そんなじゅんいち氏は2020年に独立して個人事務所「合同会社潤一」を設立し、いま今はキャンプ芸人としても活躍しているという。現在はどのような生活を送っているのだろうか、ブレイク時の様子も含めて直撃した。
本田圭佑ネタで「本当にウケた」と感じた
じゅんいちダビッドソン(以下、じゅんいち):’11年5月まで漫才コンビで活動していて、コンビ時代からピンネタもやっていました。高校時代に水球部だったこともあって、「じゅんいち水球クラブ」と称して水球に関するネタとか、アメリカンな衣装で、「アメリカあるある」や「アメリカの野球選手ランキング」などのネタをやっていましたね。
ーーアメリカキャラは『あらびき団』(TBS系列)や『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系列)でも見かけました。
じゅんいちダビッドソン:アメリカのネタは芸人仲間からも「面白い」って言ってもらえたりして結構評判よかったです。ネタ番組にも結構呼ばれましたし、ライブでもウケてましたよ。
ーー当時「売れるかも?」という予感はありましたか?
じゅんいち:ありましたね。アメリカのネタで手応えを感じたのが’13年だったんですけど、その年の『R-1ぐらんぷり』も優勝できるぞ、と思っていました。でも2回戦で負けちゃって(笑)。
じゅんいち:悔しかったですね。芸人とか、ライブに来てくれるコアなお客さんにはウケてたんですけど、一般の人にはあまり響かなくて。
本田ネタはアメリカキャラの応用だった
ーー本田圭佑さんのネタを始めたのはその後ですか?じゅんいち:そうです。もともと芸人仲間から「サッカーの本田に似てる」といわれて言われていたので、じゃあやってみるかと。当時本田選手が無回転シュートで話題になっていたので、「無回転なぞかけ」っていうネタですね。ネタの造りをアメリカキャラから応用できたので、わりとすんなりいけました。
ーーその本田ネタを引っさげて、翌年の‘14年の『R-1ぐらんぷり』の決勝に初進出されました。
じゅんいち:予選でのウケ方が前の年と明らかに違ってて、「あれ? 去年ってウケてなかったんや」と気づきました(笑)。違いが明らかにわかるくらい、本田圭佑キャラではしっかり笑いが起こってましたね。
ーーしっかり手応えがあったんですね。
じゅんいち:手応えもありましたが、「今年準決勝を突破しないと、今後一生決勝行けないかもしれない」と感じて、毎日のようにライブに出てネタをブラッシュアップしていた記憶があります。
ーーどうしてそんなにがっついたんでしょうか?
じゅんいち:やっぱり芸人としてちゃんと稼ぎたかったんですよね。’13年の芸人としての年収は4万円で、普通にアルバイトをしてましたし、なんなら妻に折半分の家賃も出してもらうような生活だったので。
仕事が増えたのはW杯がきっかけだった
じゅんいち:ちょっとだけ良くなりました。決勝が放送された3月の月収が3万8000円ほどとかだったと思います。R-1ぐらんぷりの決勝が決まった時点でアルバイトも辞めていたんで、もっと稼がないといけないんですけどね。
ーーそこからどんどん稼げるように?
じゅんいち:いや、またしばらくは全然仕事がなくて(笑)。妻からも「やっぱりまたバイト行って」って言われてました。
ーー仕事が増えだしたタイミングはいつだったんでしょうか?
じゅんいち:R-1ぐらんぷりの決勝に行った’14年の6月にサッカーのワールドカップが開催されてからですね。本田選手が代表メンバーとして出場していて、「そういえば本田のものまねしてる芸人いたな」と声がかかりだした感じです。そこから会社員の月給くらいはもらえるようになりましたね。
ーーそして翌年、’15年のR-1ぐらんぷりで優勝。さすがに生活は変わりましたか。
じゅんいち:めちゃくちゃ変わりましたね。体感で仕事は5倍くらいになって、そこから2年ぐらいはずっと忙しかったです。ロケも営業も多くて、土日祝はほぼ営業、平日はテレビのロケ。優勝してから2か月くらいほどは休みはなかったです。
ーーまさに“旬の芸人”のスケジュールですね。
じゅんいち:そうですね。でも当時所属していた事務所は固定の劇場も持っていなかったので、吉本興行の芸人みたいに「寝る暇すらない」とかではなかったです。
ーー休みなしのスケジュールは辛くなかったですか?
じゅんいち:むしろ逆なんです。優勝して2か月後くらいから週に1日休みが入りだしたんですけど、「このままどんどん仕事がなくなって暇だったころに戻るんじゃないか」という怖さがありました。
ーーそこからはしばらく本田キャラ一本だったんでしょうか?
じゅんいち:そうです。というより、本田キャラしか求められてなかったと思います。もともと漫才をやってたんで、キャラネタ以外で笑いを取りたい欲もあったんですよ。でも関係ないトークをぶち込んでも、全部カットされてましたね(笑)。
ーー「キャラ芸人になってしまうんじゃないか」という怖さはなかったですか?
