日本時間9日に行われたブルージェイズ戦で、ドジャースの大谷翔平が偉大な記録に肩を並べた。
 大谷は「1番投手兼DH」で先発出場すると、初回に四球を選び、43試合連続出塁を達成。
イチロー氏の日本人選手最長記録に並んだ。

43試合連続出塁で偉業達成も…勝利投手は消滅

打率「.397→.194」へ急降下…大谷翔平「投手兼DH」に...の画像はこちら >>
 投げては6回1失点の好投。98球と球数がかさんでいたこともあり、7回のマウンドには上がらなかった。大谷はその時点で勝利投手の権利を持っていたが、その後ブルージェイズに追いつかれ、大谷の今季2勝目はお預けとなった。

 大谷は3回に相手4番打者にタイムリーを浴び今季初失点を喫したが、相棒ウィル・スミスの捕逸が絡んでいたため、自責点はゼロ。そのため、今季の防御率は0.00を維持したまま。また、この試合で規定投球回数に達したため、大谷はナ・リーグ防御率ランキングで1位タイに躍り出た。

 先発投手として十分すぎる役割を果たした大谷だが、この日は打者としてのパフォーマンスを振り返ると、5打席で四死球による出塁が2度あったものの、3打数無安打2三振と、自慢のバットから快音は聞かれなかった。

 これで今季の大谷の投手として出場中の打撃成績は、7打席3打数無安打4四死球。出塁率は.500を超えているものの、まだ安打が出ていない。

トミー・ジョン手術後に「二刀流時の打撃が不調」

 実は昨季途中に投手復帰を果たした大谷は、自身2度目のトミー・ジョン手術を境に二刀流として出場時の打撃が振るわなくなっている。

 大谷がまだエンゼルスに所属していた2023年。9月にトミー・ジョン手術を受けるまで、打者として44本塁打、投手としても10勝を挙げるなど、リアル二刀流は完成の域に達していた。

 23試合に登板したそのシーズンは、投手として出場中の打撃も圧巻だった。
その成績は、打率.397、4本塁打、11打点、出塁率.500、長打率.707、OPS1.027というもの。バットでも自らを援護し、2年連続2桁勝利をアシストした。

 ところが手術から復帰した昨季以降は、状況が大きく変わっている。昨年6月以降、16試合に登板している大谷は、投手として出場中の打撃成績が、打率.194、2本塁打、4打点、出塁率.359、長打率.484、OPS.843。4割近かった打率が1割台に低迷するなど、打撃成績は軒並み下がっている。

 今年7月に32歳を迎える大谷。年齢的にも二刀流が体に大きな負担となってのしかかっている可能性もあるだろう。もしくは投手としてリハビリ中だった2024年に打者に専念したことで、二刀流のリズムをまだ完全に取り戻せていないだけかもしれない。

過酷な投手登板時に求められる集中力

 さらにメジャーリーグでは2023年からピッチクロックが導入された。その年は大谷も即座に新ルールに適応したが、翌24年には走者を置いた場面でのピッチクロックが20秒から18秒に短縮されるなど、試合のスピードアップが図られている。つまり、以前は容易にできた「試合中に息つく暇」がほとんどないのが現状だ。

 大谷が「投手兼DH」で出場する際は20人以上の打者と対峙しつつ、2~3イニングごとに打席に立つ必要もある。いくら“超人”といえども、同じ試合で投打に100%の集中力を保持するのは簡単なことではないだろう。


高齢化が進むドジャース野手陣

 そこで思い切って、大谷の先発登板時は他の打者にDHを譲ることも選択肢に入れるべきではないだろうか。

 ワールドシリーズを2連覇中のドジャースは、チームとしても成熟しきっている。ネガティブに言い換えると、特に野手陣には高齢化の波が押し寄せている。

 約3か月後に32歳になる大谷のほか、フレディ・フリーマンはすでに36歳のベテラン。そしてケガで戦列を離れているムーキー・ベッツも33歳と、ピークは過ぎ去っていると言っても過言ではない。

 さらにテオスカー・ヘルナンデスやウィル・スミスといった中軸を担う打者も軒並み30代に突入している。新たに加入したカイル・タッカーにしても29歳と決して若くはない。

大谷の“DH独占”による弊害も…

 これまで投手として登板する日も、登板しない日も大谷はドジャースのDHをほぼ独占してきた。昨季はチームの162試合のうち156試合、今季は今のところ誰にもその座を譲っていない。

 高齢化が叫ばれるドジャース打線において、1か月間に2~3試合程度でも他の選手がDHに入ることができれば、打撃陣全体の健康や選手個々の状態にもいい効果が見込めるはず。さらに、大谷自身も登板日は投げることに全集中することは決してマイナスにはならないだろう。

 年齢的にも、長いシーズンを見据えるうえでも、大谷の投打にわたるフル稼働は、この先リスクになりかねない。投手兼DHで出場時の打撃不振が続く限り、投手に専念することも首脳陣は選択肢の一つとして考えておくべきだ。


文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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