今年6月11日に開幕するFIFAワールドカップ26で優勝を目指すサッカー日本代表は、最終メンバー発表前最後の親善試合に臨み、スコットランド代表とイングランド代表を相手にともに1ー0で勝利した。
特に、イングランド代表からの勝利は世界にも衝撃を与えている。
最新のFIFAランキング(今期間の試合後に発表)が4位で、優勝候補にも挙げられている強豪国を敵地で撃破。昨年10月に対戦したブラジル代表戦に続いて、日本代表はまたもワールドカップ優勝経験国に土をつけた。

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ドイツ、ブラジル、イングランドから勝利

今回のイングランド代表はメンバー選考などのプライオリティが高く、ベストメンバーではなかったなど、評価を見つめ直す要素はあるものの、それでも十数年前であれば敵地で勝つことなど考えられなかった。着実に日本代表は成長しており、強くなっていると断言できる。

振り返ると、前回大会後にワールドカップ優勝経験国とは4回対戦しており、ウルグアイとの引き分け以外はドイツ、ブラジル、イングランドから勝利を収めている。しかも、うち2つは相手が有利といわれるアウェイでの勝利であり、長い日本サッカー界の歴史のなかでもあり得ないことだった。しかも、今回は負傷者が続出が懸念されているなかで残した勝利ということもあり、否が応でも本大会への期待は高まってしまう。

警戒心を強めさせてしまった?

今回の勝利で戦術的方向性、メンバー候補のポテンシャルやコンディションなどを確認でき、当初の目的は達成された。そのうえで、イングランド戦後に森保一監督がコメントしたように「どんなチームにも勝っていけるという自信になった」と、メンタル面でも良い効果を得られた。

2023ワールドベースボールクラシック決勝前に大谷翔平が「あこがれるのをやめましょう」とチームメイトを鼓舞した言葉は流行語になったが、サッカー日本代表においては今回のイングランド戦での勝利が大谷の言葉と同じ効果を生むことになるだろう。

強豪国にも手が届く、その壁を越えられるという自信を得た一方で、優勝候補となる強豪国を含めたすべての相手に「日本と対戦すると負けるかもしれない」と警戒心を強めさせたことも間違いないだろう。

ボール保持率が上回る相手には勝てるのだが…

スコットランド戦とイングランド戦では違う戦い方を求められた。自分たちがボールを保持する戦い方と相手にボールを保持される戦い方だ。もちろん同じ試合のなかでもその戦い方は時間帯などによって異なるのだが、チームとしてどう臨むのかという戦術面での準備段階で違っていた。

スコットランド戦での日本のボール保持率は56%で、イングランド戦は34%という結果だった。
これは結果的にそうなったという受動的なボール保持率というより、ある程度意図的にそうした能動的なボール保持率といえるだろう。

理想としては、どんな相手であろうと「ボールを保持する時間」を長くしてゲームを支配する展開にしたいところだ。しかし、技術的な差や能力的な差によって保持する時間を短くなる相手が存在する。それがイングランドであったり、ブラジル、ドイツ、スペインであったりする。

前回大会はすべての相手にボール保持率で上回られるといった割り切りのもとで戦術を組み立て、ボール保持率が下回ったドイツとスペインには勝利した。しかし、ボール保持率が上回るあるいはほぼ同等だったコスタリカとクロアチアには戦術的準備不足が否めず敗れてしまった。

ボール保持率で上回れる相手は4年前よりも増えたし、下回る相手であっても前回のドイツ戦やスペイン戦と異なり、イングランド戦で見せたように相手陣内へ押し込めるビルドアップができる確率は高くなっている。グループリーグの対戦相手でいえば、日本よりボール保持率を上回れる技術力があるのはオランダだけとなり、チュニジアとスウェーデンには日本のほうが上回るあるいは同等くらいの技術力だと評価する。

今や日本代表は「徹底的に研究される対象」

ただ、相手がそのとおりに試合に臨んでくるとは限らない。日本が相手にとって最も危険な展開をつくるひとつのパターンとして、ディフェンスラインから出るパスを奪ってからのカウンター攻撃がある。ディフェンスラインからのパスではなかったが、イングランド戦での得点シーンがまさに理想形といえる。

それを防ぐ戦術のひとつにロングボールが考えられる。単純に放り込むだけで崩されるほど今の日本の守備網はもろくないが、放り込まれたところが相手のストロングポイント、または相手優位であった場合、ボール保持率を捨ててロングボールを使う戦術にすることだろう。
2024年のアジアカップでイランに敗れたような展開だ。

その頃からはメンバーも変わり、戦略も多少は変化している。また、その後ロングボールで上回られるような相手と対戦していない。過去の日本代表および各選手を徹底的に研究して、自分たちのスタイルを捨ててまで勝てる戦術で挑まれることも考慮しなければならなくなった。とはいえ、日本も同等もしくはそれ以上に相手を研究して挑むはずなので、試合までスカウティング業務を担うスタッフらの活躍に期待したいところだ。

最終メンバー発表はどうなる?

いずれにしても、本大会までに大きく2通りの戦い方を身につけなければならない。2通りと表現はしたが決して真逆の戦術ではなく、今まで積み重ねてきたものを枝分かれさせるイメージだ。それでも難解なチャレンジであり、それに対して森保監督がどのような答えを出すのか楽しみである。

その一端が垣間見られるのが最終メンバー発表で、具体的な日付は未発表だが5月第3週から第4週になると思われる。負傷者がどこまで復調してメンバー入りするかなど懸念点もあるが、今回の試合結果で日本代表への期待は日に日に高まるようになった。

<TEXT/川原宏樹>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。
そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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