできませんでした。結局、彼の歓迎会は開かれないことになりました」

SNSでも会社の人とは「繋がらない」

プライベートでは繋がりたくない。そんな彼のこだわりは徹底されていた。

「食堂で雑談をしている中で、彼が『Xで面白いポストを見つけた』と言いました。スマホを覗こうとしたら、さっと隠されました」

彼は「後でリンク送りますね」と笑顔で返したという。

「感じが悪いな、と正直思いましたよ。俺たちの価値観では、上司に見られても良いものをSNSに書くのが暗黙の了解でした」

そこまでして隠したいSNSに、彼は何を書きこんでいるのだろうか。

②「とりあえずビール」ではなく「僕はハーブティー」

「花見は廃止しました」「歓迎会は行きません」令和の新入社員の行動に思わずア然…『飲み会を労働時間に含む』驚きの調査結果も
ハーブティー
「俺たちの頃は、人数が多い飲み会は一杯目はとりあえずビールで、他の選択肢は無かったです。どうしても酒が飲めない妊娠中の女性や体質でNGな社員は、全員ウーロン茶。乾杯を終えれば好きなものを頼みますが、先輩が頼む日本酒を一緒に飲むのが常でしたね」

しかし令和の新入社員はカシスオレンジやカルーアミルクなど、好きなものを頼み放題。ビールの泡は、早く飲まないと減ってしまう。
なかなか乾杯できず、乾杯の挨拶を担当している次長や支店長がイライラしてくるのが伝わってきたらしい。

「アルコールならまだ良い方で、ソフトドリンクの他にもスムージーやハーブティーを頼む猛者もいました。もちろん全員、男性ですよ。二次会は彼らだけでスイーツを食べに行ったらしいです」

料理を取り分けず、一人で食べてしまう

別の課の新入社員が、課長にこっぴどく怒られていた。哀れに思ったAさんは、業務後に彼を飲みに誘った。中華料理屋でいくつか頼み、次々と品物が来たのだが……。

「頼んでいた大皿料理が来たら、彼は一人で食べ始めました」

彼に注意をしたところ、“飲み会で上司に取り分ける”という感覚がなかったのだという。

「聞いてみたら、コロナでは飲み会の経験が少なかったようです。オンライン飲み会はたまにやっていたようですが、それだと取り分ける癖はつきませんよね」

③「恒例行事」である花見を廃止

「花見は廃止しました」「歓迎会は行きません」令和の新入社員の行動に思わずア然…『飲み会を労働時間に含む』驚きの調査結果も
花見
桜の名所の近くの支店では、新人が花見を企画したり、場所取りをする文化が残っていることが多い。「今年も花見を設定しろよ」と先輩が伝えたようだが、いつまでたっても案内がこない。

Aさんがどうなっているか新人に尋ねると「あぁ、今年から花見は廃止しました」とさらっと言われたのだという。

「それを聞いて、真っ青になりました。支店長や課長をはじめとして、ロビーのお局様など、花見を毎年楽しみにしている重鎮は多いのです」

そうしているうちに桜は散り、花見の文化も店から消え去ってしまったのだという。

「伝統を大事にするという意識が、俺たちの頃はありました。
今の子は新しいものに目がいきがちで、それはそれで良いのですが、古い価値観に興味が持てないんでしょうね」

令和の新入社員ならではの優しさや正義感も

今回はネガティブな世代間の違いを紹介したが、ポジティブな面もあるのだという。

困っていそうな派遣スタッフに「何でも聞いて下さい」と自ら声をかける優しさ、先輩が上司から雑用を押し付けられている姿を見て「それ、〇〇さんに頼むことじゃなくないですか?」と助け舟を出す正義感は、どの世代よりも強いのだとか。彼らが上司になった時、どんな職場が出来上がっているのか、今から楽しみである。

■「伝統の崩壊」の先に生まれる、新しい組織の形

今回紹介したエピソードを「単なるわがまま」や「マナー欠如」と切り捨てるのは簡単です。しかし、そこには明確な社会構造の変化が表れています。

前述の調査(東京商工リサーチ TSRデータインサイト)によれば、歓迎会や懇親会に「制限を設けていない」と回答した企業が90.0%にのぼるにもかかわらず、実際の開催率はコロナ禍以降で「最低」を更新し続けています。さらに注目すべきは、「開催する」と回答した企業のうち、「お花見、歓迎会・懇親会」を労働時間に含むと回答した企業が18.5%にのぼったという事実です。これは、もはやこうした行事が自発的な親睦の場ではなく、参加者の心理的負担を考慮し、業務として組み込まなければ成立しにくい「苦肉の策」になっている側面を物語っています。

「とりあえずビール」や「新人の場所取り」といった、かつてのメガバンクを支えた“古いOS”が強制終了され、個人と会社の距離感が再定義されている今。彼らがもたらしているのは、単なる反抗ではなく、効率と合理性を重んじる「令和の正義」という捉え方もできるかもしれません。

「花見は廃止しました」と言い切る彼らが将来、組織の中核を担うようになったとき。日本の組織は私たちが知る姿とは全く別の、より風通しの良い場所へと変わっていく可能性を秘めているのではないでしょうか。

<取材・文/綾部まと 再構成/日刊SPA!編集部>

【綾部まと】
ライター、作家。
主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother
編集部おすすめ