石丸伸二氏が恋愛リアリティーショーに参加

石丸伸二氏が「恋愛リアリティーショー」で見せた素顔。18歳下...の画像はこちら >>
『恋愛病院』(ABEMA 4月2日初回配信)に出演する石丸伸二氏が話題です。恋愛とはご無沙汰の大人たちが繰り広げるリアリティーショーでも、あの理屈っぽいトークは健在です。

 出演にあたって「本当の恋愛をしたのはいつか」と質問されると、さっそく石丸節が全開。


「「本当の」って言われたので、要は真偽があるって前提で聞かれたじゃないですか」、「どれが偽かが言えないってことです」、「むしろ逆に世の皆さんに問うてみたいんですけど。その本気は合ってたんですか?ってね」

 期待通りの発言でSNSを盛り上げていました。

 一方、18歳年下のミス東大とツーショットになると、素が垣間見える展開に。初々しいというか、挙動不審というか、あたふたしながら背中に日焼け止めオイルを塗るギャップに、視聴者は“恋リアで期待していた石丸伸二そのもの”と、楽しんでいる様子です。

「この人好きじゃない」と言ったアレン様や、一連の発言に「…イヤ」と漏らした真木よう子のキャッチーなリアクションからも、このキャスティングは大成功だったと言えます。

ネタと化した“石丸構文”

石丸伸二氏が「恋愛リアリティーショー」で見せた素顔。18歳下の女性にドギマギ…その“面白さ”を、過去への免罪符にしてはならない理由
画像はABEMA公式Xより
 ただし、引っかかる点も。

 それは、彼の話法がそのままセルフパロディ化していることです。「本当の恋」という言葉の定義や、それが成立する前提を質問し返すのは、政治家時代からの得意技です。決して話題の核心に触れることなく、時間を稼ぐだけ稼いで質問者の気力を萎えさせていく。それが一部の有権者には、とても賢く見えていたわけです。

 しかし、かつては“オールドメディアを斬るニュースター”だと有権者を熱狂させていたものが、いまや完全にネタと化している。東京都知事選で旋風を巻き起こしたこと。その勢いで、岸田文雄首相(当時)の選挙区に乗り込み、国政にも打って出ようとしていたこと。
その折々で時に有権者の神経を逆撫でしてきた言葉やロジックが、ここではエンタメとして好意的に消費されることで、かつての傲岸不遜な態度が許される空気が出来上がっている。

『恋愛病院』でただの見世物となった石丸伸二氏は、その意味で救済されるチャンスをつかんだとも言えるのです。

 晒し者になるのと引き換えに、好感度を得られるかもしれない千載一遇の機会だからです。

政治家時代の言動を有耶無耶にしていいのか

石丸伸二氏が「恋愛リアリティーショー」で見せた素顔。18歳下の女性にドギマギ…その“面白さ”を、過去への免罪符にしてはならない理由
画像はABEMA公式Xより
 しかし、政治家時代の彼の言動を、どさくさ紛れに笑いとともに有耶無耶にしてもいいのでしょうか? “石丸構文”はバラエティ番組で純粋に楽しめるような代物なのでしょうか? 

 石丸氏が安芸高田市長だった2022年。今に続く違和感を決定づける出来事が起きました。

 議場で居眠りをしていた議員(当時)に向かって、「恥を知れ! 恥を」と叱責したところ、その議員の妻が自殺してしまったという一件がありました。その議員は睡眠時無呼吸症候群から軽度の脳梗塞を患っていたとの診断書を提出したものの、その後も石丸氏から非難され続けました。結果、議員は嫌がらせ電話や、注文していない品物が着払いで届くなどの被害にあったといいます。

 病状の悪化した議員が亡くなり、その後に妻が自殺したという経緯です。(『デイリー新潮』 2025年3月12日)

 このことについて2025年の記者会見で問われると、以下のように語っています。

<一般的な話をします。自殺というものは故人においては悲しい出来事であり、社会において忌むべき事象です。>

 そして、議員に対して行ったことは、誹謗中傷ではなく批判だったと説明するのです。


<前提の認識をそろえておきたい。公人というものは批判を受ける対象となると思います。私人ではないので。一般の方とは違うので。ただし、誹謗中傷はいけない。当たり前です。><その観点で、私が行ったのは批判です。> (『日刊スポーツ』 2025年3月14日)

深刻な問題と下世話な娯楽が「地続き」である恐ろしさ

 ここでは、実際に議員を批判したのか、誹謗中傷したのかを問いたいのではありません。議員の妻の自死と、彼の言動に直接的な因果関係があるかどうかを証明したいのでもありません。

 問題は、人の生死や尊厳に関わる話をしているときと、『恋愛病院』で「本当の恋愛」について屁理屈をこね回して笑いものになるロジックの土台にあるものが、全く同じだということなのです。究極に深刻な話と、とことん下世話な娯楽が、だらしなく混ざり合っている。この不穏なリアリティが、『恋愛病院』に石丸伸二氏が出演することの最大の違和感なのです。


 つまり、このオモチャは出荷前に検品されたのか、という強い疑問です。

『恋愛病院』は、面白い。それは間違いない。

 しかし、その面白さは、殺伐とした乾きによって成り立っているのです。

文/石黒隆之

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。X: @TakayukiIshigu4
編集部おすすめ