じゅんいち:僕は違うネタから入ってきて本田ネタで世に出たんで、未練とか欲はありますよ。だから単独ライブでは、本田ネタは2本ぐらいで、残りは全然違うコントを8本作ったりしてました。
でもテレビでは結局「本田にしましょうか」ってなるんですよね。ただそれも需要なんで。
本田圭佑氏「真司と佑都の使い方のセンスが抜群でした」
じゅんいち:R-1ぐらんぷりで優勝した後に、本田さんが当時イタリアのACミランに所属していたのでミラノまで会いに行きました。無断でやってるんで、さすがに一回会っとかないとまずいなと思って(笑)。本田さんと同じ美容師さんに髪を切ってもらっていたので、その方経由でマネージャーを紹介してもらって、実際にお会いしました。
ーー会ったときには好意的に受け止めてもら貰えたんですか?
じゅんいち:ネタをめっちゃ見てくれてるみたいで、お会いしたときにも「優勝したネタ面白かったです。真司と佑都(※)の使い方のセンスが抜群でした」って言ってもらえました。(※編集部注:当時日本代表の香川真司選手と長友佑都選手)
なんなら、本田選手がファンミーティングで僕のネタのフレーズの「伸びしろですね」をやって異常な盛り上がりを見せたこともあるらしいです(笑)。
ーー好意的なうえにノリもいい! ということは無事公認も貰えたんでしょうか?
じゅんいち:いや、実は正式な公認はもらってないんですよ。今でも年に1回か2回連絡を取ったり、ご飯に行ったりすることもあるんで、本田さんとはもう友人みたいな関係になってしまって。いまさら「公認ください」とも言いづらいですよね(笑)。
趣味のキャンプが仕事に
じゅんいち:サッカーのワールドカップが開催されると本田キャラの仕事が増えますが、それ以外は、キャンプとかアウトドア系の仕事が多いです。トークショーとか、キャンプ場でのイベントとか。バラエティ番組は減りましたけど、キャンプ関連で呼ばれることが増えましたね。
ーーもともとキャンプがお好きだったんですか?
じゅんいち:そういうわけではなくて。ヒロシさんとかバイきんぐ西村に誘われたのがハマったきっかけです。僕がメインでやるのはソロキャンプで、複数人で集まったとしても各々のテントで寝て、朝起きたらみんな勝手に帰って僕一人みたいなこともあるんですけど、そういう自由さが肌に合ったのかも。空間だけ共有して、各自好きに過ごす感じがめちゃくちゃ楽しくて、続けてたら自然と仕事に繋がってました。
ーー結果的に“第二の軸”になった。
じゅんいち:そうですね。計算して始めたことって続かないんですよ。でもキャンプはプライベートでも普通に行きますし、本気で好きだから仕事にも繋がったんだと思います。
一発屋よりは「そっくりさん」と言われることが多い
じゅんいち:本田ネタもキャンプもたまたまハマったというよりは、続けてきたものが実ったという感じなんです。若い頃は周りの芸人が売れていくのを見て、やめようかなと思ったことも何回もありましたけど、ライブでちょっとウケると「まだいけるな」って思って続けてきた。その積み重ねが今に繋がっていると思います。
ーーいわゆる「一発屋」と言われることもあるんでしょうか。
じゅんいち:モノマネなんで、一発屋って言われにくいんですよね。一発ギャグがヒットしたわけではないですし。むしろ「そっくりさん」とか言われることのほうが多いですけど、似てるって言われてるわけなんで、それって褒め言葉だなと受け止めてます(笑)。
ーー今後、挑戦してみたいことはありますか。
じゅんいち:今、キャンプ場の一区画を買い取ってグランピング施設を作る計画を進めてるんですよ。それをYouTubeに動画として出したり、一連の話を書籍にできたら面白いなと思っています。
あとは友情出演した短編映画が今後公開になるので、それを見たハリウッド関係者から声がかかったりしないかなと思ってます(笑)。英語はできないですけど、怪しい東洋人の役とかなら頑張れるんじゃないかなと。
ーー今年、サッカーのワールドカップが開催されますが仕事のオファーは入ってますか?
じゅんいち:さすがにまだですね(笑)。でも’22年のワールドカップのときに、本田さんがABEMAの解説で話題になって、僕も仕事が増えたんですよ。なので、今年のワールドカップでも本田さんが何か絡んでくれたらまたサッカー関係の仕事が増えるかもと期待しています。
本田圭佑に似ていたことから始まり、気づけばキャンプ場の区画を買い、ネタか本気かハリウッドを狙う――。
どこまでが計算で、どこからが偶然なのかは本人にもわからない。ただひとつ確かなのは、「続けていれば、何かが起きる」ということだろう。じゅんいちダビッドソン氏が次はどんな“伸びしろ”を見せてくれるのか、楽しみに待ちたい。
【松嶋三郎】
浅く広くがモットーのフリーライター。紙・web問わず、ジャンルも問わず、記事のためならインタビュー・潜入・執筆・写真撮影・撮影モデル役など、できることは何でもやるタイプ。X(旧Twitter):@matsushima36
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